日本代表のアジアカップ優勝で幕を開けた2011年も間もなく終了。東日本大震災に原発事故……空前の大災害に見舞われた2011年だったが、なでしこジャパンのワールドカップ優勝、海外組の活躍、そしてチャリティーマッチに代表される日本サッカー界の復興への取り組みなど、『サッカーの力』が日本に少なからずエネルギーを与えたことも事実だと思う。
今年1年のコラムの抜粋から、2011年の『サッカーの力』を振り返ってみよう。
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【1月】宮市亮がアーセナルに入団。日本代表が4度目のアジアカップ制覇を果たす。
■アーセナル入りした宮市亮は、03-04シーズンを超える新たな伝説の一部となれるか(2011/01/08)
アーセナルと正式契約し、5日に渡英した中京大中京高3年のFW宮市亮。第89回全国高校サッカー選手権大会では惜しくも1回戦で姿を消したが、アーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督は「彼には世界中のクラブが注目する潜在能力がある」と宮市を高く評価。この逸材がイングランドでどのように成長していくのか、注目が集まる。(続きを読む)
■「アジアのバルセロナ」を勝利に導いた日本の「走る10番」香川とメッシの違い(2011/01/22)
「点が取れる10番を目指してやっていきたい。メッシみたいに」。敵将ブルーノ・メツに「アジアのバルセロナ」と評された日本は、リオネル・メッシのような10番を目指すという香川真司の全得点に絡む活躍で4大会連続のベスト4進出を決めた。(続きを読む)
■日本がアジアカップで得たものの意味は9月開幕のワールドカップ予選で明らかになる(2011/01/30)
4度目のアジア制覇から5時間が経っても、決勝戦を語るためにふさわしい言葉がすぐには思い浮かばない。劇的という言葉ではありきたりだ。ドラマティックと言い換えても物足りなさは募る。壮絶なサバイバルという表現も、いまひとつしっくりこない。執念、闘 志、気迫といったものが結果に結びついたのは確かだが、延長戦にまでもつれている。メンタルだけで片付けられるほど簡単なゲームではなかった。(続きを読む)
【2月】インテルへのレンタル移籍が決まった長友、オランダでのレンタル修行をスタートさせた宮市が注目を集める。
■インテルへの完全移籍に向けて、長友は600万ユーロの価値を証明しなければならない(2011/02/13)
今シーズン開幕前の移籍市場で、インテルはほぼ静観を貫いた。「勝っているチームは動かさない」という鉄則を守ったと見ることもできるし、イタリアのクラブで史上初の3冠を達成した選手たちに敬意を表したと見ることもできる。(続きを読む)
■宮市亮インタビュー「サッカーを楽しみたい、決してあきらめたくない(2011/02/18)
今冬、名門アーセナルと5年契約を結んだことで一躍、注目を集めた宮市亮。しかし、本人は「目指すところが100だとすると、まだ10にも到達していない」と冷静に語る。驚異的なスピードとキレのあるドリブル突破を持ち味とする次世代のスター候補生は、いかに現代のスタイルを築いたのか。そして彼の目指す未来像とはいかなるものなのか──。(続きを読む)
【3月】3月11日の東日本大震災。サッカー界から多くのエールが届く。
■イタリア初ゴールの長友、“お辞儀パフォーマンス”に凝縮された「感謝の心」(2011/03/07)
「みんながボールを集めてくれた。僕に『点を取れよ』という感じで」。イタリアでの、うれしい初ゴール。3月6日のジェノア戦で、日本人選手として7人目のセリエA得点者となった長友佑都は、試合後のミックスゾーンでチームメートへの感謝を口にした。(続きを読む)
■サッカー界から続々と届く日本へのエール、「君はひとりぼっちじゃない」(2011/03/12)
3月11日、日本を襲った国内観測史上最大の大型地震。驚き、恐怖、疲労、落胆、そして悲しみに暮れる日本に向け、サッカー界からの“力強いエール”が続々と届いている。(続きを読む)
■日本のために再び動き始めた中田英寿。「中田にしかできないこと」は少なくない(2011/03/24)
中田英寿は、やはり「有言実行の男」だ。今回の震災を受け、「僕だからこそできることが何かあると思う」という言葉を残していた中田が、日本の復興に向けて本格的に動き出した。舞台はシンガポール。中田自らが代表を務めるTAKE ACTIONチームを誘致してのチャリティーマッチが4月2日に開催される。(続きを読む)
