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【インタビュー前編】曺貴裁監督が描く新生・浦和レッズの理想像「自分たちが自信を持てる“確固たる柱”を作る」

1時間前
【インタビュー前編】曺貴裁監督が描く新生・浦和レッズの理想像「自分たちが自信を持てる“確固たる柱”を作る」

浦和レッズの曺貴裁監督 [写真]=元川悦子

 AFCチャンピオンズリーグでは2007年、2017年、2022年に三度の優勝を果たしているものの、J1リーグで頂点に立ったのは2006年の一度のみ。浦和レッズは2023年度から3季連続で100億円以上の売上を記録している日本最大級のビッグクラブだが、常にリーグ優勝争いに絡めない状況は、Jリーグ、そして日本サッカー界全体にとっても好ましいものではないだろう。

 こうした状況を変えるべく、シーズン移行が実施される2026/27シーズンから、クラブOBの曺貴裁監督が就任した。「自分たちが主導権を握っていくアグレッシブなスタイル」を目指し、チーム作りを進めている。8月7日(金)のガンバ大阪戦から新生・浦和の戦いがスタートするが、曺監督は愛するクラブをどのように変え、いかにしてパッションを植え付けていくのか。単独インタビューで、その思いを力強く語ってもらった。

取材・文=元川悦子

ーー堀之内聖SDが就任会見で「彼の熱さ、熱量、そういったものが今の浦和レッズには必要だと強く感じた」と曺監督の抜擢理由を語りました。その上で、「フットボールの面においては、縦への速さ、推進力、インテンシティの高さ、攻守においてアグレッシブに90分間戦う姿勢を高く評価した」とも話していました。曺監督はその方向性でチーム作りを進めているんですよね?
曺 そうですね。マチェイ・スコルジャさんが指揮を執っていた昨季までは、マンツーマンの守備をしていたと聞いていました。ただ、僕としては相手コートからサッカーを始めること、相手がボールを持った時にもボールを奪ってゴールに向かうこと、奪われた後も切り替えで奪い返していくことを根幹に置きたいと考えています。それができて初めて、ボールをどう動かすか、どこを狙うかという段階に進めるという考えが、僕の中にあります。一例を挙げると、FIFAワールドカップ2026準決勝のアルゼンチン代表対イングランド代表です。アルゼンチンが終盤に挙げた2ゴールを見ても、鋭く前に出ていって得点を取っていますよね。イングランドがそうでしたけど、自陣ゴール前にベタ引きになっていたら、いつかやられてしまう。そういう傾向は万国共通になってきた印象があります。Jリーグも、そういった色合いが強くなるでしょう。昨季まで指揮を執っていた京都サンガF.C.でも、僅差で勝敗が決まることを何度も経験してきました。浦和も、自分たちが自信を持てる“確固たる柱”を作っていかないといけない。それをしない限り、順位を上げることも、ACL出場も、優勝も語れないと思います。選手の中には『ここまでやるのか』と感じている人もいるかもしれないですけど、それが日常に変わるようにしていきたいと思っています。

ーー昨季までの浦和は、ボールを奪ってからシュートに至るまでの時間がJ1の中でも長い部類に入るという指摘もありました。それが得点力不足につながっていた側面もありますよね。
曺 昨季のデータを見ると、その点は気になっていた部分です。ボールを奪ってからシュートまでの時間が長いこと自体が悪いとは言い切れませんし、時には1分〜1分半かけてシュートまで持ち込めるケースもあります。ただ、10秒以内でシュートを打てる形が当たり前になってくれば、より得点機会は増えていくはずです。30秒近くシュートを打てないようなボールの動かし方や意識が続いてしまうと、今のレッズが置かれている立ち位置から脱皮するのは難しいと感じています。もちろん監督も選手も変わったので、昨季の話を持ち出すのはフェアではないかもしれません。それでも、昨季から継続してレッズでプレーしている選手たちには、そうした意識を持ってもらいたいと考え、沖縄キャンプから取り組んできました。

ーーそういった質的変化に加え、マインド的な変化も必要ですよね。期限付き移籍から戻ってきた宮本優太選手も「京都の方がチャレンジャー精神が強かった」といった発言をしていました。
曺 例えば鬼木達監督に目を向けると、川崎フロンターレから鹿島アントラーズに移ってからは、鹿島の伝統を守ることだけで優勝を目指したわけではなく、鹿島として新たなチャレンジをしたからこそ、9年ぶりのリーグタイトルを獲得できたと思っています。それをレッズに置き換えても「チャレンジ」という言葉は間違いなく必要です。今までやってきたものを守りながらやるだけであれば、監督が僕に代わる必要もなかった。結果がどう出るかは誰にも分かりませんが、今進めている方向性で勝利の確率は高くなると信じています。それを選手たちに伝え、結果を導き出せるようにしたいです。

