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【インタビュー】鈴木優磨 誰にも負けたくない男~反骨精神の源流~

2019.06.13

 2019年の新年度、プーマが新たに展開をスタートさせたキャンペーン『オレヲミロ』。高校生世代を中心としたプレーヤーに向け、トップレベルで活躍するプレーヤーとの差を表現し、『新たな高みへ』たどり着くためには何が足りないのかを考えるためのインスピレーションを与え、マインドを変えていくことをプーマがサポートしていく。

 いつもの日常。繰り返す毎日。自分の日々にはフットボールしかないのに、輝かない。突き抜けない。上手くなっているのか下手になっているのかすら、わからない。焦る。もがく。海の向こうでは、トッププロたちが躍動している。あいつらとオレ、なにが違うんだろう。そんなに違うんだろうか。

 様々な選手の経験から、次の一歩を踏み出すためのヒントを探るインタビュー連載企画。第4回は鈴木優磨を迎える。

 協調性や献身性、器用さを特長とする日本人プレーヤーにおいてはいわゆる“生粋のストライカー”を育てることが難しいと言われるが、鈴木はまさに、ゴールをエネルギー源とする典型的な9番だ。

 プレースタイルや表情から醸し出す“ギラギラ感”は「何かやってくれる」という期待感を生み、鈴木はその期待に応えるゴールを決めることで自分のポジションを確立してきた。

 昨シーズン終盤のケガなどによってピッチを離れていた時間が続いたが、いよいよ復帰の時は近い。プーマを履いてピッチに戻ろうとする彼に、“ギラギラ感”の源流について話を聞いた。

インタビュー・文=細江克弥

■第1回 長谷部誠 ボールを追い続けられる理由

■第2回 久保裕也 確実に、着実に前へ

■第3回 伊東純也 成長曲線を支える不動心

■第5回 遠藤航 信念と深念で貫く我が道

■天狗の鼻をへし折られた初キャンプ

鈴木優磨

―――中高生の頃にどんなことを考えながらサッカーをしていたか、覚えていますか?

鈴木 「プロになれる」と思ったことは、一度もなかったと思います。ただ、小学生からずっとアントラーズでプレーしてきて、小さい世界の中で「自分が一番」という感覚だけは持っていました。ポジションはその頃からずっとFW。まあ、言ってしまえば天狗だったんです。

―――今だから「当時は天狗だった」とわかるかもしれないけれど、子供の頃にそれに気づくのはなかなか難しいですよね。

鈴木 そうですよね。自分の場合も、全く気づかないままユースまで上がってしまった感じでした。で、高校3年になる直前にトップチームのキャンプに参加して、生まれて初めて“鼻をへし折られる”という経験をしました。あの瞬間のことは今でも鮮明に覚えているんですけど、初日のファーストプレーで植田直通(現サークル・ブルージュ/ベルギー)にふっ飛ばされたんですよ。球際のプレーで横から身体をぶつけられて、俺、めちゃくちゃ飛ばされたんです。

―――メンタル的にもヘコむふっ飛ばされ方だった。

鈴木 ホントにそんな感じ。だって、初日から帰りたくなりましたもん。完全に心が折れました。絶対にやれるだろうと思いながらトップチームのキャンプに参加して、初日の、最初のプレー、たった1つのプレーでどれだけ差があるかに気づかされたので。帰りたくなったというのもウソじゃなくて、「帰らせてくれないかな」とマジで思っていましたから。

―――もちろん、そういうわけにもいかないですよね。

鈴木 とにかく全力で続けるしかなかったですよね。でも、このままじゃまずいなと思いました。プロってすごい世界なんだなと。ゼロからやり直さなきゃいけないなと。

―――とはいえ、通用すると感じた部分もあったのではないかと思うのですが。

鈴木 それが、本当に1つもなかったんですよ。だから案の定、日に日に、どんどんダメになっていきました。ユースから一緒に参加していた1学年下のヤツのほうが評価は高くて、ちょっとホントに、マジでまずいなと感じましたね。でも、俺にとってはすごくいい経験だったんです。鼻をへし折られることが。まあ、ユースの監督はまさにそうなることを狙っていたんだと思うんですけど。

鈴木優磨

―――熊谷浩二さん。

鈴木 はい。チームに戻ったら、俺が落ち込んでいる姿を見て喜んでいました(笑)。完全に計算どおりだったんだと思います。

―――トップ昇格までを計算していたなら、それは本当にすごい。

鈴木 正直に言うと、そのタイミングで一度トップ昇格の可能性がなくなっているんですよ。ただ、そこからは本気で努力しました。周りを見る余裕もなかった。僕らの代はそこそこの結果を残していたんですけど、例えば全国大会に出場して同年代のトップレベルを体感しても、それと比べて自分のレベルを客観的に考えるみたいなことはできなかった。とりあえずプロにならなきゃいけない。その思いが強くて、本当に死にもの狂いでした。ただ、トップ昇格の話がちゃんと出たのは10月で、その頃はもう、大学進学を考えて練習に参加していたんです。本当にギリギリでした。

