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コスタリカ戦は「パッとしない」試合が理想!フモフモ編集長の「煙幕を張る7つのポイント」

2014.06.02

during the Bundesliga Relegation second leg match between Fortuna Duesseldorf and Hertha BSC Berlin at Esprit-Arena on May 15, 2012 in Duesseldorf, Germany.

144537580「いい煙幕だな!」「心も燃えてきますね!」

 本番前の3連戦、その2試合目・コスタリカ戦が迫ってきました。先のキプロス戦は「怪我なく」「ファンの声援を受け止める」ことが重要で、結果や内容はどうでもいい試合でした。次のザンビア戦は「勝って」「気分よく」終わりさえすれば、それでいい試合。いずれもミッションは単純です。しかし、コスタリカ戦は非常に神経を使う試合となるでしょう。

 結論から言えば、僕はこの試合、特に何も起きないつまらない試合であればあるほど、成功であると考えています。理想は0-0の引き分け。ドーンと盛り上がることもできず、有識者が鬼の首を獲ったかのように舌鋒鋭く批判できるほどでもない「パッとしない」試合。それが理想です。

 それは何故か。

 コスタリカ戦は調整の途上ではありますが、本番までまだ10日以上を残す段階。絶好調になるにはまだ早すぎます。2006年大会は同じ時期にドイツとの親善試合を行ない、高原直泰の素晴らしいゴールで一時は2-0とリードするなど、素晴らしい強さを見せてしまいました。そこでコンディションのピークを迎えてしまったのです。

 そして同時に、素晴らしい試合をしたことで無駄に目立ってしまいました。ドイツ大会の直前に優勝候補・ドイツ相手に格下がナイスファイトを見せれば、そりゃ嫌でも目立ってしまうというもの。逆に、4年前の南アフリカ大会などは、本番前に連戦連敗したことで岡田JAPANは無警戒のまま本番に臨むことができ、見事にベスト16進出を果たしました。悪目立ちは、本番前に対戦相手の警戒心を煽るだけなのです。

「上げすぎない」&「目立ちすぎない」。

 この時期の試合は、忍者のように粛々と「パッとしない」一戦をこなしたいのです。

 その意味で、このコスタリカという対戦相手は絶妙です。先頃ゴールドマン・サックス・グループがワールドカップ優勝国予想を発表した際に、「優勝確率0.0%」と予想された国が6つあったのですが、日本とコスタリカは仲良く0.0%に含まれていたのです。(※ほかにカメルーン、ホンジュラス、ガーナ、アルジェリア)

 そんな前評判なら、ワールドカップ出場国同士の対戦であっても、世界的には注目されないでしょう。また、どちらかが勝ったとしても「台風の目」的な話題にもならず、勝った方も気持ちよくなったりはしない。有名強豪国と対戦すればMAXハイテンションまで上がってしまいそうな日本の「意識高い」系の選手も、コスタリカ相手でピークまで調子を上げたりはしないはず。「上げすぎない」&「目立ちすぎない」にうってつけです。

 しかも、忘れてしまいがちですが、日本がグループステージを突破した場合、D組のコスタリカとベスト16で対戦する可能性があるのです。よしんば対戦しなかったとしても、肌で感じたコスタリカという「モノサシ」のD組での戦いぶりは、日本がベスト16に進出した際の貴重な情報となるでしょう。誰が呼んできたのかは知りませんが、コスタリカという対戦相手、まったく文句がないほどに絶妙です。

<理想的にパッとしないコスタリカ戦・7つのポイント>

●(1)結果はスコアレスドローがベスト

相手はワールドカップ出場国。うっかり3-0とかで粉砕してしまったら、さすがに悪目立ちしてしまう。実際そんなに調子がよかったらピークが先に来ている感じで怖い。かと言って、負ければ負けたで「コスタリカに負けるようなら3戦全敗じゃないカナ」と有識者が波風を立てそう。その点、スコアレスドローなら「守備の不安」を煽られることもなく、「ワールドカップ出場国を相手に引き分けで勝点1」という及第点が取れるので理想的。得点はケチャップみたいなもので、出るときはドバドバ出ます。

●(2)内容は「峰打ち」と「寸止め」で構成

これはあくまでも練習であり、本番前に気持ちよくなっても仕方ありません。対戦相手の分析班も当然この試合を録画して見ているわけで、特別に準備したセットプレーなどは見せられませんし、戦術的な秘策も隠しておきたい。演武のように、基本の動きを丁寧に確認しながら、最後のキメは本番にとっておくべき。得点にはつながらない程度の「峰打ち攻撃」や、高い位置でズバッと奪ってしまわない程度の「寸止め守備」が理想的。「取れる」という手応えだけを密かに胸の内で感じましょう。