――沖縄キャンプ中には選手との個人面談も行ったそうですが、反応はいかがでしたか?
曺 これは聞いた話なので正しいかどうかは分かりませんが、昨季までは練習が9時開始の場合、9時ギリギリにピッチへ出てきて、何となく時間的にも少し曖昧な雰囲気の中で始まっていたそうです。でも今は、そんなことは絶対にありません。選手たちもいい意味で緊張感を持ち、早い時間から準備してくれています。それは僕が「早く来い」と言ったからそうなったわけではないですよ(笑)。本当に強いチームというのは、一つの練習に臨むにあたって何がベストなのか。選手一人ひとりが判断できる集団です。チームとしての戦い方や分析といった要素もありますが、ワンプレー、ワンプレーに向けて、一人ひとりが全力で臨める状態になれば、グッと伸びると思います。森保(一)監督が率いた日本代表を見てもそうですが、選手たちは全体練習の前からさまざまな準備をして、最高のパフォーマンスを出そうとしています。今はいい方向に進んでいると思いますし、そのあたりをより磨いていきたいですね。

――今季の浦和はACLがなく、J1、YBCルヴァンカップ、天皇杯の国内3大タイトルに集中できる環境にあります。チーム作りを進めていくうえでは、プラスに働く部分もあるのではないでしょうか。
曺 今のところ、自分たちの公式戦はACL参戦クラブほど多くないので、コンディションを引き上げながら、選手たちの力を1割、2割、3割と伸ばしていかなければならないと思っています。我々には“一戦必勝”で戦えるメリットがあると、前向きに捉えています。

――京都が40人近い選手を登録しているように、ACLに挑むクラブは多めの陣容を揃えています。一方で、浦和は現状27名。今オフには15名の退団者が出たことで、批判的な意見もありましたが、現状をどのように捉えていますか?
曺 それはクラブ側の判断もありますが、今のJリーグはまだウインドウが開いているので、新しい選手が入る可能性もあります。特別指定で来ている大学生が戦力になってくれることもあるでしょう。今、何か決まっていることを話せる立場にはありませんが、自分に課せられた使命は、目の前にいる選手たちをどう組み合わせて強くしていくかということです。彼らの意識を高め、取り組んでいくしかないと感じています。選手たちはチームが目指している方向性のために努力すべきであって、自分自身だけが何かを得ようとして努力しても、チームの勝利にはつながりにくいのが現実です。「自分がレッズを勝たせるんだ」という強い気持ちを持てるように、僕が働きかけていくことは一つの重要な役割だと思っています。

――今大会の日本代表は結果的にベスト32でしたが、チームの一体感や結束力の強さが印象に残りました。曺監督も、そこからヒントを得る部分はあったのではないでしょうか?
曺 それはもちろんです。日本代表のベンチの雰囲気や勝利を目指す意気込みは、世界でもかなり優れていたと思います。ただ、我々は一体感を作ること自体が目的なのではなく、勝つために必要な最低条件として存在するものだと考えています。みんなで仲良くバーベキューをしていたら勝てるわけではありません。そこは履き違えてはいけないと思っています。今のレッズは、40歳の(西川)周作から17歳の和田(武士)まで幅広い年齢層になっていますが、それぞれの立場でチームを引っ張っていってほしい。(水沼)宏太や南野(遥海)のような新加入選手も来てくれて、チームのバリエーションはかなり広がったと思いますし、彼らがもたらす刺激も重要だと感じています。

――特に南野選手は明治安田J1百年構想リーグで7得点を挙げ、この半年でブレイクした選手の一人です。
曺 僕も京都にいたので、ガンバ(大阪)にいた彼のことはよく見ていました。百年構想リーグを含め、彼のシュートの決定率は我々のスカッドの中ではかなり大事になってくると思っています。楽しみな存在の一人です。

――水沼選手、福井光輝選手、林幸多郎選手も経験値がありますし、工藤孝太選手もファジアーノ岡山で試合経験を積んで戻ってきました。効果的な補強になったように感じます。
曺 彼らは決してエリート街道を歩んできたわけではありませんが、それぞれの立場でレッズが進むべき方向に向けて力を発揮できる選手たちだと思っています。その中でも宏太は、オーストラリアで優勝を経験し、それを持ち帰ってきてくれた。また違った角度から刺激になってくれるという期待は大きいですね。

 こうした新戦力の加入も含め、今の浦和からは「強くなりたい」「勝ちたい」という意欲が色濃く感じられる。その思いが新シーズンの戦いでどのような成果につながるのか。ここからの動向を注視していきたい【後編に続く】。

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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