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マンチェスター・U、至上命題のCL出場権確保へ 指揮官に求むは中盤の軸決めとイガロ&グリーンウッド

2020.06.14

[写真]=Getty Images

 マンチェスター・Cはファイナンシャル・フェアプレーに抵触したのか、していないのか。注目の案件が6月8日から3日間にわたり、CAS(スポーツ仲裁裁判所)で審理された。判決は7月中に下る。

 シティがファイナンシャル・フェアプレーを守っていない(粉飾決算の疑い)とすれば、UEFA(欧州サッカー連盟)が主催するヨーロッパの大会から2年間も締め出される。したがって、マンチェスター・Uは現状の5位をシーズン終了まで守れば、ひとつ繰り上がってCL(チャンピオンズリーグ)の出場権が転がり込んでくる。

 しかしシティは頑なに無罪を主張し、2年間の出場停止処分が科された場合はスイス最高裁判所に控訴する構えだ。問題解決までに長い時間を要するかもしれない。シティが無罪を勝ち取る可能性も、ほんのわずかだが残されている。ユナイテッドは、自力でCL出場権を獲得すべきだ。

 中断直前の公式戦5試合は4勝1分。エヴァートンには引分けたものの、シティを2-0で退けている。一時の虚脱感と不安が解消され、ピッチ上からポジティブなエネルギーが感じられた。

 好調の要因は、ひとえにブルーノ・フェルナンデスだ。

ブルーノ・フェルナンデス

冬に加入し、すぐさま地位を確立したブルーノ・フェルナンデス [写真]=Getty Images

 丁寧なボールさばき、正確無比のセットプレー、積極果敢な仕掛けなどで攻撃を彩り、首脳陣とサポーターの信頼を瞬く間に勝ち取った。準備期間がほとんどない1月の移籍は失敗例も少なくないが、フェルナンデスは環境適応能力も極めてハイレベルだった。

 彼が好調である以上、陣形に手を加える必要はない。フェルナンデスはトップ下、フレッジスコット・マクトミネイが中盤センター。この3人の熟成度を高めることが、CL出場権の獲得に直結する。チェルシー戦とシティ戦で成功した3-4-1-2、オーレ・グンナー・スールシャール監督が好む4-2-3-1といったフォーメーションの違いに関わらず、フェルナンデスとフレッジ、マクトミネイを中盤の軸に据えるべきだ。

 ポール・ポグバが入り込む余地はない。

「フェルナンデスとポグバはタイプが似ている。同時に使うと相殺する危険が伴う。どちらを使うかは監督次第だが、中断する前のパフォーマンスを踏まえれば、すでに答えは出ていると思う」

ポール・ポグバ

負傷から復帰し、調整は順調なポグバだが… [写真]=Getty Images

 クラブレジェンドのライアン・ギグス(現ウェールズ監督)も指摘したように、ポグバの起用は危険すぎる。

 とてつもないポテンシャルを持っているが継続性と運動量に欠け、彼の心はユナイテッドから遠く遠く離れてしまった。クラブ関係者ではなく、エージェントのミーノ・ライオラに全幅の信頼を寄せ、何度となく移籍を試みてもいる。いまさら改心するとは考えにくい。

 スーパーサブとしてベンチに常備するプランなら悪くないが、プライドの高いポグバが2番手、3番手に甘んじるだろうか。つくづく厄介な男だ。

 アントニー・マルシャルも歯がゆい。攻守の切り替えが鈍く、空中戦を嫌う。中央でポストワークを任せられるタイプではない。適性は左ウイングだが、マーカス・ラッシュフォードのような決定力もスピードも有していない。しかも、突如として集中力が途切れる悪癖まである。

オディオン・イガロ

中断期間中にレンタル期間の延長も決まったイガロ [写真]=Getty Images

 前線の中央はオディオン・イガロに任せるべきだ。マーカーとのごつごつしたバトルを厭わず、常に身体を張る。ペナルティーボックス内でも落ち着いており、シュートかラストパスか、プレーの選択も正解度が高い。スピードこそ並だが、ポストワークに長け、二重三重のマーカーを背負ってもボールロストしないイガロを中央に配置した方が、他の選手の戦闘意欲も著しく刺激される。

 さて、CL出場権獲得のために吟味したいポジションのひとつが、右ウイングである。

 ダニエル・ジェームズは第4節のサウサンプトン戦を最後にゴールが途絶えている。ラッシュフォードもマルシャルも右サイドは窮屈そうだ。フアン・マタはトップ下がベストポジションであり、アンドレアス・ペレイラは没個性の典型的な例だ。そしてジェシー・リンガードは2018年12月23日のカーディフ戦以降、プレミアリーグでは1年半近くも無得点という不名誉な記録を更新中。人はいるが質が不足している。

 嗚呼、デイヴィッド・ベッカムが20年ほど遅く生まれていれば……。

 メイソン・グリーンウッドを抜擢するときがやってきた。ボールコントロールが正確で、スペースを見つける感覚にも優れている。スールシャール監督が「ロビン・ファン・ペルシを彷彿とさせる」と絶賛したように、天性のシューターでもある。相手DF陣の配置を瞬時に察知し、ハードヒットとシルキータッチを巧みに使い分ける姿は、そう、まさしくファン・ペルシだ。

メイソン・グリーンウッド

期待のかかるグリーンウッド [写真]=Getty Images

 まだ18歳。経験不足は否めないものの、グリーンウッドは今シーズンの結末を託すにふさわしい若者である。ペレイラやリンガードのような、無駄走りもしない。

 前線でイガロとグリーンウッドを活用し、中盤の軸にフェルナンデス、フレッジ、マクトミネイを据えることが、スールシャール監督の使命だ。リヴァプールの優勝が99.99%決定しているとはいえ、ユナイテッドにはCL出場権獲得という至上命題がある。モチベーションを刺激できなかったり、ハードワークを拒否したりするタイプには、気を遣うだけバカバカしい。

文=粕谷秀樹

プレミアリーグ

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