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イタリア代表MFピルロがW杯に意気込み「4年前に学んだことを生かさなければ」

2014.06.14

[ワールドサッカーキング1407号掲載]

アンドレア・ピルロにとって3度目の大舞台。1度目で頂点を極め、2度目は早期敗退の屈辱を味わった。そして3度目は、自身の代表キャリアの最後の舞台となる。慣れ親しんだアッズーリでの“ラストダンス”が今、始まる。
ピルロ
インタビュー=グイド・ヴァチャーゴ
翻訳=高山 港
写真=ゲッティ イメージズ

インモービレはスキラッチとダブる

――もう間もなくブラジル・ワールドカップ(W杯)が開幕する。現時点でのイタリア代表の状態をどう見ている?

ピルロ いい感じに仕上がっていると思う。モチベーションも上がっているし、チームとして団結している。最高の仕事ができる体制が整っているよ。今回のイタリアは本命視されていないけど、実際これまでのW杯でイタリアが本命視されたことなんてほとんどない。でも、僕らは何度もW杯を手にしている。だから(ジャンルイージ)ブッフォンはこう言うのさ。「イタリアが本命に挙げられることはない。だが、誰もイタリアとは対戦したくないはずだ」とね。

――今大会の本命を挙げろと言われたらどこを選ぶ?

ピルロ 自国開催というモチベーションは無視できないだろうね。地元ファンの後押しを受けたブラジルが上位に進出する可能性は高いよ。ドイツとアルゼンチンも要注意だし、フランスにも十分な注意が必要だ。今回のフランスはほとんどノーマークだけど、彼らは相当なところまでいくと踏んでいる。

――フランスには君のチームメートのポール・ポグバがいる。彼の力でフランスが大躍進するとでも言いたいのかい?

ピルロ 現代サッカーにおいて一人でチームを勝利に導ける選手なんて存在しない。1986年大会の(ディエゴ)マラドーナのようなケースはあり得ないんだ。ただ、ポグバがタレントぞろいのフランスを象徴する選手の一人であることは確かだよ。この2年間、僕は彼の成長を目の当たりにしてきた。近い将来、世界最高のプレーヤーの一人になるだけの資質を持ち合わせている。

――ポグバに何らかのアドバイスをしたのかな?

ピルロ 何度となく話をしているけど、彼にはアドバイスなんて必要ない。若いけど既に成熟しているからね。彼がそういう人間だってことはすぐに分かった。ゴールを量産し始めた時も、決して有頂天になることはなかったからね。ポグバはいつだって冷静なんだ。チームメートへのリスペクトも忘れない。それこそ、正真正銘のカンピオーネであることの証だと思う。

――ポグバのような期待の選手はアッズーリにもいる?

ピルロ (マルコ)ヴェラッティや(チーロ)インモービレがそうあってほしいね。彼らのような若い選手が、W杯で決定的な仕事をしてくれると期待している。

――ヴェラッティは君の後継者だと言えるだろうか?

ピルロ その質問はこれまで何千回とされたよ(笑)。ただ、僕には何とも言えない。そもそも彼と僕は若干プレースタイルが違うような気がするしね。ただ、代表でレジスタを担うだけの資質は備えているし、可能性は十分にあるとだけ言っておくよ。

――インモービレは最高の形で今シーズンを終えた。ブラジルでアッズーリをけん引する存在になり得るだろうか?

ピルロ インモービレは90年大会の(サルヴァトーレ)スキラッチとダブるよね。スキラッチはW杯の前年まで全くの無名選手だった。それが初のセリエA挑戦でゴールを量産してアッズーリに招集され、W杯の得点王になったんだ。今シーズンのインモービレの活躍は、何かあの時のサクセスストーリーを予感させる。調子が良い時は何でも起こり得るものだよ。そういえば、ロッカールームで誰かがこんなジョークを言っていた。「チーロ、今のお前なら、くしゃみしただけでボールはゴールに吸い込まれていくよ!」ってね。そういうジョークが飛び出すぐらい、今のチーロは乗りに乗っているんだ。

4年前に学んだことを復習する必要がある

――グループリーグでのイタリアの対戦国をどう見ている?

