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[高川学園]ライバルを下し25回目の選手権切符…強さの理由は『部署制度』【高校サッカー選手権】

2019.12.27

山口県代表として2年ぶり25回目の選手権出場を決めた高川学園 [写真]=石倉利英

「お飲み物は何にされますか? コーヒー、ココア、レモンティー、ミルクティーは、それぞれホットとアイスを用意しています。スポーツドリンクもあります」

「じゃあ、アイスコーヒーを」

「アイスコーヒーですね。少々お待ちください」

 どこかのカフェや、企業での会話ではない。訪れたのは高校のサッカー部。山口県代表として2年ぶり25回目の選手権出場を決めている高川学園を訪れると、こんな『おもてなし』がある。

[写真]=石倉利英


 2005年度と07年度の選手権で3位、1999年と02年にはインターハイでも3位に輝くなど、旧校名の多々良学園時代から山口県を代表する強豪校として知られる高川学園。サッカー以外の経験も積ませるため、海での宿泊体験などの取り組みを行なっているが、その一環で17年度から実施しているのが『部署制度』だ。

 これは、サッカー部内に様々な『部署』を作り、選手がそれぞれの役割に沿って活動するというもの。冒頭のような来客対応や、遠征などで訪れた他校の案内を担当する『おもてなし部』などのピッチ外だけでなく、対戦相手の分析を担当する『分析部』、そのための映像を撮影する『映像部』、朝練習のメニューを考える『強化部』といったピッチ内を担当する部署もあり、計10部署で活動している。

 導入にあたって江本孝監督が参考にしたのが、筑波大サッカー部が開設している『パフォーマンス局』だ。対戦相手のスカウティングを担当する『アナライズ班』や、効果的な練習メニューを考案する『トレーニング班』など、各班に分かれて学生が活動していることを知った同監督が発案し、当時の主将と話し合って10の部署を決めた。

 各部署の活動は本格的で、リンクしているものも多い。『分析部』のパソコンや、『映像部』のビデオカメラは、校内の農地で野菜を栽培したり、学校近くの農園や果樹園で農作業を手伝う『農業部』の活動で得た資金を基に購入したもの。2年ぶりの出場を目指した今回の選手権予選では『映像部』と『分析部』が、『農業部』の活動で得た資金を移動費に使い、次の対戦相手が決まる試合と、出場権を争うライバルと目された西京と聖光の全試合を撮影して分析。準決勝で聖光、決勝で西京を下しての出場に大きく貢献した。

[写真]=石倉利英


 江本監督は部署制の導入によって、「1人ひとりの所属意識が高まり、責任感が増してきたと感じています」と語る。各部署の活動には深く立ち入らず、部長会の報告を受ける形で把握しているが、それぞれの活動や連係が「少しずつ組織的になってきている」と実感している。部署は固定ではなく、活動実績などに応じて改編も 行なっており、「教育において求められる『人づくり』に向けて、大人が試行錯誤しながら良いものを作っていきたい」と今後を見据える。

 現在は北海(北海道)との1回戦に向けて、『分析部』が分析を進めている。大会が近づけば『映像部』と『分析部』が共同で、モチベーションビデオを制作する。部署制度で培った「責任感」と、チームのスローガンの一つである「目配り・気配り・心配り・言葉配り」を生かし、チーム一丸で挑む戦いが始まろうとしている。

取材・文=石倉利英

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