2019.08.27

浦和撃破の立役者・町田也真人に課せられた“J1残留請負人”という責務

[写真]=Jリーグ
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

「前半ベンチにいてすごい感じていたのは、浦和の柏木(陽介)選手がずっと動いていたこと。それを見て『これだ』と。実は高校の時、広島のユニフォームを買うくらい柏木選手が大好きだったんですけど、久しぶりに近くでプレーを見て、本当によく走っていると感じた。それが自分の中でいいイメージにつながったのはあります」

 J2降格の危機に瀕している松本山雅は23日、アウェイで浦和レッズと対戦。前半のうちに失点を喫すると、“得点力不足”という課題を解消できずに後半へ突入した。迎えた65分、反町康治監督に満を持して送り出されたのが、背番号25をつける町田也真人だった。このタイミングで松本山雅は3-4-2-1から3-5-2へシステムを変更。右インサイドハーフに入った町田は、スペースを見逃さず勢いよくボールを運んで攻撃にリズムを生み、前線を活性化した。

 すると75分、町田から高橋諒を経由し、ゴール前に上がったクロスに阪野豊史がヘディングで反応。これが決まって試合は振り出しに戻った。さらに8分後には、再び町田がスローインから右サイドのスペースを攻め、タテに切れ込んできた永井龍にパスを供給。中央に折り返されたボールをファーサイドから飛び込んだ高橋が右足ダイレクトで決勝弾を叩き込んだ。松本山雅は5月26日の名古屋グランパス戦以来、約3カ月ぶりの白星をつかみ、J1残留にかすかな希望をつないだ。

「也真人はフィジカル的にハードにやられると厳しいが、スペースを見る力と運ぶ力がある。ここは也真人で行くしかないなと思った」と反町康治監督に言わしめた小柄なMFは、地元・埼玉で存在感を示すことに成功した。

「実は2週間前(清水エスパルス戦)、スタメンっぽいような雰囲気があったのに、前日で落とされた。しかも、前節の名古屋戦は出番なしに終わった。すごい反骨心を持ってこの試合に臨んでいたので、アウェイでビッグクラブに勝てたのは本当によかった。僕は松本に移籍してきた今季がプロ初のJ1。フィジカル面も含めて厳しい環境の中でやりたくてここに来たので、J1でやれることに幸せを感じる分、絶対に落ちたくない。どうしてもJ2には落ちたくないんです」と本人は石にかじりついてでも残留を果たす覚悟だ。

 そこまで強い思いを口にするのも、7年間過ごしたジェフユナイテッド千葉での悔しさが脳裏に焼き付いて離れないから。専修大学卒業後、2012年に千葉入りした町田はJ2でもがき苦しんた。ご存知の通り、千葉は93年のJ発足時に名を連ねた“オリジナル10”。名門は2009年にJ2へ降格したが、町田はJ1復帰を信じてプレーし続け、10番を背負うまでに成長を遂げた。松本山雅からはその間、何度か熱視線を送られたが、千葉の昇格に強くこだわり続けた。けれども、願いが叶わぬまま長い月日が流れ、松本山雅が2度目のJ1昇格を果たした今季、ついに移籍を決断。いわゆる「個人昇格」を果たす形になった。

今シーズンから松本山雅でプレー [写真]=Jリーグ

 勝負を賭けて挑んだ今季。シーズン序盤は出場機会に恵まれず、調子を上げてきた5月には右足中足骨を骨折し、全治8週間と診断されてしまった。予期せぬリハビリとの戦いを強いられ、今月からやっと戦列に復帰したものの、石橋を叩いて渡る反町監督はよほどの信頼を寄せない限り、新戦力を試合には出さないタイプだ。前述の通り、清水戦ではスタメン落ちの屈辱を味わったが、今回はやっと仕事らしい仕事を遂行できた。この調子で「J1残留請負人」として活躍することが、ラスト10試合で町田に課せられる大きな責務なのだ。

「(前田)大然がいなくなって、裏への動きが少なくなったことはソリさんも気にしているところ。自分ももっと運動量を増やして、タフになれれば、そういう動きを出せると思うんです。松本に来てフィジカル的な要素が強く求められることはよく分かっていたけど、走力や運動量を増やせれば今後のサッカー人生に生きると信じています。今年、僕は30歳になりますけど、中村憲剛選手とかが32、33、34くらいでグッと伸びているのを見ると、大台を迎えてもまだまだ全然成長できる。そう確信しています。見た目は一生、中高生なんですけど(苦笑)、まだまだイケますよ」と浦和撃破のきっかけを作った男は目を輝かせた。

 今回の勝ち点3を活かすためにも、8月31日の大分トリニータ戦で連勝することが重要だ。松本山雅は勝ち点23の17位だが、16位のサガン鳥栖とはわずか1差。16位浮上の可能性は十分あると見ていい。勝ち点28の14位・ガンバ大阪と15位のベガルタ仙台との直接対決も残されているだけに、ここでできる限りのポイントを稼いでおくことが、生き残るための絶対条件となる。

「大分はうまいですけど、去年J2で前からプレスをかけて自分が点を決めている。そういういい印象もあります。前でうまくボールを取れればチャンスが広がってくるんで、そこは意識したいです」

 爽やかな笑顔でゴールへの意欲をのぞかせた。彼が願い続けたJ1初ゴールを次戦で記録し、松本山雅を救うきっかけを作ってくれることを強く祈りたい。

文=元川悦子

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