2017.09.15

【ライターコラムfrom名古屋】“後遺症”から逆転の一手を…韋駄天FW永井龍が持つ、ゴールへの慕情

永井
負傷から復帰した永井 [写真]=N.G.E
雑誌社「ぴあ」勤務を経て2015年にフリーランスライターとなり、WEBメディア「赤鯱新報」を中心に名古屋グランパスを追いかける毎日。

 上位混戦の明治安田生命J2リーグ戦も残り10試合となり、各チーム、選手がそれぞれのラストスパートに入る中、名古屋グランパスの背番号38もまたその態勢を整えつつある。名刺代わりの開幕戦2ゴールから始まった序盤戦での活躍はいまだ記憶に新しいところだが、10節での負傷退場以来はそれを超えるパフォーマンスが見せられていない。「ボキって音がして、今季はダメかなと思った」と振り返る右足首のケガの“後遺症”は想像以上に長引き、復帰しても「正直歯がゆい。以前のプレーができない」と苦悩を漏らしたこともあった。しかし今、FW永井龍は本来のプレーを取り戻しつつあるのである。

“その時”は唐突に訪れた。31節水戸戦を前にした1週間のトレーニングの中で、明らかに彼の動きが変わったのである。「あれ、ちょっと良くなってる?」。元来が縦へのスピードを生かしたゴリゴリのフィジカル系FWだったが、名古屋で風間八宏監督の薫陶を受けたことで技術的にも急速に進歩を遂げ、意外な器用さでもチームにアクセントをつけてきたのが“名古屋の永井龍”の特徴だ。右足首の負傷はその彼からクイックネスとボールタッチの感覚を奪い、結果としてパフォーマンス全体にも悪影響を及ぼしていた。先の「歯がゆい」という言葉はアウェイアビスパ福岡戦の試合後のもの。最速ペースで復帰したはよいものの、肝心のプレーに質が伴わないことに彼は明らかに焦りを感じていた。

永井

風間監督の指導を受ける永井 [写真]=Getty Images


 そこで永井は「まずはフィジカル」と動ける体に戻すことを念頭に置いてトレーニングを一から見直し、戦列を離れて再起を図る。そのアプローチは功を奏し、思い通りの動きができるようになるとともにパフォーマンスも目に見えて向上。チームが怒涛の5連勝をマークした8月の中旬にはようやく試合メンバーへと復帰し、途中出場などで実戦勘を養い今に至る。「まだメンタル的に100パーセントの自信を持っているかと言われると…」と本人的には万全とも言い難いようだが、ツエーゲン金沢戦を控えた今週のトレーニングではつねに主力組でプレーし、久々のスタメン起用も見えてきた。攻守の切り替えを重視する昨今のチーム状況では彼のアグレッシブさは有用であり、スウェーデン人FWシモビッチの状態が不透明な今となってはその得点力にも期待がかかるところ。負傷した10節以来、リーグ戦では得点を挙げていない現状を打破するためにも、ゴールへの意識は高まるばかりだ。

「やっぱりゴールなのかもしれませんね。FWってそういうものですし、ゴールを取れればもっと良くなると思います。何でもいいから欲しいです。やっぱり飢えていますし、そこがなくなっては自分は何もないなとも思います。逆に何を言われても、ゴールを取れていれば自分の中でスッキリするし、整理できる。ゴールは取れているから、この部分は修正していこうとなるけど、今はまず“ゴールが取れてない”ということが引っかかっているので」

 開幕から10試合の大活躍を残り10試合でも、というのはいささかこじつけが過ぎるかもしれないが、彼の能力を思えば期待もしたくなる。何より自動昇格圏入りには残り試合のほぼ全てに勝利する必要がある今、ストライカーの躍動は必要不可欠の要素だ。求め、求められるのは自分とチームが勢いに乗るためのゴールと、それが導く勝点3。「まずは勝つことです。その次の試合のことは気にしません(笑)」。連敗脱出がかかる金沢戦、そしてそこから中2日で迎える古巣・セレッソ大阪との天皇杯4回戦へ向け、復活の点取り屋の心は熱く燃え滾っている。

文=今井雄一朗

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