2013.03.03

アーセナル愛を語るウィルシャー「クラブの未来は明るい」

ワールドサッカーキング 0307号 掲載]

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インタビュー=クリス・ヘザラル
翻訳=田島大

 

主力選手の相次ぐ移籍、序盤戦のチームの停滞感、窮地に陥っていたアーセナルにとって、ジャック・ウィルシャーの復帰はクラブの希望となった。コンディションは既に万全。反撃の準備は整った。

 

 

ジェラードは模範にしたい選手

 

君は昨年の10月末、約14カ月ぶりに戦列へ戻って来た。最近はかなりコンディションが上がってきたように見えるけど、もう完全復活と言っていいのかな?

 

ウィルシャー(以下W―そうだね。毎試合のように良くなっているし、ほぼ完全な状態にあると言えるよ。ただ、ここまで来るのにはホントに苦労した。復帰後の最初の数試合はいつもよりアドレナリンが出てるから、勢いで復活した気になる。でも、すぐに勢いだけじゃダメだと気づかされるんだ。ベストの状態を取り戻すまでの戦いは過酷だったよ。

 

離脱期間はどんな風に過ごしていたのかな? キャリアの危機を感じたことはなかった?

 

W―ほとんどの時間をリハビリに費やしていたから、暇を持て余すという感じじゃなかった。もちろん、ピッチに立てないのはつらかったけどね。でも、「復帰できないかもしれない」と考えたことは一度もない。不安があったとすれば、「以前の自分のプレーを取り戻せるか」という点だけだね。

 

無事に「以前の自分」を取り戻せたようだね。先日はイングランド代表にも復帰し、ブラジル相手に2-1の勝利を収めた。

 

W―まず、久しぶりにウェンブリーのピッチに立てたことがうれしかった。代表復帰戦ということで個人的にも特別な試合になったし、いい思い出になるだろうね。もちろん、チームとしていいプレーができたということも重要だったと思う。

 

イングランドがブラジルに勝ったのは実に23年ぶりのことだ。

 

W―ブラジルが相手だと一瞬たりとも気を抜けないし、予想外のプレーへの準備もしておかないといけない。あの試合ではそれができたんだ。チームが一致団結して、ブラジルの攻撃にうまく対処できたと思うよ。

 

代表戦の先発出場は19カ月ぶりだった。緊張しなかった?

 

W―代表戦はいつだって緊張する。でも、チームには経験豊富な選手がそろっているから、僕ら若手は安心して試合に臨めるんだ。チームリーダーの(スティーヴン)ジェラードは試合中もずっと声を掛け続けてくれたし、途中出場の(フランク)ランパードは価値あるゴールを決めてくれた。今の代表は若手とベテランがうまく融合してる。このチームで一刻も早くワールドカップ出場権を確保したいね。

 

君とジェラードを比較する人も多い。これについては?

 

W―彼のような偉大な選手と比較されるのはうれしいよ。でも、タイプは少し違うかな。あのロングパスは、僕にはまねできないしね。ただ、模範にしたい選手だとは思ってる。ジェラードはリヴァプールとイングランド代表で長く活躍してきた選手だからね。一歩でも近づいて、彼のようにチームをけん引する存在になりたい。イングランドのすべての若手MFにとって、目標とすべき選手であることは間違いないよ。

 

君はアーセナルでもイングランド代表でも、中心選手として大きなプレッシャーを受けている。うまく対処できそう?

 

W―気にしてないよ。だって、歴史を振り返っても、一人でチームにタイトルをもたらした選手なんていないからね。クラブにも代表にも僕には素晴らしい仲間がいる。プレッシャーを一人で抱え込む必要なんてないんだ。

 

このクラブの監督はアーセンしかいない

 

アーセナルはプレミアリーグの優勝争いから脱落し、リーグカップでは4部のブラッドフォードにPK戦の末、敗れた。チームの雰囲気が良くないのでは?

 

W―そんなことない。雰囲気は最高だよ。僕らにはチームとして日々成長しているという実感があるからね。確かにリーグではかなり後れを取ってしまったけど、僕らには4位以内に入るという使命がある。それに、チャンピオンズリーグだってFAカップだってまだ残ってる。狙えるタイトルはまだまだたくさんあるんだ。

 

今シーズンを実りある1年にするためには何が必要だろう?

 

W―これまで何度か苦しい時期があったけど、僕らはそれを乗り越えてきた。あとは選手が更に奮起して、チームを上昇させるだけだよ。幸い、チームにはキャプテンの(トーマス)ヴェルメーレンを筆頭に、(ペア)メルテザッカーや(ルーカス)ポドルスキといった頼れるリーダーがいる。(サンティ)カソルラだってそうさ。彼はプレーでチームを引っ張るタイプだからね。

 

アーセナルは近年、セスク・ファブレガスやロビン・ファン・ペルシーといった主力選手を失ってきた。この状況をどう思う?

