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<インタビュー>カジヒデキさん「フットボールを好きになったきっかけは音楽でした」(前編)

2014.03.14

大のサッカーフリークとして知られるシンガーソングライターのカジヒデキさん。熱狂的なチェルシーファンでシーズンチケットを保有していたこともあり、2001年からスポーツ専門放送局J SPORTSのサッカープログラム『Foot!』のテーマソングを担当している。今回は、サッカーにはまった経緯やチェルシーファンになったきっかけなど、カジさんのファン歴を振り返るとともにチェルシーの魅力に迫る。

――カジさんはシーズンチケットを持っていたこともあるほど熱狂的なチェルシーサポーターで大のプレミア好きとして知られていますが、初めてイングランドのフットボールと出会ったのはいつ頃なんですか?

カジヒデキ 初めて生で観戦したのは、1998年の11月ですね。その頃、スウェーデンのマルメというところで3枚目のアルバムのレコーディングをしていて、その時に初めてJ SPORTSさんからマイケル・オーウェンの曲の依頼をいただいたんです。オーウェンが、ワンダーボーイとして頭角を現した頃ですね。それがプロデューサーの田口賢司さんとの初めての仕事でした。それで作った曲を持って田口さんとロンドンで落ち合って、ご褒美として土曜日にワージントンカップのチェルシー対シェフィールドウェンズディを観て、翌日にプレミアリーグのリヴァプール対ブラックバーンを観戦したんですよね。スタンフォード・ブリッジがまだ改装前で、土曜日にスタジアムに行くためにフルアム・ブロードウェイ駅を降りたら周りが砂埃が舞うようなすごく荒れてる感じがして、そこに警官が馬に乗って警備していたんですよ。これはすごいところにやってきたなと(笑)。まだフットボールを見る前の段階で、こんなにもドラマチックなのかって魅せられちゃったんですよね。それはすごく印象深かったです。

――そこからチェルシーを追いかけるようになったんですか?

カジヒデキ じつはそれから次にチェルシーを観に行ったのが2002年で少し間が空いてしまうんですね。その頃にはもうスタンフォード・ブリッジも改装されて綺麗になって、すっかり安全な感じになっていましたね。その時はナイトゲームでアストン・ヴィラ戦を観に行って、それがまたすごく良い印象でした。ゾラとかグジョンセンとかハッセルバインクがいた頃です。

――ラニエリ監督の時代ですね。

カジヒデキ そうですね。チェルシーはずっと優勝できていなくて2位とか3位くらいでくすぶっている頃で、またその感じがいいなと思って。そこからチェルシーにハマって、サポーターとして応援しようと思いましたね。もともと僕はブラーというバンドが好きで、ボーカルのデーモン・アルバーンが熱狂的なチェルシーのサポーターなんです。それでよくチェルシーのユニフォームを着て雑誌に載っていたりしたので、その影響で僕もずっとチェルシーが好きだったというのもあったんですよ。それでも90年代の終わり頃にアンリがプレミアに来て、アンリのスタイルとかすごく好きだったのでアーセナルいいなって思った時期もありましたね(笑)。でも、2002年のアストン・ヴィラ戦を観てからは完全にチェルシーにハマりました。

――フットボール自体にハマったきっかけもその頃でしたか?

カジヒデキ 大きくいえば、そうなのかもしれないですね。でもフットボール自体は90年代初め頃から好きではあったんです。僕はトラットリアというレーベルからCDを出していて、その時のスタッフの人たちがみんなフットボール好きだったんですよ。レーベルでチームとかも持っていたし。だから周りにすごく洗脳されたというか(笑)。

――そういう周りの影響も強かったんですね。

カジヒデキ でもフットボール自体は音楽から入ったんですよ。正直それまでまったくフットボールのことなんて知らなくて、小学生の頃は野球をやっていたタイプなんです。世代的にも野球人気が根強いころですからね。だから野球が好きだったし、フットボールはルールもわからないレベルでしたから。1991年頃にエルというレーベルをやっていたマイク・オールウェイという人がエキゾチカというレーベルを始めて、そのエキゾチカから「ベンド・イット」というフットボールのコンピレーションが出たんですね。それをコーネリアスの小山田くんにもらって聴いたらこんなに面白いものがあるのかと。その中にはマンチェスターユナイテッドの昔の応援歌とか、ブラジル代表の1960年代の曲とか時代も国もバラバラで、とにかくカッコ良い曲が沢山入っていたんです。サンバが入っていたり、ロックが入っていたり、色んなタイプの曲があってそれがすごくおしゃれな感じでした。そういうところからフットボールいいなって思うようになりましたね。

――その頃は日本国内でもJリーグが開幕して、日本代表の熱もどんどん上がっていた時期ですよね。

カジヒデキ だから、ちょうど良い時期にフットボールに出会えたなと思います。でもどっぷりと浸かり出したのはチェルシーと出会ってからですね。とくにモウリーニョとの出会いはすごく大きいですね。あんなにフットボールを面白くしてくれた監督はいないだろうというくらい、試合前後のインタビューやベンチの前での立ち姿だったり、一つひとつが面白い。それに2004-05シーズンは毎試合なにか事件があって、こんなにサポーターをドキドキわくわくさせて飽きさせない人はいないですよね。とにかくかっこいい。

