2014.04.19

[GunnersStyle]アーセナル・アカデミーの最新トレンド

[ワールドサッカーキング1405号掲載]

これまでアーセナルの若手選手の国籍と言えば、指揮官の母国フランスや、有望株の台頭が著しい自国のイングランドが主流だった。だが、ここ数年、ドイツ国籍の選手たちがにわかに注目を集めている。
Arsenal Training Session
文=藤井重隆 Text by Shigetaka FUJII
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

増加の一途をたどるドイツ国籍選手

 アーセン・ヴェンゲルが1996年に監督に就任して以来、アーセナルは世界最高峰と称されるスカウト網を各地に敷いて、数々の名選手を輩出してきた。ヴェンゲルは国籍に関係なく一流の若手選手を補強することで知られるが、中でも自身のルーツを生かしたフランス人選手の補強は、過去の事例を挙げれば切りがない。アーセナルで100試合以上に出場したフランス人選手は実に13人にも上り、今シーズンもバカリ・サニャ、マチュー・フラミニ、オリヴィエ・ジルーなど、トップチームに最多6人のフランス人選手が登録されている。ヴェンゲル政権下における国籍の支柱はいまだ揺るがない。

 もっとも、現在のチームを国籍別で見てみると、イングランド人選手と並んでドイツ人選手が5人も在籍している。昨シーズンまでにアーセナルで100試合以上出場したドイツ人は、2004年の無敗優勝メンバーであるGKのイェンス・レーマンのみだった。しかし、ヴェンゲルは2011年にペア・メルテザッカー、2012年にルーカス・ポドルスキ、そして2013年にはメズート・エジルと、立て続けに即戦力のドイツ代表選手を補強している。

 また、ユース年代の若手選手にも目を向けると、2011年にシュトゥットガルトから引き抜いた18歳のセルジュ・ナブリ、アメリカで発掘された17歳のゲディオン・ゼラレムがいる。更に、まだ正式にはトップチームに昇格していないものの、2012年にドルトムントから加入した21歳のトーマス・アイスフェルト、ヘルタ・ベルリンから獲得した19歳のレアンダー・ズィーマンもドイツ国籍の選手だ。

指揮官が語るドイツ人重視の必然性

 ドイツとの国境に近いフランスのアルザス地方で生まれ育ったヴェンゲルは、1979年にストラスブールでリーグ優勝を果たす以前、同地方の下部リーグのクラブを転々としていた。2月に行われたチャンピオンズリーグの決勝トーナメント、バイエルンとの一戦を前に、近年のドイツへの傾倒はそのルーツの影響だとヴェンゲル本人が明言している。

「私は質の高い選手を獲得しているだけだが、ドイツ人選手はイングランドに馴染みやすいという特徴がある。ドイツの人口は8000万人、質の高いアカデミーを持っている今のドイツは、フランスよりも多くのプロ選手を輩出しているかもしれない。ドイツではどんな小さな村にもサッカークラブが存在し、国民のほとんどがサッカーをしている。イングランドに最も似た国であり、サッカー文化が強く根づいた国だ。事実、ドイツ人選手はプレーに対する姿勢、技術、闘争心など、サッカーに必要とされるすべてを兼ね備えている。私がかつてアルザスに住んでいた時、毎週土曜はブンデスリーガの試合を欠かさず見ていた。ドイツ人がサッカーに生きる姿が好きだし、どんな村に行っても、みんなビール片手にサッカーの戦術や技術について語り合っている。フランスにはそういう根強い文化がない」

 ヴェンゲルは昨年10月のクラブ定例会見でも、ドイツ人選手に関して次のようにコメントしていた。「現在、一流選手の多くはドイツにいる。代表チームを見ても、彼らは2、3年前のスペインのようだ。彼らは突如として、マリオ・ゲッツェ、バスティアン・シュヴァインシュタイガー、トニ・クロース、ルーカス・ポドルスキ、メズート・エジルのような選手たちを有した。各ポジションにトッププレーヤーが2、3人はいる。ドイツ人選手が注目されるのも当たり前だ」

 昨夏の移籍市場でアーセナルがエジルの獲得にクラブ史上最高額となる4250万ポンド(約65億円)を投じた背景には、今後ドイツ人の若手選手をアカデミーに引き入れるための戦略が含まれていると、英メディアは報じた。現に昨夏の移籍市場が終了した直後、シャルケのMFユリアン・ドラクスラーがアーセナルへの移籍を示唆するコメントを発していた。「イングランドのチームは魅力的だし、アーセナルもその一つだよ。エジルやメルテザッカーとは時々アーセナルの話をするけど、彼らはいつもいい事ばかり教えてくれる。来夏に何が起こるか分からないけど、アーセナルは常に若手がいるし、魅力的なサッカーをする。大好きなチームだよ」

ドイツ人選手が注目される理由について語ったヴェンゲル監督。大器の予感が漂う3人のドイツ人有望株とは? 続きは、ワールドサッカーキング1405号でチェック!