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南野拓実、磨き上げた「ゴール前の感覚」と「走力」で違いを見せる! 完全復活を遂げた今季を締めくくるシリア戦へ

2024.06.10

日本代表MF南野拓実

■アジア最終予選に向けたテスト

 9月から始まる『FIFAワールドカップ26アジア最終予選』に向け、チームの底上げを進めている日本代表。すでに最終予選進出を決めている彼らにとって、11日のシリア代表戦(広島)は数少ないテストの機会となる。

 森保一監督は、6日に行われた『FIFAワールドカップ26アジア2次予選』のミャンマー代表戦(ヤンゴン)で攻撃的3バックにトライ。22歳の成長株・FW鈴木唯人を後半から代表デビューさせるなど、これまでとは異なる色合いをチームにもたらそうとしている。

日本代表

シリア代表戦を控える日本代表メンバー


 シリア代表戦もその流れを継続しつつ、遠藤航、冨安健洋、田中碧、上田綺世ら主力級を揃って先発起用する見通しだ。シリアは、日本代表がアジアカップで苦しめられた蹴り込みサッカーを展開してくることが予想される。日本としては同じミスを繰り返してはいけない。

 そこは、2シャドーの一角で先発することが予想される南野拓実も強調している。

「シリアはすごくいい相手。シンプルに前にプレーしてくる相手に対して、僕らはひとつ、解決策を見出さないといけない。(最終予選進出の可能性を残しているため)相手も必死にくると思うし、本当に死に物狂いでくる相手にアジアカップで飲まれた部分もありますから、しっかり勝ちにこだわってやりたいです」

 2022年カタールW杯・クロアチア代表戦でのPK失敗の後、1年近く代表から遠ざかった南野。ザルツブルク時代の恩師であるアドルフ・ヒュッター監督の下、一からフィジカル面の改善に努めた。体のキレを高め、高強度ランニングの距離や回数を引き上げるべく、地道な努力を続けていたという。

南野拓実

モナコでは開幕直後から躍動し続けた


「チーム内にグラフがあって、(走りの)高い数字を出す選手は赤になるんです。自分は全部の要素でつねに赤い部分が多かった。そこは自分の強みになっています」と、効果的な走りができるようになったことを明かした。

 同時に、継続的な試合出場によってゴール前の感覚にも磨きをかけることができた。

「ターンとかアタッキングサードでどういう仕事ができるかっていうところのスムーズさは、前のシーズンに比べてよくなっている。それが数字にも表れたのかなと思います」と、南野自身が大きな手応えをつかんだ状態で代表復帰を果たし、自身2度目のアジアカップに挑んだのである。

 このビッグトーナメントで、彼は初戦・ベトナム代表戦での2ゴールからスタート。モナコでの好調をそのまま持ち込み、日本優勝の原動力になってくれるという期待も高まった。だが、2戦目のイラク代表戦でまさかの苦杯を喫すると、そこからスタメンを外れてしまう。インドネシア代表戦以降は、途中から攻撃のギアを上げる役割を託されたが、思うようにいかないまま、8強での敗退という信じがたい結末を余儀なくされた。

■アジアカップでの経験を糧に

南野拓実

アジアカップはベスト8で敗退となった


 南野は「最後のイラン代表戦では途中から入って何も流れを変えることができなかった。ブロックを敷いてくる中東の相手をどう崩していくか。そこをチームとしても、個人としても意識して戦う必要があります」と、苦渋の表情を浮かべる。アジアカップ後もこの悔しさを忘れることなく自己研鑽に励んだのだろう。

 それを踏まえてのシリア代表戦ということで、モチベーションは非常に高い。アジアカップで早々に敗れた苦い経験を完全払拭し、今季をスッキリと終えること。それが今の南野の目指すターゲットと言える。そうすれば、いい形で来季に向けて切り替えられる。モナコでリーグ戦9ゴール6アシストという目覚ましい実績を残し、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得に貢献した今季、「南野は完全復活した」という高い評価を受けた。

 レキップの年間ベストイレブンに選出されるほど、多くの人々の注目を再び集めることができたが、最終目的地はこのレベルではない。リヴァプール時代に果たせなかったCL上位進出を自らの力で果たし、W杯でも眩いばかりの輝きを放ってこそ、本人が納得できる領域に到達できる。まだまだ今は長い道のりの途中でしかない。

南野拓実

所属クラブのモナコでは結果を残し、来季のCL出場権獲得に貢献


「(鈴木)唯人みたいな若い選手も入ってきましたけど、自分も全然、気持ちは若いですよ(笑)。W杯予選に関しても『これが最後』って気持ちは全くない。今回の2次予選2試合も大事なゲームになると集中しています。せっかく欧州組の選手たちが集まって活動しているので、何かをつかんで収穫のあるシリーズにしないといけない。僕はそう思っています」

 目をギラつかせた南野が2シャドーの一角で担うのは、やはりゴールに直結する役割。周囲に上田、前田大然、田中碧らがいる中でのプレーになるが、南野は周りを生かしつつ自らが生きる術を知っているはずだ。それをピッチ上で具現化し、「決めるべきところで決める」という、今季最も伸びた部分を出しきれれば一番いい。

 現代表で最多となる「20得点」を誇る男には、さらに数字を伸ばしていくことが求められる。30得点超えの本田圭佑や香川真司らを視野に入れ、貪欲に泥臭くゴールに突き進んでもらいたい。

取材・文=元川悦子(もとかわ・えつこ)

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94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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