●(3)謎の男・大久保嘉人のサプライズを隠しておく

ほとんどの選手がネタバレしており、過去のビデオでいくらでも分析できてしまう日本代表。その中で、「コイツ何するんだ?」と対戦相手の分析班を悩ませるであろう唯一の「謎」が大久保嘉人。1トップ要員の2番手と思い込ませておきつつ、本番では別の位置にスタメンで放り込んでやるなどして、相手をサプライズさせたい。どこにどう使うつもりか、謎解きは本番でのお楽しみとするのが理想的。コートジボワールよ、ギリシャよ、コロンビアよ、川崎フロンターレのビデオを一生懸命Youtubeで探すがよい。

●(4)本田・香川はまだ眠ったままで

相手がもっとも警戒すべき存在となる本田圭佑&香川真司。しかし、この2人はそろって不遇のシーズンを過ごしました。「ひょっとしたら大したことないんじゃないのか」「よかった年がまぐれだったのでは」「イタリアのエスプレッソ飲んでばっかり」と警戒を緩めてくれたらシメたもの。隠しようもないほど調子がいいのならバレても仕方ないですが、なるべくなら少し疑っていてくれたほうがありがたい。警戒が緩んだ状態で本番に臨めたら理想的。

●(5)怪我をしない、させない

怪我をしないことは当然として、相手に怪我をさせないことも重要。2010年大会直前の強化試合、コートジボワールのドログバさんと日本の闘莉王が衝突し、右腕を骨折させたことはご記憶でしょう。4年を経てのこのバツの悪さ。しかも張本人不在。向こうだって絶対覚えてますよ。「その節はどうも…」と恐縮しながら初戦を迎えるこの気持ち、もう勘弁です。コスタリカは今回で4度目のワールドカップ出場を数える国。今大会だけでなく、将来的にも対戦の可能性があります。お互い恨みっこナシで終わるのが理想的。

●(6)交代に次ぐ交代で全員ひととおり使う

第3GKまで使えるかはともかく、この3連戦の中で全選手を最低1回ずつは出場させることも大切でしょう。実戦での肩慣らしという意味はもちろんですが、誰が出て、誰がほぼほぼ出ないのかを相手に悟られないようにするのです。キプロス戦を踏まえて日本のファンの間でも「長谷部誠と山口蛍」「吉田麻也と森重真人」のどちらがスタメンか、意見が割れていますよね。この混乱をさまざまなポジションで引き起こし、対戦相手の分析班を戸惑わせるのです。そしてこれはチームの内政面…「俺は試合に出られないんだ」とベンチで腐る選手が出ることを予防する効果もあります。敵を欺くにはまず味方から。日本のファンでもスタメンを読めないくらい、均等に起用するのが理想的。

●(7)最終的に翌日の記事がコスタリカ中心になるように

世界の新聞がこの試合を採り上げたとき、「コスタリカ順調な仕上がり」「死のグループのカギを握るコスタリカ」「コスタリカ堅守速攻」などと向こうが記事の中心になるようにしたい。相手方に対するイイコメントをバラまいて、日本の話題から目を逸らしたいところです。イギリス・イタリアの新聞などはコスタリカのことを気にしているでしょうし、そっちに思う存分注目してもらうのが理想的。「イングランドもコスタリカの速攻には手を焼くだろうね(サウサンプトンDF)」「バロテッリひとりで崩せるほど甘い相手ではない(ACミランMF)」「フォルランに気をつけろと言っておきます(セレッソ大阪FW)」などなど、あらかじめ考えておきたいものです。

 下馬評を見ても、日本のいるC組は混戦でどの国にもチャンスがあると言われています。過去ベスト16に進んだことがないコートジボワールとギリシャ、前評判が高くても何やかんやで負けるコロンビア。絶対的本命不在のグループです。しかし、日本国内ですら「コロンビアには負ける前提で、その前の2戦で突破を決めておきたい」という意見が散見されます。戦う前から勝手に勝負付けをして、勝手に心理的に追い込まれているのです。

 この3ヶ国との対戦なら、不用意なミスでの失点を防ぎ、3戦とも引き分けるつもりで戦いながら、どこかで1点取って1勝すればいいのです。コートジボワールと引き分け、ギリシャと引き分け、コロンビアに勝ちでも全然いいのです。「ギリシャに勝てなかったら絶望」とか勝手に決めるのを焦りを生むだけ。

 だからこそ、逆に対戦相手には「日本には勝たないといけないぞ」と思わせたい。前半0-0で終えただけで相手が焦り出すくらい、「日本戦は勝点3を取りたい試合」と意識させたい。勝手に日本を格下と見なし、勝手に勝点3を計算して、勝手に焦って、勝手に前がかりになって、勝手に守備が手薄になって、勝手にカウンターの餌食になる。

 日本代表はどんな相手もそうそう見下すことはないでしょうが、対戦相手にはそういう驕った国があるかもしれない。その驕りを引き出すための煙幕としてコスタリカ戦を活用したいもの。「パッとしない」試合で、本当の日本の強さを隠す。「煙幕」に包まれた試合、期待したいものですね。

文・フモフモ編集長 写真・Getty Images

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