2012.07.26

ロンドン五輪へ臨む山村和也「勝つチャンスはある、絶対に負ける相手はいない」

Jリーグサッカーキング 2012.9月号掲載]

 

今シーズンの新人選手の中でその動向が注目されていた山村和也。より高いレベルでのプレーを臨んだ彼が選んだクラブは“常勝軍団”。激しく厳しいチームで過ごす日々は、着々と成長を遂げる彼に“ロンドン”への切符を手渡した。2012年夏。アントラーズの誇りを胸に輝くメダルへの勝負が始まる。

 

インタビュー・文=田中 滋
写真=足立雅史

 

 

勝つチャンスはある

《絶対に負ける》相手はいない

 

まずはロンドン・オリンピックのメンバー選出おめでとうございます。

 

山村 ありがとうございます。Jリーグでしっかり試合に出場したことがメンバー入りにつながったと思っています。ただ、五輪でしっかり結果を出さなければ意味がないので、チーム内での競争にも勝てるようにしていかなければいけないと思っています。

 

鹿島アントラーズからは山村選手一人が代表選出となりました。

 

山村 ずっと一緒に戦ってきたチームメートのサコ(大迫勇也)が落選してしまい残念です。メンバーに入れなかった選手の分まで頑張らなければいけないと思っています。

 

初戦はスペイン代表との対戦です。

 

山村 もう、言うことなしのメンバーですね。早く試合をやりたいです。ジョルディ・アルバ(バルセロナ)など、ユーロ2012の優勝メンバーが3人も入ってるし、映像をしっかり分析して対応したいと思います。強い相手ではありますが、必ずチャンスはあります。その時にしっかり決めて、守備をサボらずにやっていけば勝つチャンスはあると思います。《絶対に負ける》という相手はいない。五輪でメダルを取るためには、初戦のスペイン戦に勝つことが重要ですし、そのためにも全員がまとまって戦っていくことが大事になると思います。

 

その意味でもワールドカップ南アフリカ大会で予備登録メンバーとして帯同し、チームがまとまっていく様子を身近に見たのは大きな経験になっているのではないですか?

 

山村 そうですね。あの大会はチームがすごくまとまって、結果が生まれた大会でした。その時のことも、しっかり伝えられたらと思いますね。

 

今回、オーバーエージ枠で吉田麻也選手(VVVフェンロ/オランダ)と徳永悠平選手(FC東京)が選出されました。これまで両選手とプレーした経験はありますか?

 

山村 麻也さんとは流通経済大2年の時に、アジアカップ予選のイエメン戦で一緒にプレーしました。米本(拓司/FC東京)とボランチを組んで、麻也さんがセンターバックでした。ただ、麻也さんは長崎県出身なので、小学生の時に対戦したこともあるんですよ。たぶん、麻也さんは覚えてないと思いますけど(笑)。その頃はお互いにフォワードとかトップ下でプレーしていたんですよね。本大会ではコミュニケーションが一番大事だと思うので、しっかり話したいと思います。それに、サッカーだけでなく、食事や日常生活の中でもコミュニケーションを取りたい。やっぱりチームとしてまとまるのには時間が掛かると思うので、そこはみんなで一つになれるようにやっていきたいと思います。

 

すごく充実した日々を過ごしています

 

話をチームのことに戻します。鹿島に加入して半年が過ぎようとしています。ここまで振り返ってみていかがですか?

 

山村 運が良かったと思いますね。(中田)浩二さんがケガをしてしまったことで出場機会を得ました。ただ、五輪でチームを離れますし、今後はどうなるか分からないですが、ここまでの期間にJリーグで試合に出られたことは、経験や代表選出にもつながったと感じています。もちろん課題もあります。ポジショニングはまだまだですし、球際での激しさや最後の部分で体を投げ出すことができていないと思います。ただ、ポジショニングに関しては最初の頃よりは良くなってきたかなと思いますし、自分で成長を感じます。周りからは「パスの精度を上げるように」とアドバイスをもらうので、自分で気が付かなかった部分などはすごく勉強になっています。

 

岩政大樹選手や中田選手からは、ポジショニングについて細かくレクチャーを受けているようですが、具体的にはどういった場面なのでしょうか。

 

山村 センタリングに対応する時や、相手がフリーでボールを持っている時のポジショニングなどですね。今まで自分がやってきたこととは違い、相手が狙っているポジションに先に入ることを重点的に言われました。それを大樹さんや浩二さんに指導してもらって、自分でも「こうやって対応すればいいんだ」という感覚が徐々に分かってきました。経験豊富な先輩からのアドバイスは本当に勉強になります。

 

これまであまり意識してなかったことを指摘されているということですか?

