2012.09.28

「カタール代表は、熊谷市選抜みたいなものですよ!」森本高史(FCデレン墨田2009会長)インタビュー(前篇)

[提供:宇都宮徹壱公式メールマガジン 徹マガ
森本高史
「タカシ・モリモトを知っているか?」
 これまで3回、海外取材中に現地のジャーナリストからこのような質問を投げかけられたことがある。エストニアのタリンで、ロシアのサンクトペテルブルクで、あともうひとつは――失念した。私の答えは決まってこうだ。
「よく知っていますよ。もちろん」

 森本高史さんは、現在はモンゴルにあるFCデレン墨田2009の会長という肩書きで有名だが、考えてみれば30代前半でクラブの会長(しかも海外の!)を務めているのだから、只者ではない。加えてこの人は、20代の頃から東欧や中東やアフリカなどのマイナーな地域での取材を続け、私など到底太刀打ちもできないサッカー人脈を築いてきた。年齢は私のほうが一回り上だが、その行動力と発想力にはいつも脱帽するばかりである。

 そんな森本さんに、いつかは徹マガでインタビュー取材をさせていただきたいと思っていたのだが、今回は「ぜひ取材してください」と先方のほうからリクエストをいただいた。ご本人も大の徹マガファンで、ぜひとも伝えたいことがあるという。ならば、ということで、森本さんが生まれ育った墨田区某所にてインタビューさせていただいた(東京スカイツリーはすぐ間近で拝むことができた)。

 今号はその前篇として、森本さんお得意の中東サッカー事情を中心にお話を伺った。ちょうどワールドカップ・アジア最終予選、対イラク戦が終わったばかりということもあり、イラク代表について尋ねてみたところ、次から次へと話題が尽きない。サッカーファンの知的欲求を刺激し続ける、森本ワールド。さっそくキックオフといこう。(取材日:9月12日)

アジアの中で最もヨーロッパ化が進んでいる国とは?

――今日はよろしくお願いします。最近、帰国されたばかりだと思うのですが、どちらに行っていたのですか?

森本 モンゴルに1カ月行っていました。今は直行便が週に3便飛んでいるので、月曜日に行って土曜に帰ってきて、そこからJ1の試合に見に行きました。

――相変わらず、すさまじいスケジュールですね(笑)。モンゴルでは主にどんなお仕事をされていたんでしょうか?

森本 デレン墨田サッカーチームの運営。例えばグラウンドを借りたりとか、マケドニアから新監督を招聘したりとか。月曜日に行って、土曜日に帰ってくるスケジュールだと、何も出来ないまま帰ってきちゃうので、この前は8月14日から9月10日まで、本当に約1カ月いました。

――まあ、モンゴルの話は、おいおい伺うとして、昨日のワールドカップ・アジア最終予選で日本に善戦したイラクについての感想からお聞きしたいと思います。長年、中東サッカーをご覧になってきた森本さんにとって、今回のイラク代表はどのように映りましたか?

森本 まあ個の能力だけなら、イラクは日本より全然上だと思う。ただし、経験の部分でやられてしまった感じですね。ほとんどがイラクの国内リーグでやっている選手ばかりですから。やはりサッカーはチームスポーツなので、優れた個だけでは勝てない。それでも、すごく面白い存在がイラクにはいるなと思いました。

――個人的には9番(アハメド・ヤシーン)がすごく目に引いたんですが、彼はイラク生まれのスウェーデン育ちらしいですね。しかも、まだ21歳

森本 イラクももう1人、スウェーデン育ちの選手いますね。あの国にはクルド人移民のクラブもあるくらいですから。あと、昨日のベンチにはいませんでしたが、オランダ生まれのイラク人もいたはずです。まあ、南アフリカのワールドカップに出場したアルジェリア代表が、実はほとんどがフランス生まれだったのと同じですよ。

――現在、アジアの代表チームで、最も移民系の選手が多いのはどこですかね?

森本 実はフィリピンなんですよ。半分以上がヨーロッパ系。

――え、そうなんですか?

森本 たとえば、バレンシアとかマジョルカにいたジョナサン・デ・グズマンっていう選手。彼はカナダ生まれカナダ人なんですけど、父親がフィリピン生まれだからフィリピン代表の選択権も持っている。ただ、オランダ代表からもカナダ代表からも話もあるようです。

――フィリピンって世界中に出稼ぎを多く出している国のひとつですよね。日本もそうだし、中東のホテルに行くとスタッフには必ずフィリピン人がいるくらいです。中には定住して、現地で子供が生まれるというパターンも多いんでしょうね

森本 たぶん、数千万単位でしょうね。あと、京都サンガからブリスベン・ロアーに移籍したU-19日本代表の高橋祐治っていうDFがフィリピンのハーフですし、川崎フロンターレに大阪桐蔭から入った田中淳一っていう選手もフィリピン系です。

――つまり彼らは、フィリピン代表になるという選択肢もあるわけですね

森本 そうです。だから、今ヨーロッパ組が一番多いのはどこかといえば、フィリピンです。今、ホッフェンハイムにはステファン・シュロックっていうフィリピン代表いるし、フルハムの第3GKニール・エザリッジもフィリピン代表です。

――なるほど、中東の中堅国よりも欧州組が多いわけですね。そういえば、浦和の監督だったエンゲルスの奥さんもフィリピン人でしたね

森本 そうですね。エンゲルスには娘さんがいて、18歳か19歳だと思うんですけど、ドイツ代表かフィリピン代表のどっちかでサッカーを続けたいと本人も言っていましたし。息子もサッカーやっていてドイツ代表になりたいという夢もあるみたいだけど、現実的に考えたらちょっとね。ただ、フィリピン代表なら可能性はあるかなと。

 


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2010年5月24日に産声をあげた、写真家・ノンフィクション・ライター、宇都宮徹壱の手がける唯一の公式メールマガジン。日本代表からJFL、地域リーグ、さらにはアジアやヨーロッパの辺境まで、そのジャンルは縦横無尽。平均15枚以上の美しい撮りおろし写真と、平均10,000万字以上のビビットな文体を駆使し、フットボールをめぐる新鮮な驚きと愉しみを毎号お届けします。月4回発行。ePub配信もスタート。
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