新たな強化を始めて3年目で、全国への切符を勝ち取った。秋田県代表の明桜は秋田経法大付時代の1993年度以来、27年ぶりの選手権出場。2007年に明桜と名を変えてからは、夏冬通じて初となる全国大会出場だ。
県予選の準決勝では、新屋の我慢強い守りに苦戦して延長戦へ持ち込まれたが、シュート数20―0と圧倒し、決勝は秋田工に4―0で快勝。就任3年目の原美彦監督の指導のもと、「秋田を圧倒して勝つチーム」、「全国で勝つチーム」を目指した取り組みの成果を発揮した。原監督は長崎の名門・国見のコーチとして大久保嘉人(現東京ヴェルディ)や平山相太(元FC東京など)らを指導し、3度の選手権優勝やインターハイ優勝を経験している。ヴィッセル神戸や名古屋グランパスの育成組織の指導歴も持つ経験豊富な指揮官だ。
原監督は「攻守でボールを握っていく。その中で個を生かせていけたらと思っている」と語る。就任1年目の2018年度にいきなり県予選の決勝進出。2年目も名門・秋田商と激闘を演じると、今年、原監督の指導を3年間受けてきた現3年生たちが歴史を変えた。
最終ラインから司令塔のMF田村仁志や推進力のあるMF内藤蒼空を経由して大事にボールをつなぎ、本格派のFW齋藤光優や県予選で左サイドを攻略し続けたFW佐藤嵐、ダイアゴナルランからゴールを陥れるFW田中将太といった個性あるアタッカーたちが決定機を作り出す。また、県予選は全4試合無失点。ライバルたちとの力の差を示してきた。
一から強豪校を作り上げることに魅力を感じた選手たちが、各地から明桜へ集っている。主将の左サイドバック鎌田太耀は、「僕が受験する時は、秋田と言えば秋商(秋田商)や新屋だった。でも、ここは1年から試合に出られる。1年から試合に出て勝とうと思って来ました」と話す。また、内藤は神戸U―15時代、U―14 Jリーグ選抜でキャプテンマークを巻いたタレントで、守備の柱であるセンターバック長江慶次郎は、名古屋U―15時代に原監督の指導を受けていた選手だ。さらに、青森山田中出身の田村や仙台ジュニアユース出身のFW佐藤拓海ら、Jアカデミーや強豪チームから野心を持った選手たちが加わり、チームの質、力を高めている。
まだまだ全国で名は広まっていないが、チームの中で個々の良さが発揮されている明桜が今冬に知名度を上げる可能性はある。鎌田は「(各選手)それぞれに武器があるので、後ろでつないでから点を取ってもらいたい。秋田県の代表として秋田で負けたチームの分も戦っていきたい」。まずは選手権初勝利へ。全国で勝つ力があることを示す。
【KEY PLAYER】MF田村仁志
青森山田中出身のMFが攻撃のキーマンだ。2年生ゲームメーカーの田村は、青森山田中で1年生チームのレギュラーも務めていたという選手。3年時はケガに苦しみ、高校進学のタイミングで地元の秋田へ戻ったが、明桜で信頼を勝ち取り、選手権出場に大きく貢献した。
一つひとつのプレーのクオリティ、パス精度の高さは注目。国見(長崎)や神戸U―18(兵庫)などの強豪チームで後のJリーガーたちを指導してきた原監督も、「ヤットみたい」と元日本代表MF遠藤保仁(現ジュビロ磐田)の名を挙げて期待する。
田村は「遠藤保仁選手も好きですけど、タイプ的にはマンチェスター・シティのケヴィン・デ・ブライネ選手のようなスルーパスを出したいと思っています。ビルドアップのところはみんなも自分に対して絶対的な信頼を寄せてくれているので、任されている以上は役割を果たしてやっていかないといけない」と力を込める。
青森山田でプレーする旧友たちとは今も連絡を取り合っているという。「全国に来いよ」とエールを受け、それに応える形で秋田県予選を突破。青森山田とは逆ブロックとなったが、全国で対戦することを目指して明桜の攻撃を牽引する。
By サッカーキング編集部
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