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今野泰幸(ガンバ大阪/DF)「道を拓く力」

2013.02.28

[サムライサッカーキング3月号掲載]

ザックジャパンにおいて、不動のセンターバックを務める今野には、圧倒的なスピードであったり、驚異的な身体能力があるわけではない。無名に等しかった高校時代から、日本代表としてピッチに立つまで、いかにして歩んできたのか。発売したばかりの著書『道を拓く力』をテーマに聞いた。

konno_adac文=山本剛央 写真=足立雅史

メンタルが弱かった少年時代、日本代表チームメートに刺激

──今回、著書を執筆するにあたり、ご自身の半生を落ち着いて振り返ることになったかと思います。振り返ってみて、改めてどう感じましたか?

今野(以下K) 本当に波があったなと思いますね。良いことも経験しているし、どん底まで心が落ちたこともあります。波瀾万丈というかね。でもそのすべてが、自分にとって良い経験だったなと、改めて思いました。

──過去を振り返ることで、新しく気付いたことはありますか?

 小学校、中学校、高校と振り返ってみて、昔はメンタルがめちゃくちゃ弱かったんだな、ということに気が付きましたね。今もそれほど強いほうじゃないですけど、いろんなことを経験して、いろんな人と出会って、例えば日本代表の選手たちからもいろいろなことを学んでいますし、過去に比べたら少しはメンタルが強くなっていると思います。人間的にも、少しずつだけど、大きくなれているのかなっていうのは感じました。たぶん、小中高当時に出会った人からすれば、想像できないくらい、僕、変わったんで。

──日本代表のチームメートからは、具体的にどんな刺激を受けました?

 初めてスタメンで大きな大会に出るという経験ができたのが、2011年のアジアカップでした。先に失点したり、自分のミスがあったりとか、各試合の中で本当にいろいろなことがあった。そういう時に、自分はメンタルがあまり強くなかったから、気持ちが落ちてしまうこともあったんですけど、周りのチームメートを見てみたら、みんなすごいポジティブで。前を向いて、最後まであきらめないっていうか。単純にすごいなって思ったんですね。そういうメンタリティーを間近で見て、気持ちの大切さについて改めて感じましたね。

サッカーを好きな気持ちがモチベーションを新たにさせる

──著書のタイトルにもなっている「道を拓く力」についてお聞きします。道を拓くには、どんな思考、どんな力が必要だと思いますか?

 信念というか、信じていることをやり続けるというのが、あくまで僕の場合は一番だと思います。「地道に」というのが自分には合っていると思うし、そうやっていれば、誰かが見てくれていると思うんです。サッカーはいきなり上手くならないので、一つひとつの練習を、本当に何十回、何百回と反復して、ようやく身に付く。本当に、毎日の積み重ねでしかないんですよね。それを実感しているので、とにかく信念を持ってやり続けることかなと。

──これまでのキャリアの中で、挫折したことはありますか?

 挫折しそうになったことは何回もありますよ。例えばプロになりたての時、「すぐレギュラーになってやる」っていう気持ちで入ったけど、最初のキャンプでいきなり、体格もパワーも、判断のスピードも全然違うというのを目の当たりにしました。本当にこの先プロでやっていけるのかと、そこでも挫折しそうになりました。だけど、僕はやっぱりサッカーが好きですから、絶対に上手くなってやろうっていう向上心は常に持っていますし、挫折となり得るような壁を前にした時はいつも、サッカーが好きという気持ちで乗り越えてきました。好きだから、上手くなりたいという、単純なモチベーションが原動力となるんです。

一日一日を無駄にせず、やれることをすべてやる

──日本代表でもガンバ大阪でも、13年は今野選手にとって大事な年になりますね。

 いやまあ、毎年大事ですけどね。プロ生活って、本当に一瞬一瞬、毎日が大切だと思っています。一日でも無駄にしたくないし、無駄にすべきではない。去年はシーズン序盤に監督が変わって、探り探りというか、監督に任せてしまった部分も多かったと思うんです。でもやっぱりやるのは選手ですし、どんどん若手とコミュニケーションを取って、チーム力を上げていかなければならないと思います。一日一日を無駄にしたくないですし、やれることは全部やる、という気持ちでいます。

──今年の、個人としての目標は何ですか?

 まずはケガをしないことです。それが前提としてあって、やはりクラブで活躍してこそ代表が見えてくると思うので、とにかくまずはガンバで結果を残したいですね。舞台はJ2ですけど、毎試合勝利に貢献できるように、そして最低目標のJ1昇格を達成できるように力を尽くします。

──コンサドーレ札幌、それからFC東京時代にもJ2を戦っていますが、J1との差はどんなところにあると感じていますか?

 明らかな違いと言えるような差はないですよ。ただやっぱり、J1から落ちてきたチームに対しての、以前からJ2にいるチームのモチベーションは高いですね。すごく頑張ってくるし、特にアウェーに行くと雰囲気とかもすごい。「J1から来た強いチーム」に対して頑張っている姿で、サポーターがすごく湧くんですよ。それを倒すには、ものすごいパワーがいるんです。だけどそういう歓声を黙らせるくらいの覚悟で戦って、J1昇格を果たしたいと思います。

道を拓く力――自分をマネジメントするイメージとは
今野泰幸 著 1,365円(税込)
日本経済新聞出版社

今野哲学が凝縮された一冊

高校まで全国的に無名だった今野が、一体どのように自らの道を切り拓いてきたのか。アテネ五輪での悔しさ、2006年ドイツ・ワールドカップのメンバー落ちなどの苦しい時期を乗り越え、国内最高峰のディフェンダーにまで成長した軌跡と、その中で醸成された“今野哲学”を凝縮した一冊。日本代表の歴代監督や、本田圭佑、香川真司、長友佑都、吉田麻也らチームメートとの秘話、オフの過ごし方や家族への思い、出身地である仙台・東北の復興に向けた活動、そして何よりサッカーへの情熱を熱く綴っている。

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