―――悪夢のキャンプからの約半年間で、評価を覆した。

鈴木 技術的にはそんなに変わっていなかったと思います。変わったのは気持ちの部分で、常に危機感を持っていたし、何をやっても満足できなかった。監督の熊さんにはいろいろなことがわかっていたんだと思います。キャンプから帰ってきてからは、一度も俺をトップチームの練習に参加させてくれませんでしたから。でも、逆によかった。ハングリーになれましたから。

―――もし大学に進学していたら。

鈴木 俺の場合は潰れていたと思います。たぶん誘惑に勝てなかった。ただ、10月にトップ昇格の話をもらった時も、最初は「断ったほうがいいかもしれない」と思っていました。

―――どうして?

鈴木 あのキャンプの衝撃が大きすぎて、それが全然消えなくて。もしこのままプロになったとしても、3年でクビになる自分が想像できたんですよ。親にも言いました。「プロになることを目指してきたけど、今のままじゃ絶対に通用しない。だから考えたい」と。でも、結局、自分はそのために頑張ってきたんだから、チャレンジしないと何も始まらないと思って。それで、プロになることを決めました。

■結局、最後の最後はサッカーが好きなことに気づく

鈴木優磨

―――プロ1年目は2015年。この年の鹿島はトニーニョ・セレーゾ体制の3年目でした。FW陣はジネイ、ダヴィ、高崎寛之、赤崎秀平、豊川雄太、金崎夢生、それから鈴木選手という顔ぶれでした。

鈴木 相変わらず、練習ではものすごい力の差を感じていました。最初の半年間はヤバかった。でも、なぜか「試合に出ればやれる」という自信だけはありました。だから「早く使ってくれないかな」と思っていて。

―――高校3年の1年間で周囲からの評価を覆す成長を遂げたけれど、キャンプの時に感じた実力差は埋まっていなかった。

鈴木 全く。ACL(AFCチャンピオンズリーグ)と合わせてたくさん試合があったのに、半年間は俺だけずっとベンチ外でしたから。正直な話、「終わったな」と思っていました。「移籍したほうがいいのかな」とも思っていました。公式戦に出られるのがJ3のU-22選抜だけだったので、それだけが楽しみだった。

―――でも、シーズン途中で流れが変わるんですよね。

鈴木 夏に監督が石井(正忠)さんに替わって、最初の試合で初めてベンチに入りました。そこから一気にやる気が増しましたよね。めちゃくちゃ気持ちが入っていたと思います。

鈴木優磨

―――リーグ戦は7試合で2得点。2年目となる翌2016シーズンは7年ぶりのリーグ制覇に31試合8得点という成績で貢献しました。あの頃に印象づけたギラギラ感というか、本番に強いキャラクターとしての存在感はすごかった。

鈴木 自分でも「本番に強い」と思えるところがあるんです。日本人は「練習で良くても試合ではダメ」という選手が少なくないと思うんですけど、どちらかと言えば、俺は逆のタイプだと思っていて。

―――わかる気がします。

鈴木 よく言う「練習でできないことは試合でもできない」というのも、ちょっと違うと思うんです。だって、外国人選手は練習では絶対にやらないようなとんでもないミドルシュートを試合で決めたりするでしょ? だから、練習でできるか、試合でできるかが問題ではなく、必要な瞬間にできるかどうかだと思う。(アントワーヌ)グリーズマンや(セルヒオ)アグエロ、それから(ルイス)スアレスも、たぶんそういう力がすごいんですよね。

―――そういう考え方を持っているとしたら、練習をサボりたくなる瞬間もあるのでは?

鈴木 いや、だからこそ、ユースの監督だった熊さんに本当に感謝していて……。めちゃくちゃ厳しい監督だったから、練習をサボろうと思う余裕すらなかったんです。あの人と出会わなかったら、俺なんて絶対にプロになれなかったと思います。つらいこともたくさんあったし、やめたいと思ったことも何度もありました。でも、熊さんと本気でぶつかって、結局、最後の最後はサッカーが好きなことに気づくんです。

■1点を争う試合で、その1点を奪うエースになりたい

―――サッカーが好きなことはよくわかっているのに、それでも続けられない人もいますよね。だから、続けることって実は簡単じゃない。

鈴木 そう思います。俺の場合は、「自分からサッカーを取ったら何も残らない」という気持ちも強かったんです。自分自身のことを、サッカーでしか表現できない。ゴールでしか表現できない。