 

W―正直、ロビンの移籍はつらかった。チームが転換期にあるのは間違いないよ。でも、クラブは代役として経験豊富な(ミケル)アルテタや、カソルラ、ポドルスキを連れてきた。そして、彼らは既に十分な結果を残している。こういう補強をしてくれると、クラブが本気でタイトルを狙っていることが感じられてうれしいね。

 

昨夏に加入した選手の中では、特にカソルラが大きなインパクトを残している。

 

W―ホントにすごい選手だよ! ちょっと格が違うよね。ボール扱いのうまさと視野の広さは信じられないぐらいだ。絶対にボールを失わないし、3人に囲まれてもドリブルで簡単に切り抜けちゃうんだ。これまで僕が一緒にプレーしてきた中でも、彼は最高の選手の一人なんじゃないかな。

 

一部のファンがアーセン・ヴェンゲル監督に対してブーイングしたことがあったけど、これについてはどう思う?

 

W―ファンの苛立ちは理解できる。お金を払って見に来てもらっている以上、僕らのパフォーマンスに満足できなければブーイングされるのも仕方ないと思う。僕自身、ホームで負けるなんてあってはいけないことだと思うからね。でも、すべてを監督のせいにするのはちょっと違うよ。僕ら選手が、もっと自分たちを見つめ直さないといけないんだ。

 

ヴェンゲル監督のことをかなり尊敬しているようだね。

 

W―もちろんさ。アーセナルは毎年のようにチャンピオンズリーグに出場し、13年連続で決勝トーナメントに進出している。そんな偉業を成し遂げた監督は他にいないよね。アーセンはこのクラブの歴史を作った。16年前にここにやって来て、クラブを完全に変えたんだ。それに、彼は僕のことを信頼してくれた。まだ若い時も、ケガをした時もね。これからも、このクラブの監督はアーセンしかいないと思う。

 

でも、マンチェスター勢がトロフィーを掲げるのを横目で見るのはつらいよね? アーセナルは2005年を最後に無冠が続いている。

 

W―もちろん、気持ちのいいもんじゃない。でも、別に嫉妬はしないよ。僕らには彼らと競い合えるだけの力があると確信してるからね。試合の終わらせ方や勝ち切る方法をもう少し学んで、しっかりチャンスをモノにするだけさ。もう少しで彼らと肩を並べられると思ってる。

 

それにはタイトルの獲得が一番の近道なのでは?

 

W―そうかもしれない。無冠が続く限り、プレッシャーは高まる一方だからね。精神面の障害を取り除くためにも、まずは一つ、タイトルが必要なんだ。

 

ここにいる全員を家族のように思ってる

 

アーセナルでデビューを飾って以来、君は中盤の少し下がった位置でプレーしてきた。でも、ヴェンゲル監督は最近、君をより攻撃的な位置で使うことが多くなったよね。自分のポジションについてどう考えている?

 

W―どんなポジションでも喜んでプレーする。ただ、4-4-2の中盤よりは中盤が3枚のほうがやりやすいかな。いずれにしても、僕が一番好きなプレーはボールをもらったら積極的に仕掛けてチームの推進力になることさ。常にそんなプレーがしたい。

 

君が育ったアーセナルのアカデミーについて聞かせて。

 

W―フットボールを学ぶ上で最高の場所だと思う。まず、クラブの中に憧れの選手がいるのは大きいよ。今もウチには有能な若手が大勢いる。クラブの未来は明るいよ。何より、アーセナルというクラブの“重み”を知る選手は今後も必要だからね。

 

先日、アーセナルの若い英国人選手たちが一斉に契約を更新した。君やアレックス・チェンバレン、更にはセオ・ウォルコットもだ。

 

W―とても重要なことだよ。今後もセオやアレックスたちと一緒にプレーできると思うとワクワクする。でも、まだ契約を延長しただけで何かを成し遂げたわけじゃないし、努力を怠れば何も達成できない。僕らが目指すのは一流選手になって、すべてのタイトルにチャレンジすることさ。

 

ウォルコットの交渉はかなり難航していたようだけど、心配ではなかった?

 

W―クラブの全員が彼の契約更新を望んでいた。僕も「サインしちゃいなよ」って何度もからかったよ(笑)。僕ら英国人選手は一緒に食事に行くことも多いし、みんなホントに仲がいい。だから、契約がまとまった時は本当にうれしかった。そもそも、このクラブで育った僕は、ここにいる全員を家族のように思ってるんだ。

 

 

 

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