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平均得点「2.00」へ。城福監督の導き出した“答え”とは【J1クラブ展望/広島】

2020.02.20

写真=中野香代

 平均得点2.00。サンフレッチェ広島の歴史上、2015年しか達成していないこの大台に届くことが、「タイトル」という目標達成への大きなチャレンジとなる。

 昨シーズンの広島は1試合の平均得点が1.32。第15節の湘南戦から「相手対策よりも自分たちが主体的にゲームを構築する」というコンセプトを明確に打ち出して以降、平均得点を1.14から1.45まで引きあげた。ボールの保持力も劇的に向上し、開幕14試合でわずか3試合しか相手を上回れなかったボール支配率が、湘南戦以降は20試合中13試合で50パーセント以上を記録。終盤5試合では鹿島戦の49.6パーセントを除き、すべての試合で58パーセント以上、あの川崎を相手にもアウェイで60.2パーセントの支配率を叩きだした。

 だが、その5試合で得点はわずか3点。サイドのコンビネーションからチャンスは作れる。しかし、サイドを崩しても遅攻となって相手守備陣が待ち構えている状況が難しさを増幅させた。森島司川辺駿ら若いMFたちが台頭する一方で、チャンスをゴールにつなげることができない。

 城福浩監督は考えた。能力の高いFWはいる。レアンドロ・ペレイラだ。シャペコエンセやパルメイラスといったブラジルのクラブで実績を残したストライカー。指揮官はその能力に惚れ込み、彼の戦術理解が深まる前から積極的に起用する。その要求に彼は応え、9試合で4得点とある程度の結果を出した。

 だが、一人のストライカーにゴールを託すサッカーでは、安定した結果を出せない、それは2018年、パトリックが旋風を巻き起こした時に実感したことだ。レアンドロ・ペレイラの得点能力は疑いない。しかし彼に頼るのではなく、彼がチームに活かされる形にしないと、タイトルは取れない。

 どうやって得点力を増強するか。出した答えは「ショートカウンター」。ボールを保持し、相手を押し込む。そこでボールを失ってもすぐに切り替え、何度も何度も奪い返し、ショートカウンターでゴールを陥れる。昨年まではなかった速攻を織り交ぜて、破壊力を増幅させたい。ただ、そのためには前線からの積極的な守備が必要だ。

 ブラジルでもヨーロッパでも、前からの守備など求められてこなかったと言うストライカーのレアンドロ・ペレイラに対し、城福監督は熱く説く。

「君がこれをやってくれないと、広島の力にはなれない。でも、やってくれると、君には多くのゴールチャンスができる」

 2月16日、ルヴァンカップ開幕。ストライカーは前線から相手DFにプレッシャーをかける。動揺したセンターバックのパスが少しずれた。森島司が狙い澄ましてパスカット、そしてスルーパス。ペナルティーエリア内で受けたレアンドロ・ペレイラの強烈な左足シュートが、ニアサイドをブチ抜いた。

「FWの仕事はゴール。でも、監督の言うやり方も実践したいんだ」

 彼がやるなら、誰もがやる。積極的な前線守備からのショートカウンターと、昨年から磨きをかけたサイドアタックに前線のタレントを活かす形が完成すれば、目標とする平均得点2.00に大きく近づくはずだ。

【KEY PLAYER】MF 44 ハイネル

[写真]=中野香代


 突然、ランニングのグループからハイネルがいなくなった。どこに行ったのか。しばらくすると、彼はグループに戻り、また走り出した。走っている最中に吐き気を催し、トレーニングから外れて吐きに行っていたのだ。

「普通ならそこでトレーニングをやめてしまう。でも、彼は続けた。意気込みの証明ですね」(城福浩監督)

 「世界で最も危険な街」と言われたこともあるブラジル・セーハで育ち、両親は離婚。貧困の中で育ってきた男にとって、サッカーは厳しい現実から抜け出す夢の舞台。家族と安心して暮らしていける日本で成功し、自分の存在を確立したい。だからこそ、ハイネルは全力で練習に向き合った。だが、広島のトレーニングは過酷だ。宮崎キャンプで肉体は限界に達し、全く動けなくなって別メニュー。ピッチ上で周りに怒鳴ってしまい、指揮官に叱責されたことも。大丈夫か、ハイネル。そんな不安を彼は、自身のプレーで払拭した。

 ルヴァンカップ開幕戦の25分、森島司が入れたフワリとしたクロスにトップスピードで飛びこみ、ボレーで折り返してドウグラス・ヴィエイラの先制点を演出した。その後も右サイドで圧巻のプレーを見せ、横浜FCの左サイドを沈黙させたのだ。広島のストロングは左サイド。しかし稲妻のようなスピードと質の高さを合わせ持つハイネルが右サイドで機能すれば、攻撃にグッと厚みを増す。オフ・ザ・ピッチではジョークを連発し、鼻歌を歌いまくる陽気なブラジリアン、その本領発揮は間もなくだ。

文=中野和也

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By 中野和也

サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン「SIGMACLUB」編集長。長年、広島の取材を続ける。

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