苦悩を乗り越えたオドリオソラ [写真]=Getty Images
レアル・ソシエダに所属する右サイドバック(右SB)アルバロ・オドリオソラが、28日のバルセロナ戦後にインタビューに応じた。同日、スペイン複数メディアが伝えている。
「サン・セバスチャン映画祭が土曜日ではなく日曜日に終了していたのなら、アルバロ・オドリオソラの物語は最優秀脚本賞を受賞していたかもしれない」と、スペイン紙『マルカ』は回顧する。このカンテラーノにとって、その日曜日は8カ月ぶりにプレーした日だった。2年前の夏にレアル・ソシエダに復帰したものの、度重なるケガにより戦力としての計算が立たず、昨シーズンは公式戦8試合・計418分のプレータイムにとどまった。そして今夏、セルヒオ・フランシスコ新監督から構想外を通達され、背番号を剥奪されるまでに至ったのだ。しかしながら、新天地探しが難航したことで、最終的にチームに残留することに。ただ当然、ここまで出番は一度たりとも訪れなかった。
が、28日。ラ・リーガ第7節でバルセロナと対戦するなか、右サイドバックのレギュラーを張っていたホン・アランブルが左膝の違和感を訴えたほか、イニャキ・ルペレスとアリツ・エルストンドも負傷離脱中だったことで、突如としてチャンスが巡ってきた。すると31分、得意の攻撃参加でエリア内にまで駆け上がってきたオドリオソラは、FWアンデル・バレネチェアのグランダーのクロスに飛び込んでネットを揺らす。57分にピッチを退いたものの、しっかりと起用に応えるパフォーマンスだった。
結局、自身の先制点が結び付かずに1-2と逆転負けを喫したが、試合後にインタビューに応じたオドリオソラは、「正直に言うよ。とても誇らしい気分なんだ」と告白。そして、「とても厳しい時期を過ごしてきたし、その事実から目を背けるつもりもない。人生をかけたチームであるラ・レアルを助けられなかったこと。そのことが、本当に辛かった」としつつ、「僕は自分に厳しい人間で、常に自己批判を繰り返し、他人を責める前にまずは自分を省みるようにしている。ここに帰ってきてから、この胸に刻まれたエンブレムを、自分が望んだほどに、自分が望んだ方法で守ることができなかった。理由はわからない。自分の体は大事にしてきたのに…。最近、あるいはこの1年間、体が言うことを聞いてくれなかった。体がついてきてくれなかった」と苦悩に満ちた思いを吐露した。
さらに、「1カ月前は、本当にひどく落ち込んでいた。でもそれが、転機になったと思う」と構想外を通達されたことにも触れた同選手は、「確かに、今夜は勝ち点こそ獲得できなかったけど、僕にとってはゴールを決め、心のクラブを助けることができた…」と語り、「僕は地獄にいた。ケガだらけで、なにもかもうまくいかなかった。本当に苦しかったよ。だから、『一瞬一瞬に全力を尽くそう』と言い聞かせてきたんだ。だって、僕は人生で最も愛するクラブと、生まれ故郷の街に身を置けるという特権に恵まれているから」とコメント。
続けて、「9カ月前に美しい双子の女の子が生まれたんだ。このゴールは彼女たちと、すべてをともに耐えてくれたパートナーに捧げるよ。1日もトレーニングを休まず、持てる力をすべて出し切ったことを誇りに思う。今日は勝てなかったし、このゴールも単なる1話に終わるだろうから満足していないけど、僕にとっては、人生でとても特別な1日となるだろう」と振り返った。
また、「この期間は本当に辛かった。自分の家にいるからこそ、すべてがさらに重くのしかかってくる。友達も家族もラ・レアルのファンだけど、ここ数カ月間は、誰もが僕にそれに関する話を聞いてこなかった。なぜか? すべてがうまくいってなかったからね」と愛郷の念ゆえに歯痒かったと、もどかしかったと。それでも最後には、「自分がまた1分、2分、5分とプレーする、あるいは試合に出場するかどうかもわからない。まったく見当もつかない。だけど、水曜日からのトレーニングでも、スビエタで毎日そうしているように、この1カ月間そうしてきたように、このエンブレムのために全力を尽くすつもりだ」とし、「自分が人生をかけているこのクラブに、あとどれくらい残れるかわからない。僕の夢は、娘たちにアノエタで走っている姿を見てもらうことなんだ。それが叶わないかもしれない、と思った瞬間もあったよ。でも、このゴールが、これまでの努力に対するご褒美なのだとしたら、この先も一瞬一瞬を全力で頑張っていける気がする。信じてもらえないかもしれないけど、僕はレアル・ソシエダを心から愛している」と決意を述べている。
今節終了時点で、降格圏一歩手前の17位(1勝2分4)に低迷するレアル・ソシエダ。この状況を打破するのは、ケガに泣き、あまつさえ愛するクラブに一度は居場所を奪われながらも、“地獄”から這い上がってきたオドリオソラなのかもしれない。
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