ピルロ イングランドは非常に危険なチームだね。マナウスの熱帯気候の中で戦う最初のゲームという点も考慮しなくちゃいけない。強い相手と難しい気候条件で戦う……厳しい試合になることは覚悟しているよ。

――イングランド戦ではスティーヴン・ジェラードやフランク・ランパードと対戦することになる。同世代のライバルとのマッチアップだね。

ピルロ ライバルか。まあ、3人とも歳を取り過ぎているけどね(笑)。冗談はさておき、イングランドは本当に強力なチームに仕上がっているようだ。テクニックだけでなく、彼らの旺盛な闘争心には要注意だよ。2年前のユーロでは準々決勝で対戦したけど、本当に厳しい試合だった。幸いにもPK戦で勝利をモノにできたけど、大苦戦を強いられたという印象がある。

――君はその試合のPK戦でチップキックを決めて、イタリアサッカー界の歴史に名前を残すことになった。

ピルロ 僕のキックは決して伝説と呼べるようなものじゃないよ。ユーロ2000のオランダ戦で(フランチェスコ)トッティが決めたクッキアイオ(チップキック)とは別物だ。あの時、トッティはPKスポットに向かう前に「俺はクッキアイオで決める」と宣言していたんだよ。そして、宣言どおりに決めて見せたんだ。一方の僕は、蹴る直前にクッキアイオを選択した。蹴ろうとした瞬間、(ジョー)ハートが飛ぶのが見えて、とっさにクッキアイオを蹴っただけなんだ。あれはメディアが騒ぎすぎだね。特に英国のメディアはすごかった。あの時はクッキアイオの名手のように扱われてしまったけど、僕のキックはトッティのそれには遠く及ばないよ。

――イングランドのベンチには、君がインテルにいた頃、4カ月だけチームを指揮したロイ・ホジソンが座っている。

ピルロ あのシーズンのインテルは1年間で3度も監督が代わるひどいシーズンだった。でも、僕はホジソンに感謝していることがある。彼は僕をレジスタとして評価してくれた最初の監督だったんだ。それまでトップ下でプレーしていた僕に、数メートル背後でプレーするようアドバイスをくれたんだよ。

――同じくグループリーグの対戦相手、コスタリカについて何か知っていることは?

ピルロ 既に(チェーザレ)プランデッリ監督から話は聞いている。まだ熟知しているというレベルじゃないけどね。イタリア代表では通常、ゲームの2、3日前に対戦相手についてのレクチャーが行われる。代表のスタッフはすごく優秀だから、向こう数カ月間で組まれているすべての対戦相手をチェックしているはずだよ。個々の選手の特徴、長所や短所、すべてを報告してくれる。

――コスタリカ戦は勝ち点3を期待できるのでは?

ピルロ 多くの人が「コスタリカ戦は大丈夫だろう」と思っているようだけど、W杯では至る所に“バナナの皮”が落ちているということを念頭に置かなくてはいけない。W杯で楽に勝てる相手なんて存在しない。実績のない国でも、危険な相手になる可能性を秘めているんだ。南アフリカ大会でのニュージーランド戦を覚えているだろ? あの試合はメディアを含め、誰もが「イタリアは何点取るのか?」というところに注目していた。ところが、試合は引き分けという予想もしなかった結果に終わった。そして、あそこで勝ち点3を取れなかったことが、グループリーグ敗退の原因になったんだよ。W杯に弱小国は存在しない。あの時に学んだことをもう一度復習する必要がある。

W杯に臨むイタリア代表について語ったピルロが、決勝トーナメントで対戦する可能性のあるグループCの4カ国について言及。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング1407号でチェック!

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