■サッカー史に刻まれる「3.29」の大一番、日本のために戦う“戦士”の声を胸に刻む(2011/03/29)
3月29日、この日は日本のサッカー史に長く刻まれる特別な一日となるだろう。未曾有の震災により甚大なダメージを受けた日本。愛すべき“母国”にエネルギーを与えるため、日本を代表する名手たちが大阪のピッチに降り立つ。(続きを読む)
【4月~5月】日本の若手が海外で活躍。バルサが圧倒的な強さでチャンピオンズリーグを制する。
■オランダを席巻する“リオジーニョ”、宮市亮の才能は「世界中のクラブを魅了できる」(2011/04/19)
ほんの数カ月前まで高校のサッカー部でプレーしていた日本人が、オランダの名門クラブで脚光を浴びる。まるで“おとぎ話”のようだが、宮市亮のサクセスストーリーは紛れもない“実話”だ。(続きを読む)
■宇佐美、乾に欧州が関心。レオナルドとクロートが語る「日本人選手の価値」とは(2011/05/06)
宇佐美貴史にブレーメンが、乾貴士にパルマが興味を示しているとイタリアメディアが報道。夏の移籍市場に向けて、まだまだ“飛ばし記事”が横行する時期とはいえ、ドルトムントの香川真司、インテルの長友佑都、シャルケの内田篤人らの活躍が日本人プレーヤーの価値を飛躍的に向上させていることは間違いない。(続きを読む)
■6選手のそろい踏みで幕を閉じたブンデス、現地誌採点付き日本人選手のシーズン通信簿(2011/05/15)
2010−11シーズンのブンデスリーガが幕を閉じた。香川真司が109日ぶりの実戦復帰を果たし、長谷部誠がフル出場でチームの1部残留に貢献し、岡崎慎司が盟主バイエルンからブンデス2点目となるゴールを決め、内田篤人と槙野智章がマッチアップし、矢野貴章が6試合ぶりの出場を果たしたブンデス最終節。6人の日本人選手が初めてそろい踏みとなる形で、ブンデスリーガは今シーズンを終了した。(続きを読む)
■長友と内田を抑え、香川がトップに。ファンが選ぶ「海外で最も活躍した日本人選手」(2011/05/21)
欧州主要リーグの王者も決定。南アフリカ・ワールドカップ後に幕を開けた2010−11シーズンも間もなく幕を閉じる。ドルトムントのブンデスリーガ優勝に貢献した香川真司、インテルという世界有数のビッグクラブで存在感を示す長友佑都、チャンピオンズリーグのベスト4を経験したシャルケの内田篤人など、欧州という舞台において、今シーズンは日本人選手の活躍が顕著な1年でもあった。(続きを読む)
■“神の子”メッシに翻弄された“赤い悪魔”、バルセロナを破る方法は一つしかない(2011/05/29)
「完敗だ。それ以外に形容の方法がないほどの完敗だった。もっとやれると思っていたが、相手の力量が上だったということ。至ってシンプルなことだ」 試合後にファーガソンも認めたとおり、両者の実力差は歴然だった。ホームとも呼べる聖地ウェンブリーでの大一番で、マンチェスター・ユナイテッドはバルセロナに完敗を喫した。(続きを読む)
■中田英寿以来のタイトル獲得で日本に凱旋、長友佑都のインテル全試合採点付き通信簿(2011/05/31)
5月29日、長友佑都のイタリアでの1年目はコッパ・イタリア優勝で幕を閉じた。2000−01シーズンにローマでスクデットを獲得した中田英寿が、翌シーズンにパルマでコッパ・イタリア優勝を成し遂げて以来となる日本人選手のイタリアでのタイトル獲得。昨夏、長友がチェゼーナへの入団を果たしたとき、どれだけの人間がここまでのサクセスストーリーを思い描いただろうか。(続きを読む)
【6月~7月】なでしこジャパンが世界王者に。日本にワールドカップ・トロフィーをもたらす。
■日本人所属クラブにタイトルの芽を摘まれたバイエルンが宇佐美の獲得に乗り出す訳(2011/06/03)
ドイツの盟主バイエルンにとって、2010-11シーズンの結果は屈辱でしかない。ドルトムントに独走を許し、リーグ戦は3位で終了。さらにチャンピオンズリーグでは、昨シーズンの決勝の再戦となったインテルとの対決に敗れ、ベスト16で大会を去ることに。そして、ドイツカップはシャルケの軍門に下り、準決勝で敗退した。(続きを読む)
■なでしこジャパンが白星発進、女子サッカー界の「バルセロナ」が世界の頂点を目指す(2011/06/28)
ニュージーランド戦のピッチに“バルセロナ”の姿はなかった。前半6分に永里優季が先制点をマークしたが、わずか6分後に失点。鮮やか過ぎた先制点のシーンが脳裏に残ったのか、「裏を狙おう」という意識が先行し、パスワークで相手を崩す従来の持ち味を発揮する場面は少なかった。(続きを読む)
