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本田圭佑がモスクワを去る日。ロシア人記者が語る『移籍の可能性と移籍への障害』

2012.05.10

ワールドサッカーキング 2012.05.03(No.213)掲載]
 石川県の星稜高校で“超高校級”のプレーを連発した本田圭佑は2005年、名古屋とプロ契約を締結。2年目で定位置をつかむと、無回転キックを意のままに操ることから“レフティー・モンスター”の異名を取り、Jリーグで脚光を浴びる存在となった。

 2008年1月にオランダのVVVフェンロに移籍すると、数字を残すことがキャリアアップへの近道と考えた本田は、どん欲にゴールを目指すスタイルを確立。2部リーグでプレーした2年目には自己最多となる16ゴールを挙げてリーグMVPを受賞するなど、チームの1部昇格の立役者となった。

 この活躍もあって、2010年1月にロシアの強豪CSKAモスクワへ移籍。即座にレギュラーの座を射止めると、翌月のチャンピオンズリーグでは、敵地に乗り込んだセビージャ戦で決勝点となる無回転FKを沈め、チームをロシア勢初の準々決勝へと導いた。

 2010年の南アフリカ・ワールドカップ本大会では本来の中盤ではなく、センターフォワードとして持ち前のキープ力、フィジカルの強さ、そして戦術的柔軟性を発揮。グループリーグのデンマーク戦では代名詞の無回転FKをたたき込むなど、期待にたがわない活躍で世界的地位を確固たるものとした。

 今シーズンは度重なるケガに泣かされているものの、リーグ戦ではチーム4位の7ゴール(※9得点のヴァグネル・ラヴは既に退団)を記録。限られた時間でも能力の高さを示す本田には、今夏のビッグクラブ移籍の噂も後を絶たない。

 ここからは、現地記者ゲオルギ・クディノフ氏の見解に触れよう。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


文=ゲオルギ・クディノフ、翻訳・構成=高山港
 

 ロシア生活への順応とケガに苦しめられてはいるが、スルツキ監督の本田に対する評価は獲得した当初から変わっていない。指揮官は本田の能力と将来について、次のように語っている。

「本田は最高のテクニックを備えた選手だ。ビッグクラブでも十分にやっていけるだけの強い精神力も持っている。高精度のラストパスに強烈なシュートと、近代サッカーの司令塔に求められる資質をすべて兼ね備えた選手。CSKAにとって、そしてロシアリーグにとって、彼のような選手はまさに財産だ。ただ、彼にとってロシアがプレミアリーグやセリエAへのステップボードに過ぎないということも理解している。適切なオファーが届くようなら、会長も本田の放出を考慮するだろう。いずれにせよ、本田にはビッグクラブでプレーするのがふさわしい。彼はプロとして非の打ち所がない男だ。練習には真剣に取り組むし、自分のキャリアについて明確なビジョンを持っている。能力の高さを既に証明している一方で、十分な伸びしろがあることも感じさせている。彼の今後について私には何とも言えないが、彼のようなプレーヤーを獲得できたのはラッキーだったとだけ言っておきたい」

 今シーズン終了後、本田は恐らくモスクワを去るだろう。ギネル会長の気持ちは、既に本田の放出で固まっているはずだ。もっとも、CSKAが彼を安く売り飛ばすとは考えにくい。財政が安定しているだけに、「何が何でも本田を売って現金を手にしたい」という発想を持っていないからだ。彼らは本田の移籍金を17億円前後に設定している。その額を支払うクラブが現れた時、初めてギネル会長は重い腰を上げるはずだ。最後に、ギネル会長の言葉を紹介してこのリポートを締めくくりたいと思う。

「今年1月、ラツィオとの間に本田の移籍を巡る交渉があったことは認める。隠しても仕方がないからね。CSKAの役員は全員が所属選手を愛している。彼がプロとしての生活に不満を抱かず、高いモチベーションを持ってプレーしてくれることを願っているんだ。だからこそ、所属選手にオファーがあれば交渉のテーブルに着く。我々は常に選手の利益を優先的に考えている。だから、選手にも我々の利益を考えてもらいたい。満足のいく契約を望んでいるのは選手だけではない。我々だって同じだ。残念ながら、ラツィオとの交渉は我々が利益を得られるようなものではなかった。ただ、彼は正真正銘のプロフェッショナルだ。シーズン終了までCSKAのためにベストを尽くしてくれることだろう。その先のことは分からない。もし今後、本田に正式なオファーがあり、本田自身も興味を示すようなら、交渉の席に着くつもりだ」

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