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充実のタイリーグ2年目を終えた細貝萌「人生で最も長く、勉強になったシーズンだった」

[写真]=Getty Images

 2019年に柏レイソルからタイリーグのブリーラム・ユナイテッドに移籍した元日本代表MF細貝萌。タイでの1年目はチームとしては最終節で優勝を逃す悔しいシーズンとなったものの、細貝自身は年間を通してボランチとしてチームの中盤を支えた。

 ブリーラム・ユナイテッドとは2年契約を結んでおり、2020年も同クラブでタイトル奪還を目指すシーズンを送るかと思われたが、開幕前に同リーグの強豪であるバンコク・ユナイテッドへのレンタル移籍が決定。タイでの2シーズン目は新天地でスタートすることとなった。

 2020年2月に開幕したタイリーグは、新型コロナウイルスの影響による2度の長期中断を挟んで今年3月末にようやく閉幕。思いがけず長く、イレギュラーなシーズンとなったタイでの2年目を戦い終えた細貝に話を聞いた。

取材・文=本多辰成

コロナ禍の長いシーズンでもコンディションを維持できた

——非常に長いシーズンとなりましたが、タイでの2年目は細貝選手にとってどんなものでしたか?
細貝萌(以下、細貝) 今までのサッカー人生で一番長いシーズンとなり、コンディション面などではかなり難しいシーズンでした。とくに最終盤は7週間で14試合、第17節から第29節までは週末とミッドウィークで13連戦をこなすという、これまでのサッカー人生でも初めてのハードな日程になりました。試合の翌日にリカバリーをして、その翌日には移動してまた試合というスケジュールが続いて。34歳になってチームのなかでも最年長なのですが、チームでのリカバリーとは別に、自主的なリカバリーの時間を増やすことで年間を通じてコンスタントにプレーできたことは自信にもなりました。これが本来あるべき調整だったと改めて感じましたし、そういった面で勉強になったシーズンでもありました。

——新型コロナウイルスの影響による長期中断が2度あり、特に昨年の開幕直後には半年近い中断がありました。その期間はどのように過ごしていましたか?
細貝 一度開幕して4試合を消化したにもかかわらず、もう一度開幕に向けてオフを過ごすような形になりました。通常のオフシーズンでは日本に戻ってしっかりとトレーニングをして開幕に備えるんですが、今回はコロナで簡単に日本に戻ることもできない状況だった。信頼しているトレーナーさんに日本から来てもらうこともできなかったので、再開に向けてのトレーニングはかなり難しかったように思います。

——中断期間のチーム練習はどのような感じだったのでしょうか?
細貝 最初の2カ月以上はオフになったので、その間は一人でトレーニングをしていました。オンラインでのチームトレーニングはありましたが、体幹トレーニングなどをするにしても実際にトレーナーが近くにいるのとは全く違いますから。その期間は夜間外出禁止令なども出ていたので、毎朝起きて「今日は何をしようか」と考えるような、今まで経験したことのない時間でした。

——そんな難しい状況のなかでも、シーズンを通してコンディションを維持していたように見えました。開幕時の昨年2月にはリーグの月間MVPに選出されていますし、その後も何度もタイのメディアが選出する節のベストイレブンに選ばれていました。
細貝 チームの結果が出ていなかったときにどうだったかと言えば、僕自身もうまくプレーできていなかったようにも思いますけど、シーズンを通してコンディションは悪くありませんでした。逆によかったくらい。タイリーグではとくに攻撃的な選手が目立つと思うので、守備的なボランチの選手がMVPに選んでもらえるというのはあまりないことだと思いますし、すごく光栄に思います。コンスタントに試合に出ることができましたし、この年齢になっても選手としては前シーズンよりもよかったのかなと。最終節でも34度くらいの気温があるなかでフル出場して走行距離も11キロ以上ありましたから、運動量も維持できていたと思います。

初のタイ人指揮官は「素晴らしい監督だと感じている」


——タイリーグ1年目に所属したブリーラム・ユナイテッドからバンコク・ユナイテッドへのレンタル移籍は、どのような経緯で実現したのですか?
細貝 ブリーラムでもコンスタントに試合に出ていましたし、最終戦でリーグ優勝は逃してしまいましたがACL出場も決まっていました。ブリーラムとの契約が1年残っていたので「来季はACL」という気持ちでいたんですが、日本に一時帰国していたときにバンコク・ユナイテッドからオファーが来ていると代理人から聞きました。ブリーラムでACLに出場するのも魅力的でしたが、また新しい環境で挑戦することで選手としても人間としても幅が広がるんじゃないかという思いで、最終的には移籍することに決めました。

——バンコク・ユナイテッドもリーグ優勝を狙うタイの強豪ですが、チームの印象はいかがでしたか?
細貝 ブリーラムもタイでは屈指のビッグクラブでしたが、バンコク・ユナイテッドもタイの大企業がオーナーを務めるクラブなので、すごくしっかりしたチームです。選手の能力に関してもブリーラムと同等で、タイではトップクラスだと思います。とくにタイ人選手の能力は高いと思いますし、タイ国内で常に優勝争いをしなければいけないチームだと感じています。

——今シーズンは結果的に5位に終わりましたが、開幕時は5連勝と好調でした。9月のリーグ戦再開後に失速してしまいましたが、長期の中断がチームの歯車を狂わせたのでしょうか?
細貝 それは間違いなくあったと思います。開幕して2月だけで4連勝していい流れだったのに中断に入ってしまって、再開直後の試合では勝つことができましたが、その後の6試合で勝ち点1しか挙げられない状況になってしまいましたから。ボールを保持して攻めているけれど結果的にカウンター一発でやられてしまったり、典型的なうまくいかないときの流れになってしまっていました。