■日本が世界の頂点に立った日。苦しみを乗り越え、ドイツに咲いた満開の“なでしこ”(2011/07/18)
「信じられないです。最後まであきらめずに戦った結果。最後まで走り続けた。全力を出し切りました。金メダルを持って帰ります」 大会MVPと得点王を獲得した澤穂希の言葉どおり、最後まであきらめず、最後まで走り続け、全力を出し切った末に、なでしこジャパンは世界一の栄冠をつかんだ。(続きを読む)
【8月】松田直樹さんの訃報。日本サッカー界を大きな悲しみが襲う。
■「マジでサッカーが好き」な“最高のサッカー小僧”、松田直樹に出会えた幸せ(2011/08/04)
耳を疑った。「松田直樹が練習中に倒れ、心肺停止の状態で松本市内の病院に搬送」の一報が届いたのは、8月2日のことだ。誰もが願った。「松田よ、戻ってこい」と。(続きを読む)
■最多の日本人選手が在籍するブンデスの開幕節で、香川真司が見せつけた“格の違い”(2011/08/08)
18チーム中、実に9チームに日本人選手が在籍するドイツ1部リーグ。8月5日の新シーズン開幕戦で、“格の違い”を見せつけたのは香川真司だった。(続きを読む)
■日本代表が韓国戦で見せた“余裕”。得点に絡んだ香川、清武、本田の言葉を振り返る(2011/08/11)
北の大地が熱狂の渦に包まれた。U-22代表の勝利を受けて迎えた韓国との一戦で、日本代表が歴史的な勝利を収めた。(続きを読む)
■セスクを加えた絶対王者。最強バルセロナ撃破は可能なのか(2011/08/15)
ヨーロッパサッカー界の絶対王者として君臨するバルセロナ。クラブの伝統に基づく華麗なパスサッカーは他の追随を許さないほどの完成度を誇り、しかも現代最高の名手、リオネル・メッシを擁する。極論だが、セスク・ファブレガスでもスタメンの座を約束されないクラブなど、世界中を見渡してもバルサ以外に存在しないのではないだろうか。(続きを読む)
【9月】ユングベリが清水に加入。久々の“大物”がJの舞台に降り立つ。
■フレドリック・ユングベリの履歴書(2011/09/05)
清水エスパルスへの加入が決まったフレドリック・ユングベリ。強じんなフィジカルと豊富な運動量、そして、圧倒的な加速力を武器に「欧州最高峰のアタッカー」という地位を確立した彼が最も強い輝きを放ったのはアーセナル時代だ。(続きを読む)
■イタリアが見た長友佑都、クラブ初の日本人選手がインテルにもたらしたもの(2011/09/12)
選手会のストライキによる開幕節の延期もプラスに作用したと言えるのかもしれない。7月末のセルティックとのプレシーズンマッチで右肩を負傷した長友佑都にとって、けがを癒すためのの時間は長ければ長いほど望ましかったからだ。(続きを読む)
■香川真司が「ゴールを奪えない理由」と「さらなる飛躍を果たす可能性」とは?(2011/09/14)
開幕4試合で3ゴールを奪い、ドルトムントがタイトルレースを独走するきっかけを作った昨シーズンと比べれば、今シーズン、いまだノーゴールの香川真司はインパクトに欠ける。(続きを読む)
■ポリバレントな“パスサッカーの申し子”、セスクがバルセロナの攻撃を進化させる(2011/09/17)
数年にわたるラブコールが実り、晴れてロンドンから故郷バルセロナへの帰還を果たしたセスク・ファブレガス、自らの存在価値を証明するように“新天地の古巣”で見事なパフォーマンスを披露している。(続きを読む)
【10月】日本代表がタジキスタン戦で大勝。海外ではデル・ピエロの今季限りでのユーヴェ退団が報じられる。
■成長の歩みを止めてはいけない。タジキスタン戦後の指揮官と選手の言葉を振り返る(2011/10/12)
大入りの長居スタジアムが歓喜に沸いた。3試合続けて1得点止まりのチームを、「得点力不足」という聞き慣れたフレーズが覆い始めた中で迎えたタジキスタン戦。日本はゴールネットを揺らし続けた。(続きを読む)
■メッシとルーニー、現代サッカーが生んだ2人の“ニュータイプ”(2011/10/14)
当然の話だが、対象に近づけば近づくほど全体を見渡すことは難しくなる。昨年、インテルが慎重かつ抜け目のないサッカーでチャンピオンズリーグを制した後、悲劇的なほど冒険心に欠けたワールドカップを経て、我々は「リスクを回避するサッカー」の時代が幕を開けたと考えた。(続きを読む)
■白と黒のラストシーズン。アレッサンドロ・デル・ピエロ「今を全力で生きる」(2011/10/19)
