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苦しみながらも9連覇達成…現地紙は今季のユーヴェをどう評価した?

2020.07.30

苦しみながらもセリエA9連覇を達成したユヴェントス [写真]=Getty Images

 2019-20シーズンのセリエAは、ユヴェントスが第36節でサンプドリアを2-0で下し、スクデットを獲得した。イタリアでは新型コロナウイルスの感染拡大により非常事態宣言が発令され、セリエAは3月9日のブレシアvsサッスオーロ戦から約3カ月の中断期間を経て6月20日に再開。歴代最長のカンピオナートは8月2日に閉幕を迎える。

 第24節から首位を明け渡さずに優勝したユヴェントスだが、9連覇の中でも苦しんだシーズンの一つだった。5連覇を果たしたマッシミリアーノ・アッレグリ監督からドラスティックに改革を敢行し、「美しく勝つ」というスローガンのもと、マウリツィオ・サッリ監督を招へいした“挑戦”の1年。結果を得ることはできたものの、内容は伴わないものだった。

 伝統の堅守が崩れ、失点は8連覇中最多だった18-19シーズンの30を大きく上回る40。この数字は、セリエAの優勝チームとしては42失点を記録した1960-61シーズンのユヴェントス以来最多で、最終節の結果次第では不名誉な記録を更新する可能性もある。7月7日の第31節、ミラン戦では2点を先行しながらも、62分から80分までに4失点を喫して敗戦。過去8年間では見られなかったような醜態もさらした。

 一方の攻撃は、11-12シーズンの68得点、18-19シーズンの70得点を上回る75得点を挙げているが、組織的な崩しを目にする場面は少なく、拙攻が目立った。第37節時点で98ゴールと異次元の攻撃力を見せるアタランタは別としても、インテル(79)やラツィオ(78)を下回っているのはいささか残念だ。

■指揮官サッリには及第点以上の評価

サッリ

就任1年目でスクデットを獲得したサッリ監督 [写真]=Getty Images

 それでも、就任1年目で最低限の目標を達成したサッリ監督の手腕は評価されて然るべきだろう。ユヴェントス黄金時代の黎明期を築き上げた闘将アントニオ・コンテが率いる宿敵インテルにはシーズンダブルを達成。両者の勝ち点差が「4」ということを考えれば、この直接対決がスクデットの行方を大きく左右したとも言える。また、過密日程の中でヴェローナとウディネーゼにまさかの黒星を喫したものの、ライバルと比べれば取りこぼしは少なく、同じ相手に2度負けることもなかった。

 指揮官サッリは61歳でセリエA初制覇。歴代最高齢での戴冠となった。サッリは選手経験がなく、銀行員との両立で指導者としてのキャリアをスタートした情熱の人だ。1999年に銀行を退職し、監督業に専念。アマチュアのエッチェッレンツァ(当時の6部リーグ)から這い上がると、12-13シーズンには当時セリエBだったエンポリの指揮官に就任し、翌シーズンにセリエA昇格を実現した。セリエAでの経験はナポリでの3年間を含めても今シーズンで5年目。還暦を迎えているが、トップリーグでの経験は豊富ではなかった。

「優勝は決して当然のものではない。これはクラブの勝利だ。つねに私のそばにいてくれた」と周囲のサポートに感謝しつつ、「C・ロナウドとディバラを共存させるのは容易ではなかった」と本音も明かしているが、セリエA優勝はサッリの大きな肩書きとなった。

 サッリと同じように選手経験はなかったものの、ミランを世界の頂点に導いたアリゴ・サッキは、かつてミランに招へいを進言したほど、サッリのことを高く評価している。そんなイタリアサッカー界の重鎮は、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』への寄稿で、「彼の考えがピッチ上で見られることはほとんどなかった。これからはゲームの内容に狙いを定めなければいけない。過去のシーズンのような冷酷で、容赦ないユーヴェではなかった」とやや厳しいコメントを発しつつ、「9連覇は記録であり偉業だ。アンドレア・アニェッリ会長、その部下、サッリ監督、出場したすべての選手に拍手を送りたい。CLの行方がどのような結果に終わろうとも、今シーズンのリーグの戦いは、これからの未来の選択にかかわらず、教訓となるだろう」と祝福している。ただ一方で、「ユヴェントスはイタリアのリーダーシップを担う存在だ。彼らが革新的かつ勇猛なフットボールを推進することが、私たちイタリアのサッカーにどれほど重要なことか。スペクタクルやカルチャーといった面の首尾一貫した変化を多くのチームが追随することになるだろう」と絶対的王者に注文をつけ、今後はサッリのビジョンに合う選手の獲得も勧めている。このサッキのコメントが、多くの専門家の総意と言えよう。

