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神戸弘陵|遠征で磨いた積極守備で前回大会の雪辱を期す【選手権出場校紹介】

2020.12.24

[写真]=森田将義

 昨年度の選手権で4年ぶりの出場を果たしたが、3回戦で帝京長岡を相手に0−5の敗戦。DF小倉慶士(3年)は「一人ひとりがとてもうまくて、一人ではボールを奪えなかった。自分自身も一対一で負けて、失点した。全国の壁を感じた」と振り返る。

 今年は、この屈辱的な敗戦がチームとしての原点となった。「全国で負けた悔しさを知る選手が多いから、県内のどのチームよりも、全国大会に懸ける思いは強いと思う。自分たちの代で全国のピッチに立った時に、あの悔しさと経験を還元していこうと思っていた」。そう話すMF田中魁人(3年)を中心に、リベンジを狙った選手たちは5試合で32得点1失点という成績で予選を勝ち上がり、2年連続での出場を手にした。

 止める、蹴るといった基礎技術とプレー判断の向上を目指す育成方針は変わらない。今年はJ3のFC今治へと進むMF松井治輝(3年)を筆頭に、特徴を持った選手も多い。コロナ禍で思うように活動ができないなかでも、「県で一番の紅白戦ができれば、チームは強くなる」(谷純一監督)との考えのもと、選手同士が切磋琢磨しながら着実にチーム力を積み上げてきた。

 中でも成長の跡がうかがえるのが、守備面だ。帝京長岡に負けた後も球際の強さや攻守の切り替えの速さを意識していたが、県内勢との試合ではボールを保持する時間が長く、いくら意識してきても守備の重要性を忘れがちになっていた。だが、全国上位の強豪と対戦すると否が応でも再認識させられる。チームにとって大きかったのは、夏休みに行った茨城遠征だ。流経大柏と2度対戦し、「守備強度の違いを感じた。次の日の試合から強度を意識したし、帰ってきてからもプレスの速さを徹底した」(田中魁人)。

 9月以降は、日帰りで県外へと出掛けた。慣れない3バックのチームやドリブル主体のチームなど、多種多様なチームと対戦し、守備のバリエーションが増加。田中魁人は「練習試合で負けても収穫はあって、次の週には修正できていた。いい調子で成長できたと思う」と口にする。ボールを失うと素早く一人目が体を寄せ、パスで逃げられても二人目がすぐにアタックする。狙いどおりに三人目まででボールを奪えれば、ショートカウンターからチャンスが作れる。積極的に高い位置で守備を仕掛ける姿勢は、ボールを保持しながら積極的にゴールを目指すスタイルとともに、神戸弘陵の新たな代名詞になりつつある。

 3回戦まで勝ち上がれは、昨年敗れた帝京長岡か、同じ関西勢の履正社と対戦できる。上位進出候補として挙げられる2校は、昨年から積み上げてきた力を試すには格好の相手だ。昨年の悔しさを晴らして頂点にたどり着くためにも、まずは初戦で勝って勢いに乗りたい。

【KEY PLAYER】MF田中祉同

 昨年のリベンジを誓うのは、3年生だけではない。「帝京長岡に0−5で敗れた悔しさは絶対に忘れられない。そこで感じた強度や質を伸ばそうと1年間やってきた」と話すのは、唯一の1年生としてピッチに立っていたMF田中祉同(2年)だ。

 持ち味はサイドからの仕掛け。相手とうまく駆け引きしながら、縦の突破からのクロスとカットインからのシュートで見せ場をつくる。大舞台でも物怖じしない強心臓を持つ点も素晴らしく、秋田商業と戦った昨年の1回戦では、1ゴール1アシストを記録した。

 今年は全国で味わったプレーの質とスピードにこだわり、レベルアップを図ってきた。練習では確かな成長の跡を感じる一方で、今年の予選は高ぶる気持ちが空回りして0得点。2年生になってから髪を伸ばし始めたせいで点が入らないと考えた田中祉同は、予選後に昨年と同じ坊主頭に戻したという。体が軽くなったおかげか再びゴールネットを揺らす回数が増えるなど、リベンジに向けて調子は上がっている。

「チームとしては、昨年の成績を超えて日本一になるのが目標。個人としても昨年以上の活躍がしたい。そうすれば、プロのスカウトなど多くの人に注目してもらえると思う」。そう語る彼のプレーが、チームの出来を大きく左右しそうだ。

取材・文=森田将義

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