[写真]=Jリーグ
悲願のリーグ制覇、そしてアジア王者へ――。
タイトル奪還に向けて、チームを指揮する長谷川健太監督は大きく舵を切った。就任3年目の目玉は新布陣の導入。これまでの4―4―2から、攻撃力アップを掲げて4―3―3に挑戦している。「昨季の46得点をどこまで増やせるか。55得点を目指したい」。19年シーズンはリーグ2位タイの29失点と堅守こそ健在だったものの、決定力を欠くシーンも目立ち、それが最終盤の失速につながったと言っても過言ではない。磐田からブラジル人MFアダイウトン、鹿島から元ブラジル代表MFレアンドロを補強する中で「今のメンバーならこっちの方が合う。『よりアグレッシブに』を具現化していきたいし、昨シーズン以上のものを見せられると思う」と変更の理由と自信を口にした。
クラブ史上最速の1月6日に始動し、すでに3試合(ACLプレーオフ1試合、同1次リーグ2試合)を消化したが、選手たちの手応えは十分のようだ。右サイドバックを務める日本代表DF室屋成は「前線に強烈な個がそろっているので、これを最大限に使うには3トップが面白いと思う」と話し、ブラジル人トリオが並んだ最前線の頼もしさを実感。さらに“Jリーグでのプレー経験のある外国籍選手”の利点は守備面で活かされている。長谷川監督は「日本のクラブの指揮官が求めることはだいたい同じ。なので、新加入でも戸惑いは少ないはず」と話したが、大卒1年目のルーキーながら公式戦3試合連続で先発しているMF安部柊斗の言葉がそれを証明する。「前からしっかりとチェイスをしてくれるので、守備もスムーズにいっている」。いわゆる“エゴイスティック”ではなく、献身性も兼ね備えていることでチーム一体となってのディフェンスが可能だと指摘した。
もちろん、現状で新たなチャレンジが上手くいっているからといって、4―4―2を完全に捨て去ったわけではない。『プランA』、『プランB』という括りよりも、『二刀流』がFC東京の目指すべき姿だ。「試合の中でもある程度は使い分けていけないと、リーグとACLの両方を勝ち抜いていけない。例えばサイドをケアする必要のある時間帯になった時に、メンバーを交代せずに対応できるのが理想形」。長谷川監督は4―3―3が真の意味でFC東京の布陣となるまでに時間がかかることを十分に承知しながら、自分にも選手にもスタッフにもより高いレベルを要求している。
目的地は日本のクラブが一度も到達していない未開の地。名将に率いられ、2チーム分の戦力を整えた新生“FC東京”が、大海原へと力強く漕ぎだした。
【KEY PLAYER】MF 18 橋本拳人

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「周りを動かしながら、試合の状況を的確に理解して、常に何をするべきかを考えないといけない。自分の特長でもある運動力はより求められると思っている」
中盤3枚の1アンカーは長いサッカー人生でも初めての経験。それでも「プレーの幅を広げるチャンス」とポジティブに捉えている。リヴァプールの試合の映像を確認し、イングランド代表MFジョーダン・ヘンダーソンの動きを参考にしているという。以前はスペイン代表MFセルヒオ・ブスケツのプレーをよく見ていたが、ボール奪取能力やハードワークを前面に押し出す必要があり、キャプテンシーも備える29歳に注目し始めた。
また、オンとオフの切り替え、ピッチ外でのリラックスは長丁場を戦う上で重要になる。「リーグもACLも優勝したい。総力戦になるし、タフさが問われると思う」。キャンプにはアロマオイルを持ち込み、香りでリラックス。チームとしても個人としても重圧がかかるが、心身の両面でコンディショニングに気を遣う26歳が、チームを頂点に引っ張り上げる。
文=古田土恵介
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