 イタリアスポーツ紙最大の発行部数を誇り、ミラノに拠点を置く『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、サッリに7.5(10点満点、以下同様)の採点をつけ、とくにパウロ・ディバラの再生を評価している。また、ローマに社屋を構える『コリエレ・デッロ・スポルト』は7点をつけ、ゼロからイタリアの頂点に上り詰めるまでのキャリアを振り返りつつ、真の評価は来シーズン以降と綴っている。

■2人のエースに最高点、躍動した若手も高評価

C・ロナウド

C・ロナウド、ディバラ、デ・リフト、ベンタンクール(上段左上から時計回り) [写真]=Getty Images

 トリノ勢を贔屓する『トゥットスポルト』はサッリへの評価はなく、採点は選手のみ。その同紙が最も高い採点をつけたのがディバラとクリスティアーノ・ロナウドで、2人には10点満点をつけた。前者については中断期間後の活躍に触れ、「3トップの中央でも、トップ下でも機能。決定的な仕事をした」と評した。後者については、前半戦のサンプドリア戦で見せた超絶ヘディングシュートなどのスペクタクルなゴールを振り返りつつ、「サッリが要求する2タッチでのプレーなど、近年では見たことがないほどチームへの適応を見せた」としている。『ガゼッタ』と『コリエレ』はディバラ、C・ロナウドとともに9点をつけ、両紙ともに「パーフェクトなコンビ」と2人が素晴らしいコンビネーションを見せたと称えている。

 C・ロナウドは安定した力で数字を残し、期待を裏切ることはなかった。一方のディバラは、精神的に大きく成長した1年となった。リーグ開幕直前まで移籍が決定的と見られながら残留すると、自らのプレーで存在価値を証明。コロナにも罹患し、なかなか陰性結果が得られないなど試練は多かったが、苦境を乗り越えながら随所に素晴らしいプレーを披露した。11ゴール11アシストという数字以上に、チームに欠かせない存在だったことは誰の目にも明らかだった。

 中盤では、サッリの目指すサッカーの中心人物になると目されたミラレム・ピアニッチと新加入のアーロン・ラムジーが凡庸な結果に終わったのに対し、ロドリゴ・ベンタンクールが大きな成長を遂げた。『トゥットスポルト』は9点をつけ、「守備では執拗な盾となり、つなぎの面ではテクニックを発揮。90分間フルでインテンシティの高い並外れたプレーを見せた」と称賛。『ガッゼッタ』と『コリエレ』も、中盤の選手で最高の8点をつけた。

 ディフェンダーでは加入1年目のマタイス・デ・リフトが最も高い評価を獲得。9点をつけた『トゥットスポルト』は、「山のように立ちはだかるゴールデンボーイ」と評した。序盤戦はやや適応に苦しみ、ペナルティエリア内でハンドを連発したことで「ハンドコレクター」と揶揄されることもあったが、徐々にアヤックス時代のパフォーマンスも取り戻し、7500万ユーロ(約93億円)の移籍金に見合うプレーを見せたと言える。GKは守護神としてチームを支えたヴォイチェフ・シュチェスニーが『トゥットスポルト』で9点。また、昨夏にパリ・サンジェルマンから電撃復帰したジャンルイジ・ブッフォンも同じ9点を得た。シュチェスニーのバックアッパーではあったが、42歳とは思えないスーパーセーブでいまもなお一線級のGKであることを証明した。

 ユヴェントスは今後、8月7日にリヨンとのチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦セカンドレグを迎える。2月26日に行われたアウェイでのファーストレグでは0-1と苦杯をなめたが、リーグ・アンは早々にリーグを打ち切ったため、相手はコンディション面に不安を抱えている。このステージで敗れるようなことがあると、サッリへの評価が一転する可能性もあるだろう。ベル・ジョコ(美しいサッカー)で勝利をつかみ、CLを制するために招へいされたサッリだ。ベスト16敗退というのはあまりにも早すぎる。長く特殊なシーズンを駆け抜けてきたが、まだ終わるわけにはいかない。

文=佐藤徳和/Norikazu SATO

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