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角田誠、飯田真輝、昌子源… 偉大な先輩DFの統率力を焼きつけ、犬飼智也が柏の救世主に

2023.08.29

柏DF犬飼智也 [写真]=J.LEAGUE

 2022年のJ1リーグは7位とまずまずの結果を残しながら、今季は序盤から低迷を強いられている柏レイソル。5月には長年指揮を執ったネルシーニョ監督が退任し、井原正巳ヘッドコーチを監督に昇格させたが、急浮上というわけにはいかないまま、ジリジリと時間が過ぎていった。

 夏の中断前の戦いを見ると、6月3日の北海道コンサドーレ札幌戦の4-5、6月10日の横浜F・マリノス戦の3-4、7月16日のガンバ大阪戦の1-3と大量失点ゲームが少なくない。総失点数は同じく下位に沈む湘南ベルマーレや横浜FCに比べると少ないものの、肝心な時に守り切れない状態のままではJ1残留も難しくなりかねない。そこで井原監督は7~8月の中断期間に守備の再構築を徹底して行ったという。

 そのキーマンとして浦和レッズからレンタルで赴いてきたのが、30歳の犬飼智也だ。清水エスパルスのアカデミーで育ったDFは2014年に松本山雅FCの昇格請負人となり、復帰した古巣の清水でも2016年のJ1昇格に貢献。2018年には鹿島アントラーズへ移籍し、FIFAクラブワールドカップも経験した。

 そして2022年に浦和レッズの門を叩いたわけだが、同年4月の札幌戦で左膝蓋骨骨折および膝蓋腱部分断裂を負い、昨季を棒に振る形となった。迎えた今季、浦和はマチェイ・スコルジャ監督率いる新体制に移行し、マリウス・ホイブラーテンという新戦力を補強した。彼とアレクサンダー・ショルツの両DFはワールドクラスで、ケガ上がりの犬飼は高い壁にぶつかった。結局、今季はカップ戦要員と位置付けられ、5月には30歳の大台を迎えた。「このままじゃいけない」と危機感を募らせていた時の柏からのオファーだったのである。

「(浦和では)しんどい時期は結構ありました。『絶対復帰する』と思ってやってきたけど、1~2カ月に1回のペースで試合に出るだけだと、どんなに練習で追い込んでも体がきつい。やっぱり試合に出ることが一番だなと思っていたんです」と本人は出場機会に飢えた状態で8月頭に柏に来たことを明かす。

 新天地での犬飼は練習から遠慮することなく声を出し、周囲を鼓舞しようと試みた。

「今、試合に出ている選手で自分より上なのは瑛ちゃん(片山瑛一)くらい。彼はプレーで見せていくタイプなので、自分が引っ張っていくんだという自覚を持って取り組みました。そういう立場で呼ばれたのも分かっていましたし、まあ大人になりましたね」と犬飼は笑ったが、統率力ある先輩と共闘してきた経験が脳裏に焼き付いているからこそ、積極的にアクションを起こせたのだ。

 思い返してみると、20歳で松本にレンタル移籍した頃の彼は一つひとつの判断に躊躇し、致命的なミスを犯すことも少なくなかった。敗戦に直結するシーンも散見され、そのたびごとに反町康治監督に「ワンちゃん~」と怒られていた。隣に陣取っていたキャプテンの飯田真輝は常に声を出して守備陣の修正を図っていたが、当時の犬飼はその重要性を心底、理解できていない様子だった。「自分はまだまだ若手」という感覚が抜け切らない部分もあったのだろう。

 その後、清水でリーダーシップに秀でた角田誠、鹿島でも昌子源と共闘。小笠原満男のようなカリスマ的なリーダーとも戦い、自分が引っ張ることの大切さを身に染みて感じる機会が増えていったのだ。

「飯ちゃん(飯田)、角田さん、源くん…。自分の中でパッと思いつく統率力ある先輩と言えば、そういう人たちですね。僕も人を動かせるCB、勝たせるCBになりたいとずっと思いながらやってきた。柏でそうなれたいいと考えながらやってます」

 犬飼の熱い思いは今、ピッチ上で遺憾なく発揮されている。彼が加入してからの柏は京都サンガF.C.に勝利。セレッソ大阪、ヴィッセル神戸に引き分けと無敗。8月26日のサンフレッチェ広島戦も強力攻撃陣に攻め込まれたが、43分の中野就斗のビッグチャンス、57分のドウグラス・ヴィエイラの決定機はそれぞれ体を張って阻止。ラインの上げ下げやクロス対応含めてほぼパーフェクトな守備を見せ、勝ち点1獲得の原動力になったのである。

「今日は本当に僕だけじゃなくて、全員が体を張って最後まで集中してやれていた。こういうゲームをスタンダードにして、もっとチャンスを増やして、勝ちが欲しいなと思います」と犬飼は手ごたえと悔しさの両方をにじませた。

 守備の安定という意味では、間違いなく“犬飼効果”が色濃く表れている。守護神の松本健太も「ワンさんが入って(古賀)太陽のパフォーマンスも良くなっているし、チーム全体が前向きになれている。声出しは立田(悠悟)もよくやっていますけど、試合中にミスやアクシデントが起きた時に即座にメンタルを切り替えられる強さがワンさんにはある」と評していたほどだ。

 そんな上昇気流をより鮮明にするためにも、犬飼自身がチームに勝利をもたらすくらいの働きがほしいところ。彼は以前からリスタートの得点力が高い選手。そろそろその力を見せるべき時が来ている。

「次は取りますよ」と本人も目をギラつかせたが、9月2日の横浜FM戦でゴールが生まれれば、柏は間違いなく勢いに乗るはずだ。

 今こそ、犬飼智也の真価を示すべき時。ラスト8試合はこの男から目が離せない。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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