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前線で輝きを放った金崎と清武…日本の快勝を支えた“大分カルテット”

2015.11.13

シンガポール戦に先発出場した森重、清武、西川、金崎(左から順番) [写真]=Getty Images

「金崎(夢生=鹿島アントラーズ)、清武(弘嗣=ハノーファー)、柏木(陽介=浦和レッズ)の表現には満足している。特に前半だ。彼らが同時に動きを作り出し、かなり興味深いアクションが起こった。金崎は難しい1点目を美しく決めてくれた。清武は守備を固めた相手によい組み立てを見せてくれた。柏木にはビルドアップと決定的なパス、バリエーションを期待したが、効果的なビルドアップもしてくれた」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が大絶賛したように、12日の2018年 ロシア・ワールドカップ アジア2次予選E組第5戦・シンガポール戦で、先発に抜擢された新戦力のインパクトは、凄まじいものがあった。「新しい選手が結果を出すことでチームに新たな競争が生まれると思う。非常にポジティブな部分だった」とキャプテン・長谷部誠(フランクフルト)ら常連組もチームの前向きな変化を大いに歓迎していた。

 常連組依存傾向からようやく脱しつつある日本代表だが、今回とりわけ目を引いたのが、金崎・清武・森重真人FC東京)・西川周作(浦和)という2000年代後半の大分トリニータの躍進を支えた「大分カルテット」がセンターラインを形成したこと。同じJクラブ出身の選手が代表チームの柱を支えるケースは、過去を振り返ってもそうそうあることではない。

「夢生、キヨ、モリゲ、僕のタテのラインが先発で出ていたのは、大分の方も喜んでくれたんじゃないかと思います。代表で一緒に集まれるっていうのは特別な思いもありますし、これからも自分たちが頑張って沢山の人たちに笑顔を与えようと改めて思いました」

「今日のスタジアム(シンガポール・ナショナル・スタジアム)が大分のスタジアム(大分銀行ドーム)にそっくりだったこともあって、久しぶりな感覚でやれましたし、今日は何か特別思うところはありましたね」と西川もしみじみとコメントしていた。

 金崎は日本代表戦そのものが2010年10月の韓国戦(ソウル)以来5年ぶり。ポルトガル2部のポルティモネンセ時代は表舞台から完全に遠ざかる形になっていた。清武も2011年の代表デビュー後はずっと香川真司ドルトムント)の控えに位置づけられ、ハリルホジッチ監督就任後も今年3月のチュニジア戦(大分)でスタメンに抜擢されただけ。森重もハリル体制では槙野智章(浦和)との併用が続いているし、西川も長く川島永嗣のサブで、今年8月の東アジアカップ(武漢)からやっと正守護神の座をつかんだところ。必ずしも順風満帆とは言えないキャリアを過ごしてきた4人が、長い時間を超えて同じピッチに立つこと自体、ある意味、奇跡的なことと言っても過言ではない。

 こうした紆余曲折はあっても、息の合った彼らのコンビネーションは健在だった。特に金崎と清武はリズミカルなダイレクトパスの交換を繰り返して敵をおびき寄せ、本田圭佑ミラン)や武藤嘉紀(マインツ)がフリースペースに飛び出すチャンスを随所に演出してみせた。清武のスルーパスに金崎が反応して決定機を迎えたシーンも数回は見られ、お互いの感覚が錆びついていないことを改めて実証したのである。

「夢生君はすごいパワーのある選手ですし、キープ力もありますし、裏に抜けるスピードもある。彼の特徴を生かすも殺すもたぶん2列目の僕たち次第だと思う。いい特徴を出させてあげるようにやっていければいい」と清武は試合前日に語っていたが、まさに言葉通りのお膳立てで、かつての同僚の活躍を後押ししたのだ。

 森重も彼ら前線に要所、要所で長短の小気味いいパス出し、攻撃センスを引き出そうとした。20分の金崎の豪快な左足ボレー弾は右サイド・本田のクロスを武藤がヘッドで折り返したところに反応する形だったが、実は本田へのダイアゴナルパスは森重が出していたのだ。西川はこうした一挙手一投足を背後から見ていたから、特別な感慨を覚えたのだろう。

 19歳で日本代表デビューした経験を持つ梅崎司(浦和)、2012年ロンドン五輪で背番号10をつけた東慶悟FC東京)を含め、大分は傑出した才能を持つ若いタレントを続々と送り出してきた。今季はJ2下位に沈み、J3降格の危機に瀕しているが、日本を代表する優れた人材を輩出したことは誇りに感じているはずだ。

「大分カルテット」にとっても、今回のシンガポール戦は今後の代表生活を大きく左右する節目になるかもしれない。大分銀行ドームによく似たピッチで全員が躍動したこの日のことを忘れることなく、日本のトップに上り詰めるべく、努力を続けてほしい。

文=元川悦子

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