——その後も苦しいチーム状況が続いて、ブラジル人のマノ・ポルキン監督からタイ人のトッチャタワン・スリーパン監督に交代しました。タイ人監督のもとでプレーするのは初の経験だったかと思いますが、いかがでしたか?
細貝 正直、タイ人の監督になると聞いたとき、最初は不安のほうが大きかったんです。自分のキャリアの中でもタイ人の監督は初めてだったので、どんな感じになるんだろうという思いもありましたし、マノ監督の退任後は一時オーストラリア人のコーチが指揮していい方向に行き始めていたので、個人的には「このままでいいんじゃないか」とも思っていました。トッチャタワン監督についてはムアントン・ユナイテッドで実績もある監督ですし、信頼できる監督だとは聞いていましたが、実際に指導を受けて素直にすごくいい監督だと感じましたね。しっかりとした戦術があって、それを落とし込むための細かな練習がある。試合中のシステム変更も「ここがこうだから、こう変える」とすごく的確でした。タイにもこんな監督がいるんだなというのが正直な感想で、他の国でも指揮できるような素晴らしい監督だと思っています。

——実際、トッチャタワン監督就任後にチームは再浮上しましたが、どういった部分が修正されたのでしょうか。
細貝 バンコク・ユナイテッドは以前から基本的にカウンターのチームで、前と後ろが完全に分裂してしまうところがありました。ブリーラム時代の対戦経験からもその欠点はわかっていたので、僕自身もボランチとしてどうにかそこを修正しようとトライしていました。それでもなかなか修正することができないでいたんですが、トッチャタワン監督がそれを完全に修正してくれましたね。全体をコンパクトにして、守備は全員でしなければいけないということを浸透させてくれたことで、成績も上がっていきました。

タイ王者のBGパトゥム・ユナイテッドはJリーグ勢にとっても簡単ではない

——終盤は順位を上げて来季のACL出場も狙える状況でしたが、惜しくも出場権を獲得することはできませんでした。
細貝 本当にもったいないですよね。今シーズンに関してはBGパトゥム・ユナイテッドが頭一つ抜けてしまって、結果が出なかった時期に一気に離されてしまった。チームとしても来季のACL出場の可能性がある4位に入れなかったのは痛かったです。個人的にもブリーラムでは最終戦で優勝を逃し、カップ戦でも決勝で負けて悔しい思いをしました。そんななかで今季はスタートダッシュに成功し、間違いなく優勝しなければと思っていたんですが、イメージしたものとは全く違う結果となってしまった。個人としては大きなケガもなくほとんどの試合に出ることができて選手としての充実感はありますが、結果としてはすごく悔しいです。

——今シーズンのタイリーグを独走したBGパトゥム・ユナイテッドは、今季と来季のACL本戦出場が決まっています。アジアの舞台ではJリーグ勢にとっても難敵になると思いますか?
細貝 選手の能力はやはりタイの中では圧倒的に高いですし、結果が出ているチームならではのサッカーをしていたと思いますね。外国人選手でしっかりと守って、タイ代表の選手たちで中盤をまとめながら攻撃する感じ。FWの外国人選手も能力は高いですし、堅いサッカーをできるチームだと思います。完成度という意味では、たとえば川崎フロンターレなどと比較してしまうとまだまだかもしれませんが、Jリーグのチームにとっても簡単に勝てる相手ではないと思います。

——タイは代表、クラブともにこの10年で急成長しましたが、「まだ足りない部分」はどのあたりに感じますか?
細貝 個人的に感じているのは、守備の部分でもう一歩厳しさが足りないということです。たとえば、寄せがもう一歩甘く、本当は寄せられるのにクロスを入れられてしまう場面などがかなりあります。普段の練習でも一応守備に行っているだけという感じで、たとえばドイツなら「なんでもっと寄せにいかないんだ」とうるさく言われてしまうレベルなんです。守備側が寄せ切れないのでオフェンス側はプレッシャーを感じずに簡単にパスを出すことができる。結果的にはそこでやられてはいないようにも見えるんですが。もちろん日本もドイツと比べたら違いますし、サッカースタイルの違いという部分もあると思いますが、タイに関しては全体的に甘いのかなという気はしています。気候の問題もあって暑すぎて毎回プレッシャーをかけに行けなかったり、ゲーム全体の流れを見て行くときとあえて行かないときの選択をしている場面もあるとは思います。

——ブリーラムに移籍した当初はタイの暑さにかなり不安を感じたそうですが、2シーズンを戦い終えた今、気候の面についてはどう感じていますか?
細貝 暑さについてはもう完全に慣れましたね。今も覚えていますが、ブリーラム時代のデビュー戦で80分間プレーしたとき、「これはヤバいな。この暑さで毎試合やっていくのか」とすごく不安になりました。サッカースタイルにも影響があるのは当然だと思いましたが、今はそのなかでどういうサッカーをするかを考えて、普通にプレーできるようになっています。暑さのなかで90分間どういう戦い方をすればいいのかという面では、タイのサッカーに順応できてきたと感じています。

——コロナ禍の影響で今後のタイリーグはいわゆる「秋春制」で行われていくことになりましたが、来季のことは決まっていますか?
細貝 リーグ戦が3月末で終了し、カップ戦も4月の頭に終わってシーズンが終了したのですが、まだ来季のことについては正式には決まっていません。いろいろな動きが出てきましたが、周りは関係なく、自分らしい選択ができればいいかなと思っています。

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