―――なるほど。

鈴木 ゴールの快感って、あるじゃないですか。あれはホントにヤバいし、あれがないとストレスが溜まる。初めてトップチームのキャンプに参加した時の悔しさは、いまだに心に残っているんですよ。「いつか見返してやる」とずっと思っている。それを示せるのはゴールしかない。

―――それが、鈴木選手が醸し出す“ギラギラ感”の源流にある。

鈴木 そうだと思います。ずっとそういう感じでやってきたので、ちゃんと落ち着いてプレーできるようになったのは本当に最近のことなんです。1年前くらいかな。それまではピッチに立つといつもアタフタしていたけど、昨シーズンあたりからようやく、経験を積んで、ある程度の自信を持ってピッチに立てるようになってきたというか。

―――周りからの見られ方や評価も変わってきましたよね。

鈴木 少しずつ結果を出せるようになってきて、期待してもらえるようになってきたことは感じています。ただ、どんな状況であっても、FWの仕事はゴールを決めるしかない。決めればヒーローになれるし、それができなければ悪者扱いされる。それが見られ方や評価に直結する世界だから、俺はわかりやすくていいなと思っています。

―――そういう意味でも、「アイツなら何かやってくれるかも」と思わせる鈴木選手の存在感は貴重だなと思います。

鈴木 そういう選手になりたいですよね。大事な試合で1発決める選手になりたい。大量得点で勝つ試合じゃなく、1点を争う試合で、その1点を奪うエースになりたい。そういう意味では、鹿島アントラーズでプレーできていることがめちゃくちゃプラスだと思います。結果がすべての世界で勝負させてもらっていることで、そういう感覚が研ぎ澄まされていく気がするので。

■自分が好きなように、思いきりやってほしい

鈴木優磨

―――高校2年までの天狗だった自分について、今の鈴木選手はどう思いますか?

鈴木 それはそれで、アリだったと思います。過信していたからこそ「絶対に誰にも負けない」と思えたし、過信していたからこそ、鼻をへし折られる経験を生かすことができたと思うので。ギラギラ感というか、ハングリー精神をそういう流れで作っていって、それが今でも自分の武器になっている。ただ……ちょっと反抗的だったところもあるので、反省しなきゃいけないこともあるんですけど(笑)。

―――でも、たとえ紆余曲折があったとしても、「サッカーが好きなヤツが最後に勝つ」みたいなところが、サッカーにはある。

鈴木 ホントにそう思うし、その気持ちだけは誰にも負けないと思います。俺なんて全然うまくないけど、その気持ちだけでここまで来ることができたので。

―――中学生や高校生に声を掛けるとしたら。

鈴木 自分が好きなように、思いきりやってほしいと思います。壁にぶつかっても、自分の力で乗り越えるしかないし、そういう状況のほうが乗り越えた時に成長できる気がするから。自分を信じる。言い方はアレかもしれないけれど、自分の本当の味方は自分しかいないんで。自分ひとりで戦って、壁にチャレンジして、勝てるメンタルがあるかどうか。そこが大事だと思います。

鈴木優磨にとってプーマは、憧れであり目標

鈴木優磨

―――シューズに求めているこだわりはありますか?

鈴木 感覚的なところですけど、側面の革が使っているうちに伸びてしまうのがイヤなんですよ。だから、その部分にどういう革が使われているかということは、スパイク選びのポイントの1つです。

―――プーマに対するイメージは?

鈴木 子供の頃から好きでしたし、履いていました。めっちゃ好きだったので、このタイミングで契約することができて本当に嬉しいです。スパイクもウェアも単純にカッコいいと思うし、さっき名前を出したグリーズマンやアグエロ、スアレスみたいな世界的なストライカーがみんなプーマを履いているところもいいですよね。FWの選手として「俺も」という気持ちになるし、キャラクターとしては、(マリオ)バロテッリが履いているというもプーマを好きな理由です。憧れちゃいます。

―――アスリートとして憧れる?

鈴木 それぞれに“好み”があると思うんですけど、俺はバロテッリみたいな選手も大好きです。個性がある感じ。自分が好きなものを、好きなように選ぶ。周りにどう見られても関係ない。そういう感じがいいですよね。

―――そういった選手たちに肩を並べることは憧れであり、目標でもあると思います。

鈴木 もちろん、彼らに近づけるような選手にならなきゃいけないですよね。そうなりたいと思ってプーマを選んだし、実際、同じ戦場に立てば十分に勝負できると思っています。もがくかもしれないけど、もがきたい。苦しんだ分だけ、また成長できると思っていますから。でもまあ……(ロメル)ルカクはちょっと無理かもしれないっすね(笑)。

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#鈴木優磨 #PUMAFootball #プーマ

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By 細江克弥

1979年生まれ。神奈川県出身。サッカー専門誌編集部を経てフリーランスに。サッカーを軸とするスポーツライター・編集者として活動する。近年はセリエAの試合解説などでもおなじみ。

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