2018.07.20

【ライターコラムfrom甲府】過密日程、やってくる酷暑…“実りある秋”への試練

サッカーはもちろん、バスケや野球、ラグビーにも精通する“球技ライター”。

 ヴァンフォーレ甲府は再び試練を迎えている。チームは5月6日のロアッソ熊本戦からリーグ戦4連勝を飾り、浮上に成功した。6月上旬には浦和レッズを下してルヴァンカップのベスト8に勝ち残り、一気にJ2の上位へ迫れそうな“空気”を感じていた。

 しかし4月に7試合、5月に7試合、6月に7試合という強行スケジュールもあり、明らかに消耗している。甲府という“暑さの名所”をホームにする中で、7月には30度を超える気温下で開催される試合もあった。甲府の「らしさ」を完全に消される展開が見て取れるようになってきた。

 7月15日のFC岐阜戦が、まさにそういう試合だった。甲府は前半11分にショートカウンターから堀米勇輝が先制ゴールを決め、前半を1-0とリードして折り返す。しかし後半は岐阜のカウンター、サイドからの鋭い攻めに苦しんで3失点。1-3でホーム戦を落としている。

 後半の甲府に起こった現象はシンプルだった。まずDFラインと中盤、前線の幅が広がる間延びを起こしていた。ボールを奪われた後の切り替えも遅く、ロングボールを自由に蹴らせてしまった。サイドからの突破に対する位置取りも悪く、決定的な仕事をさせる隙を何度も作っていた。

 52分に1-1と追いつかれた後の時間帯についていえば、「得点しようと前がかりになってスペースが空いた」側面も大きい。

甲府を率いる上野監督 ©J.LEAGUE

 試合後に上野展裕監督はこう述べていた。

「自分たちは攻守にわたってコンパクトにやりたいと思っています。それが間延びをしてしまって中盤で彼らのクオリティを上げたり、セカンドボールを取られたり、セカンドボールからシュートを打たれた場面があった。それが体力面なのか切り替えの遅さなのか、選手たちとディスカッションをして、課題を克服していきたい」

 シャドーの位置でプレーしていた佐藤和弘はこう悔いる。

「もうちょっと(相手や味方と)近い距離でやれたらよかった。一発を狙われていたのは分かっていたから、本当に勿体なかった。一発で古橋(亨梧)とか(田中)パウロを狙ってやってくる相手に対して、もう少し前の3人が寄せられたら良かったというのもある。引いて[5-4-1]で迎え入れて、前でやらせる感じで守ることもできたかもしれない。そこの使い分けがしっかりできればよかった」

岐阜戦でフル出場した小椋 ©J.LEAGUE

 ボランチの小椋祥平は別の見方をする。

「ブロックを作る方がどんどん動かされてキツくなって、奪っても前に出ていけない感じになると思った。前から奪いに行くにしては、後ろが余り過ぎているというのもあった。カウンターで出ていくのがちょっとずつキツくなっていたから、先制点を取ったような高い位置で奪ってそのままフィニッシュにつなげる方が良いのかなとは思ってやっていた」

 これはまだ試合直後の生の意見で、どちらかが正解という意味ではない。時間帯によって前後のオーガナイズを使い分ける方法もある。ただ岐阜戦についていえば前寄りにせよ後ろ寄りにせよ、「コンパクトな組織作り」が必要なのに、それができていなかった。

 サッカーはリスクや不確定要素のあるスポーツだし、欠点の無いチームもあり得ない。そんな中で大切なのは選手が自分たちの課題を自覚し、それを解消できそうな方法を共有すること。そしてチーム一丸でそれを実行することだ。

 3バックを任されている大卒2年目の小出悠太、大卒新人の今津佑太にとって、岐阜戦は試練の一戦となった。試合後の小出は悔しそうな表情を隠さずこう述べていた。

「チームを変えられることは言えなかった。自分の責任だと思うし、反省しなければいけない」

岐阜FW古橋(左)のシュートシーン。対応する窪田(背)と今津(右) ©J.LEAGUE

 足をつった状態でプレーして失点に絡み、80分に交代した今津も、悔しそうな顔でコメントしていた。彼が言及していたのは72分の失点。対応した古橋にシュートを打たれ、そのこぼれ球を小野悠斗に押し込まれた場面だ。

「背後に蹴らせてヨーイドンという勝負にさせてしまったところは分が悪かった。自分が元気な状態なら、あのシュートブロックは身体に当てられると思う。でも自分が足をつり気味で、そこで背後に蹴らせてそこで勝負して分があったか…。自分のコンディションと相手のストロングポイントを考えて判断できたし、今振り返ってみるとそういうところが浅はかだった」

 甲府はまずチームとしてコンディションを上げ、90分を通してコンパクトに、組織的に戦わなければならない。ただしサッカーの現実の中では、しばしば個が帳尻を合わせなければいけない状況も起こる。プロならばピッチに立っている以上、チームが機能していなくても、自分の状態が悪くても、その中で結果を出さなければいけない。

 小出と今津は揃って「次もし出番があれば」という言い方をしていたが、プロならば一つの失敗で見切られることもある。

 しかし試練は上手く消化すれば、成長するための栄養になる。試合中にしっかり「答え」を出せるだけの経験値を得るためには失敗も必要だ。

 甲府の若い選手たちが過密スケジュール、暑さと言った負荷と、戦術的な課題をどう克服するのか…。実りの秋を迎えるためには、苦しい夏と向き合い、それぞれが悩み、チーム内でしっかり話し合うしかない。

文=大島和人

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