[写真]=金田慎平
「(川崎)フロンターレは一番試合に出ることが困難なチーム。そこで競争に勝って出ることができたら、自分の成長は計り知れない」と旗手怜央が言えば、三笘薫も「厳しい戦いですけど、ポジションをつかめれば日本代表だったり、海外だったりと自分の可能性が広がっていく」と語気を強める。2月1日から沖縄で行われている2次キャンプに帯同する期待の“大卒ルーキーコンビ”は今、並々ならぬ闘争心を燃やしている。2人は森保一監督率いるU-23日本代表に何度も招集され、新シーズンを迎えるJリーグでひと際、注目を集める存在だ。
静岡学園高校から順天堂大学を経て加入する旗手は、2019年12月7日のJ1最終節(北海道コンサドーレ札幌戦)でいち早くJデビューを飾った。一方、川崎のアカデミーで育ち、筑波大学に進学した三笘も、昨年9月8日のYBCルヴァンカップ準々決勝(名古屋グランパス戦)に出場している。大学スポーツの国際大会・ユニバーシアードの日本代表など、大学時代から同世代たちより頭一つ抜きん出た実績を残してきた彼らは、「即戦力」との呼び声が高いのだ。
とはいえ、本人たちが自覚しているように、川崎のアタッカー陣はハイレベルなタレントがひしめく大激戦区。旗手は左右両サイドにトップ下と2列目全てのポジションでプレーできるが、2018年JリーグMVPの家長昭博や成長株の脇坂泰斗、大ベテランの中村憲剛らとポジションを争うだけに、定位置確保はそう簡単ではなさそうだ。
「技術の向上は永遠の課題だと思うし、そこを上げていかないとフロンターレでは試合に出られない。それに守備もすごく求められる部分。高校時代は守備の練習をしてこなかったので、大学に行ってから意識が高まりましたけど、まだまだ読みとか予測が足りないと感じます。いい攻撃をするためには体力を消費しない『楽な守備』が大事なので、それを身に着けていきたいですね」(旗手)
左サイドを主戦場でとする三笘は齊藤学や長谷川竜也が実績ある面々がライバル。「サイドハーフとしては、個人でアタックして相手をはがせないといけないので、まずボールを持った時に人との違いを見せることが重要になってきます。それに攻守両面でどれだけハードワークできるかも大切。僕はスプリント力や運動量などフィジカル面がずっと課題なので、そこを伸ばしていければ、技術も発揮できるようになると思うんです。今年は年間試合数も多いので、よりタフにならないといけないですね」と自身の足りないところを補うべく、地道な努力を続けている。
そんな2人が目指すのは、もちろん半年後の東京五輪の大舞台だ。1月のAFC U-23選手権に参戦するも、日本は1次リーグ敗退という屈辱を味わった。旗手は「今のままじゃ、五輪なんて『夢のまた夢』」だと自戒を込めて振り返った。
「日本を代表する選手としてやってはいけない結果だったし、今まで自分がやってきた中で一番不甲斐ない試合だった。自分が(久保建英など)海外組の選手に勝てるものが何かと聞かれても、ハッキリとは言えないですね。現状だと五輪は無理だと実感しています。チャンスはフロンターレで(試合に)出た時に初めて訪れる。それを得るために今をしっかりやりたいという気持ちです」
三笘も思いは一緒だ。川崎でレギュラーをつかむことで五輪、さらに夢である海外移籍への道を切り開けると信じている。
「このチームはみんなうまいし、ボールも来ると思うので、パスを受けた時にどれだけできるかが試されてくる。数少ないチャンスを確実にモノにして、インパクトを与えるゴールやアシストをして、チームの勝利に貢献することができればいいかなと思っています。川崎アカデミーの先輩の三好(康児)さんや板倉(滉)さんもそうですけど、同世代がどんどん海外に出ているのは刺激ですし、将来的には自分もそういうプレーヤーになりたい。そのためにもポジション争いに勝つことに集中していきます」
才能あるアタッカー2人が揃ってブレイクすれば、王者奪回を目指す川崎にとっても大きなプラス材料となる。大学時代から数多くの大舞台でともに戦ってきた彼らには、特別な絆と関係性がある。三笘も「ずっと一緒にやってきたので、お互いにやりたいことはよく分かります。それぞれにしかない強みを引き出せれば理想的ですね」と話した。息の合ったホットラインが開通し、攻撃面で新たなバリエーションをもたすことができれば、鬼木達監督にとっても力強いはずだ。
川崎のシーズン初戦は16日のルヴァンカップ・清水エスパルス戦。翌22日にはJ1開幕戦(サガン鳥栖戦)が控えている。この重要なゲームで旗手怜央と三笘薫の姿はあるのか。大型ルーキーコンビの動向が大いに気になる。
文=元川悦子
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By 元川悦子



