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ブランドコミュニケーションの仕事をする上で必要なスキルは「想像できる力」/後編

2015.12.24

世界中のビッグクラブやスター選手と契約を結び、特にフットボール業界においては他の追随を許さないグローバルスポーツメーカー“アディダス”。世界トップクラスのブランドコミュニケーション術の秘密とは何なのか? 今回は、2015年にローンチとなった新スパイク「X」「ACE」の日本での斬新なプロモーションの立役者、アディダス ジャパン株式会社フットボール部門のブランドコミュニケーション・シニアマネージャーの本城賢嗣氏に余すことなく語ってもらった。

インタビュー・文・写真=波多野友子

――2014年にベースボールとバスケットボールの仕事を離れ、フットボールカテゴリーへ移籍されましたが、印象に残っている仕事を教えてください。

本城賢嗣 やはり新スパイク「X」と「ACE」のローンチキャンペーンでしょうか。既存のスパイクを一新するということもあり、鮮烈な登場感を演出しつつ認知度を上げなくてはならない。そんな重要なタスクのなかで考えたのが、フットボールカテゴリーの全選手14名を一堂に集めるという企画です。それも日本らしい場所、両国国技館という場所で、選手たちが2on2をプレーするというチャレンジングな試みでした。他にも、23年ぶりにオフィシャルパートナーになったマンチェスター・ユナイテッドFCの新ユニフォームローンチイベントなど、まだ移籍して一年ですが濃密な仕事が多かったですね。

――ブランドコミュニケーションを行う上で、フットボール特有の難しさ、またやりがいとはどんなことでしょうか。

本城賢嗣 少し抽象的な話になりますが、フットボールは他の競技に比べてスケール感が大きいと感じています。例えば同じような手法でのブランディングを考えた時、ベースボールやバスケットボールカテゴリーでは通用する企画になるものが、フットボールカテゴリーでは通用しないことがあります。それは、アディダスがこれまでフットボールにかかわってきた長い歴史と、実施してきた施策のスケール感が関係しています。自分が思いつくイメージの多くは、過去に既に誰かがやっていた、ということなんです。そこが難しい部分でもあり、逆にまだ誰も成し遂げていない可能性を模索できるという点で、やりがいに繋がる部分だとも思います。

――アディダスのような大手グローバル企業で働く魅力、そして反対に大変なことは?

本城賢嗣 海外で働くチャンスが与えられるという点はもちろんのこと、僕が思う最大の魅力は、仕事の枠を国内で完結させなくていいという点です。優れた企画は国を超えて評価されます。僕も現在フットボールカテゴリーで目指しているのはグローバルな評価ですし、以前手掛けたキャンペーンが国外で話題になった時は嬉しかったですね。

――本城さんが考える、ブランドコミュニケーションの仕事をする上で必要なスキルとは何ですか?

本城賢嗣 当然のことながら、日々アップデートされていくマーケティングの知識はベースとして必要です。ですが僕がもっとも重視しているのは「創造できる力」です。アイデアやイメージと言い換えてもいいでしょう。創造できる力を鍛えるためには、恐らく、かけた時間、いわば思考量がものを言います。どのくらいその商品のことを考えたか、その時間こそがアイデアやイメージに比例する。そして創造できる力というのは、一部の職種だけではなく、すべての仕事に必要なものだとも感じますね。

――本城さんご自身は、日頃どんなところからアイデアを引っ張ってくるのですか?

本城賢嗣 僕は書店が好きなんですが、男性誌や女性誌などのファッション・ビジネス誌から書籍までジャンルにかかわらず「いい企画、いい装丁」と感じたものは大体手に取って買うことにしています。いわゆるジャケ買いですね。もちろんデジタルメディアも目を通しますし、いい企画、装丁がかっこいいと思ったらキャプチャを撮っておきます。そして必ず「なぜ自分がそれをいい企画またはクールだと感じたのか」を、簡単に編集し、ストックするように習慣化しています。結果的にはそのストックしたたくさんの写真なのか、記事のタイトルなのか。そこから仕事のヒントを得ることが多い気がします。

――ご自身のどんな性格が、ブランドコミュニケーションの仕事に生かされていると思いますか?

本城賢嗣 自分自身を徹底的に「マス」側の人間だと信じているところです。ブランドコミュニケーションに携わる人間というのは、あたかも「インフルエンサー」のように捉えられがちですが、少なくとも僕自身は違います。自分がいいと感じるものは隣の人もいいと感じていると思いますし、反対に、多くの人がいいと感じるものは、僕も同じようにいいと感じることが多いんです。その感覚に自信があるからこそ、自分の尺度を重要視することができ、ブランドコミュニケーションという仕事にはフィットしていると感じています。

アディダスの“仕掛け人”が明かすブランドコミュニケーションの役割「商品の良さを理解してもらうための戦略が必要」/前編

アディダス ジャパン株式会社
アディダスマーケティング事業本部 Football ビジネスユニット
ブランドコミュニケーション シニアマネージャー
本城 賢嗣(ほんじょう けんじ)

アパレルメーカー、広告代理店を経て2003年にアディダス ジャパン株式会社へ入社、セールスプロモーション部門に籍を置く。2008年よりブランドコミュニケーションに配属。ベースボール担当時は読売ジャイアンツを活用したブランディングを行う。またバスケットボール担当時には様々なグローバル選手の来日に尽力し、特にデリック・ローズ選手(シカゴ・ブルズ)来日においては、100人の一般参加者と対戦する「1on100」を仕掛けた。2014年より現職となり、アディダス ジャパンにおけるフットボールのブランドコミュニケーション部門を統括。最近では新たなスパイクモデルであるX(エックス)とACE(エース)のローンチキャンペーン、プロモーションを手掛けた。

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