サッカーの神様はアレッサンドロ・デル・ピエロに数多くの試練を与えてきた。選手生命を脅かすほどの大けが、自分を認めない指揮官、さらにはセリエB降格……。しかし、彼はその試練をすべて乗り越えてきた。それだけでない。試練を乗り越える過程で選手として、そして人間としての“質”を高めることを繰り返してきた。もっとも、その行動指針は極めてシンプルだ。今を全力で生きる―。彼はそれだけを考えている。(続きを読む)
■神童か悪童か、なぜいつも“彼”なのか。天才マリオ・バロテッリの履歴書(2011/10/25)
マリオ・バロテッリが「神童」と呼ばれるのにはいくつかの理由がある。わずか15歳でプロデビューを飾った。17歳でセリエA初ゴールを決めた時には既にミドル級のボクサー並みの体格をしていた。インテルのクラブ史上、最年少でチャンピオンズリーグでの得点を記録した(2008年11月のアノルトシス戦)。マンチェスター・シティでのデビュー戦でゴールを決めた。イタリア紙『トゥットスポルト』が選出する21歳以下のベストプレーヤーに輝いた。イタリアのスタジアムで歌われる人種差別的なチャントにも屈しなかった……。(続きを読む)
【11月】快進撃を続けるバルサとマンC。ファーガソンがマンUでの指揮官25周年を迎える。
■止まらないメッシとバルサ。『ストップ・ザ・バルセロナ』は不可能なミッションなのか(2011/11/02)
ボールを失わないこと。バルセロナの戦術は「ボールを持っている限りは常に有利に試合を進められる」というシンプルな哲学に基づいている。試合中、唯一の例外は、相手が前掛かりになり、敵陣内にスペースが広がったとき。この場合、バルサは迷うことなく攻撃を加速させ、一気にゴール前まで攻め込む。(続きを読む)
■止まらないシティの快進撃。マンチェスターの“脇役”が“主役”に躍り出るとき(2011/11/04)
マンチェスター・シティは長らく同じ町のライバルの影に埋もれてきた。最後にリーグ優勝した1968年でさえ、マンチェスター・ユナイテッドが英国勢初のチャンピオンズカップ(現リーグ)制覇という栄光を勝ち取ったことにより、“脇役”へと追いやられた歴史がある。(続きを読む)
■カントナ、ベッカム、C・ロナウド。伝統の「7番」がつづるファーガソンへの賛辞(2011/11/09)
「まるで“おとぎ話”のような時間だった。本当にファンタスティックな呪文をかけられているようだったよ。多くの偉大なプレーヤーに囲まれて、私は心から幸せだ」 11月6日にマンチェスター・ユナイテッドでの指揮官25周年を迎えたサー・アレックス・ファーガソンは、25年の歩みをそう振り返った。(続きを読む)
■東京にJ1クラブが戻る2012年、『強くなってJ1に』がFC東京の合い言葉だった(2011/11/20)
11月19日、FC東京が鳥取を5−1で下し、2節を残した状態で1年でのJ1復帰を決めた。そして翌20日、サガン鳥栖がギラヴァンツ北九州に敗れたことで、FC東京のJ2優勝が決定した。(続きを読む)
【12月】バルサが世界最強クラブに。被災地・仙台でチャリティーマッチが開催される。
■世界最強クラブとして迎える2012年、王者バルセロナの補強戦略を読み解く(2011/12/19)
南米王者サントスを圧倒し、2度目のクラブ世界一に輝いたバルセロナ。司令塔シャビが「歴史的な勝利」と表現した新たな栄冠も、振り返れば、このクラブの栄光は、クライフが監督に就任した1998年からずっと一貫してきたポリシーを起源とする。(続きを読む)
■小雪の舞う仙台で証明された『サッカーの力』、慈善試合に参加した選手たちの思い(2011/12/24)
時折小雪の舞うユアテックスタジアム仙台が満開の笑顔につつまれた。東日本大震災復興への貢献を目的とした日本プロサッカー選手会(JPFA)主催の『クリスマス・チャリティーサッカー2011』が23日、ユアテックスタジアム仙台で開催。東北ドリームスとJAPANスターズの選手たちはプレーとパフォーマンスで会場を盛り上げ、被災地のファンに一足早い“素敵なクリスマスプレゼント”を届けた。(続きを読む)
様々な意味で、日本の『絆』が試された2011年。少なくとも“微力”ではない『サッカーの力』は、2012年へと紡がれていく。
【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(@SoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではCover&Cover Interviewページを担当。