日本代表MF伊東純也 [写真]=Getty Images
2006年9月、2017年9月、2021年10月の三度、日本代表はサウジアラビアとのジッダでのアウェー戦で0-1と敗れている。得点0というのも屈辱的だ。
“鬼門”と言うべき因縁の地で負の歴史にストップをかけられるのか。10日のFIFAワールドカップ26アジア最終予選第3節は白星を挙げるしかない。
試合会場のキング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアムは風の通らない構造になっていて、異常な暑さと熱気に包まれる。その環境も影響してか、日本は毎回のように後半失速してしまう。2017、2021年の試合がまさにそう。似たような流れを繰り返さないためにも、やはり早い時間帯のゴールが必要で、それはチーム全員の共通認識に違いない。
累積警告による出場停止で3年前の敗戦をスタンドから見ていた伊東純也も「それができればベスト」と静かに言う。ただ、「今のチームは当時とは違う」という自信も口にする。
「0-0とか1-0とか、そういう状態だと相手も気迫を持って来ますから、早い時間の先制点は大事かなと思います。でも、そんな恐れなくていいかなと。みんなが自信を持ってプレーできていますし、3年前より余裕を持ってプレーできているとは感じますね」と前向きにコメントする。
確かに9月シリーズを見れば、選手層も攻撃バリエーションも格段に上がっている。それを彼らはピッチ上でしっかりと証明する必要があるのだ。
苦杯を喫した前回対戦に出られなかった分、伊東にかかる期待は非常に大きい。おそらく森保一監督は、先発両ウイングバックには堂安律と三笘薫という前回の組み合わせを踏襲する可能性が大。となれば、今回も伊東はスーパーサブとして途中から攻撃のギアを上げる役割を担うことになる。相手も消耗してきた時間帯に入ってくれば、怖さは倍増するはずだ。
「スタートでも、途中からでも特に気にしてないですね。やることは変わらないので。出たら常にチームの勝利に貢献できるように得点に絡もうと思っているので、引っ張っていければいい」と本人は指揮官の起用法が変わっても自らがけん引役だという意識を持ち続けている。
前回の最終予選では全12得点中、7得点に絡んだが、今はひと味違った形で脅威になろうと考えている様子。確かに思い返してみれば、森保ジャパンが発足した2018年当時、彼は堂安の代わりに出てくるゲームチェンジャーだった。もちろん6年前とは実績も経験値も異なるが、必要に応じて主役にも黒子にもなれるという柔軟性と多様性には磨きがかかった。
その能力の高さは森保監督にとっても心強い限り。サウジアラビア戦でも切り札として右サイドを徹底的に打開してくれるはず。同じ3-4-2-1をベースとする相手とはミラーゲームになる分、サイドの主導権争いは勝負の命運を大きく左右する。彼に託されるものは少なくないのだ。
願わくは、左ウイングバックに中村敬斗を入れて、スタッド・ランスコンビの共闘を積極活用に推し進めてほしいところ。最近のリーグ・アンでの戦いを見ていても分かる通り、中村の4連続ゴールのほとんどを伊東がお膳立てしているからだ。
「敬斗が4点連続で決めるとは思わなかったけど、うれしいはうれしいですね。どっちかというと俺はアシストとかアシストの前のパスを出すことが多い。それがチームの形になっているので、まあいいかなと思います。敬斗は俺がクロスを上げる時に絶対(中に)入ってくる。見ないでも『ファーに入ってきているな』と感じますし、うまくシュートを打てる位置に持っていってあげればいい。そういうのを代表でもうまく出せればいいと思います」と伊東も中村との共闘を熱望。阿吽の呼吸を見せ、結果を出している2人を使わない手はない。
彼らの存在も勝利の大きな原動力になるはず。仮に前回のように後半まで無得点で試合が進んだとしても、伊東、中村というカードが残っているのはチームにとって非常に大きい。その伝家の宝刀を森保監督がいつ抜くのか。そこにも注目しつつ、大一番を見極めていくべきだ。
「サウジアラビアと(15日の)オーストラリアを叩けば、ほぼほぼ(ワールドカップへ)行けるんじゃないかと思うので、次に集中したいです」
9月シリーズのラストにこう語っていた伊東。それを現実にするか否かは自分たち次第。苦しみ抜いた前回大会最終予選からの大きな成長を証明するためにも、前半戦最大の山場となるこの2連戦は勝ち点6を手にしたい。ゴール、アシストという結果で輝きを放つ伊東の姿をぜひとも見たいものである。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子