 

山村 意識してなかったというよりは、「自分の感覚とは違う角度から声を掛けてもらっている」という感じですね。答えがあるわけではないですし、どちらが自分に合うのかを判断する必要があります。そこはお二人の意見を参考にしながら、自分のプラスになるものや合っていると思うものを取り入れていきたい。まずは取り組んでみて、「違うかな」と思ったら元に戻しています。でも、実際の動きを映像で確認してみると、だいたい自分の感覚よりも二人のアドバイスに沿った方が正しいことが多いですね。やっぱり経験している先輩たちの言葉どおりに対応を実践すると、力を入れ過ぎないディフェンスができることが多いです。

 

自分を成長させるために鹿島を選んだと思いますが、それは間違いじゃなかったということですね。

 

山村 そうですね。すごく充実した日々を過ごせています。

 

そうした日々が、U-23日本代表でキャプテンを務めながらポジションを失ってしまった時期を乗り越えることにつながったのでしょうか?

 

山村 やはりJの試合を経験できたことが大きかったと思います。扇原(貴宏/セレッソ大阪)はコンスタントに試合経験を積んでいたし、僕がボランチで出ている時から彼が試合に出てもおかしくないと思っていました。そういった感覚もあり、ポジションを失ってもまずはコンディションを整えることに専念していました。もちろん悔しさはありましたが、焦ることはなかったと思います。

 

改めて現在の課題を教えてください。

 

山村 守備面ではポジショニングと対人プレーですね。簡単に飛び込まないことだったり、最後まで足をしっかり運んだり、体を投げ出すことが相手への対応としてできていなかったりするので、しっかり取り組んでいく必要があります。

 

体を投げ出すことは難しいですか?

 

山村 シュートブロックのタイミングや瞬間的なスライディングはちょっとずつ体得できればいいなと思います。ゴール前で体を張れたらいいのですが、反応が少し遅いので……。大樹さんのように最後のところでスライディングで止めたりするプレーが出せたらいいなとすごく思います。足を出すのか出さないのかを迷ったり、滑るか滑らないかという瞬間的な判断ができないところがあるんです。

 

鹿島ではセンターバックで出場していますが、一つのミスが失点につながるポジションをどう思っていますか?

 

山村 ミスが失点に直結するポジションだからこそ、責任感を持って完璧にこなせるようになるのが理想ですし、《完璧主義》くらいの強い気持ちでやっていかないといけないと思っています。

 

楽しいですか? それとも難しいポジションですか?

 

山村 どちらもですね。楽しさも難しさもあります。数センチの差で足が届かなかったりするなど、ほんの少しの判断で状況が変わりますが、そこを突き詰めるのがセンターバックですよね。

 

これまでで最も充実感を得た試合は?

 

山村 失点ゼロに抑えた試合はうれしいですが、それでもミスはまだあります。「完璧だったな」という試合はまだないですね。個人的にはどの試合も楽しいですが、勝てばうれしいし、負ければ悔しい。ただ、勝てなかった時にサポーターの皆さんを見ると、すごく申し訳ない気持ちになります。それでも「顔を上げろよ」と言ってもらえたり、変わらずに応援し続けてくれる。特に今は結果が付いてきていないので、試合後のあいさつは「本当に申し訳ない」という気持ちでいっぱいです。

 

応援の横断幕も掲出されていますが、スタンドの光景はよく見ているんですか?

 

山村 目に入りますよ。横断幕もそうですけど、「4」と入ったユニフォームも着てくれている人がいると、本当にうれしい。あいさつでスタンドの近くまで行くと見えるので分かるんですよ。

 

最後に聞かせてください。ご自身のサッカー人生において、ロンドン五輪をどのような大会にしたいと考えていますか?

 

山村 サッカーで五輪に出るチャンスは基本的に一生に一度ですよね。W杯と同じく真剣勝負の世界だと思うので、その中で海外の選手と試合ができることは、絶対にプラスの経験になると思います。トゥーロンで戦ったオランダのルコキ(アヤックス)のような選手がゴロゴロしているかと思うと気持ちもたかぶりますし、そこで自分たちがどれだけできるのかをまず確認したい。そして一戦一戦をしっかりと戦って勝ち、結果を残していくことが大事だと感じています。関塚(隆)監督も言うとおり、メダルを取って帰って来たいと思います。

 

 

 Jリーグサッカーキング 9月号

ANTLERS STANDARD
~世界との出会い、世界への思い~

▼[巻頭インタビュー]小笠原満男
▼[5大インタビュー]山村和也、興梠慎三、中田浩二etc
▼[対談]ジョルジーニョ監督×名良橋晃
▼[戸塚啓]岩政大樹(鹿島)
定価:780円(税込)