――あれだけ絵になる監督はいないですね。

カジヒデキ ポルト時代にユナイテッドを倒した時に喜び方なんてすごかったですよね。ポルトがチャンピオンズリーグで優勝して、喜びもせずに首にかけられたメダルを外して帰ったのもすごく印象的でした。

――それからチェルシーの監督就任のニュースが流れましたね。

カジヒデキ あの直後に「モウリーニョのチェルシーに来るかもしれない」と報道されたくらいのタイミングで、ランパードとテリーのインタビューを見る機会があったんです。そこで彼らが最初は怖がっていたんですよ。やっぱり画面で見るモウリーニョは冷血なイメージがあったので。でも実際に監督に就任したらものすごく優しくて選手思いの監督なんですよね。ランパードは今でもモウリーニョのことを崇めているし、チームが本当にファミリーのようですからね。

――モウリーニョがチェルシーを離れた時はみんな彼についていくんじゃないかと言われてましたよね。

カジヒデキ 本当にそうでしたね。モウリーニョが辞めた時はあれほど悲しいことはなかったです。アブラム・グラントが後任を務めましたけど、毎試合「ジョゼ・モウリーニョ、ジョゼ・モウリーニョ」というチャントが歌われて、グラントは結果を出したし、チームも決して悪くなかったのでちょっとかわいそうでしたね(笑)。でも、それほど絶大な信頼を得た監督はなかなかいないですよ。

――モウリーニョ時代はとくにそうだと思いますけど、週末を迎える楽しみというかワクワク感というのは特別なものがありますか?

カジヒデキ やっぱりありましたね。スカイスポーツTVでは土曜日になると朝の9時から12時まで「サッカーAM」という番組をやっていて、3時間サッカー漬けなんですよ。ものすごく面白い番組でレジェンドの元選手だったり、旬のバンドだったり、スポーツ関係の有名人だったり、必ず2、3組のゲストが呼ばれて延々サッカートークしてるんですよ。それが終わるとこんどは15時くらいまで試合の分析や選手のインタビュー、過去の貴重な映像を扱う番組があって、試合後は批評がはじまりますからね。

――本当に朝から晩までサッカー漬けなんですね。

カジヒデキ それが楽しかったです。しかもモウリーニョは負けなかったので余計楽しかったですね。今でも負けないですけど、当時は本当にホームでは絶対に負けなかった。負けないのが当たり前くらいの感じがすごいことだなと。ラニエリの頃であればまだ負けることも普通にありましたからね。

――スタジアムにも負けないという雰囲気ができあがっていたんですか?

カジヒデキ すごく強烈に覚えているのが、ホームでマンチェスター・シティに引き分けの試合があったんですね。その試合での落胆ぶりというか、引き分けくらいでものすごくみんな落ち込んでいるんですよ(笑)。もちろん僕も(笑)。でもそれくらい勝っていたということですよね。

――2004-2005シーズンでほかに印象に残っている試合はありますか?

カジヒデキ チャンピオンズリーグでバルサとの決勝トーナメント1回戦ですかね。それもスタジアムで観ていました。あの試合は特別というか、もう神がかっていました。それと同じくらい異様な雰囲気だったのはリバプールと対戦したカーリング杯のファイナルですかね。ウェールズのミレニアム・スタジアムで決勝をやっていた時代で、それも観に行きました。これがモウリーニョのチェルシーでの初めてのタイトルだったんですけど、チェルシーが強くなっていくのを感じた印象的な試合でした。

――リーグ優勝を決めた試合は観に行かれたんですか?

カジヒデキ それは行けなかったんですよ。確かアウェイのボルトン戦で優勝を決めたんですけど、それはテレビで観ていました。優勝が決まってからとりあえずスタジアムに行ってみようと思ったんですけど、なにを躊躇したのかすぐには行かなかったんですよ。それで夜になって行ってみたら人は全然いなくて、でもものすごい数のペットボトルが道中に散らばっていて宴の後という感じでした。少しだけ残っている人たちがいたので一緒に写真を撮ったのを覚えていますね。それにしてもフラム・ブロードウェイ駅からスタジアムにかけての道の汚さは最高でした(笑)。

――その後のホーム最終戦はどうだったんですか?

カジヒデキ その試合はマケレレがチェルシーで初めてゴールを決めた試合なんですよ。マケレレはもともとゴールを決める選手じゃないし、ずっとゴールを決めていなかったんですね。それでランパードがPKを獲得すると、スタジアムもマケレレに蹴らせてあげてくれという雰囲気になってそのPKをマケレレが決めたんですよね。それがその試合のハイライトで、その時に「have you ever seen Maka(makelele)score a goal」みたいな歌ができて、その次のシーズンとかでも歌われたりしていました。その試合自体はあんまり覚えていないんですけど、マケレレのPKはチェルシーのゴール裏側だったのでものすごく盛り上がったのを覚えているし、その後の優勝セレモニーとパレードも印象深いですね。

――マケレレのチャントのようにカジさんの中で印象に残っているチャントはありますか?

カジヒデキ そうですね。例えばこれは割とどこのスタジアムで歌われているんですけど「we gonna Wembley」ですかね。チェルシーのチャントで言えば「オオオ、オオオ、オオオ、オオオ」って文字では伝わりづらいんですけど変なチャントがあるんですよ。それが歌っててすごく気持ちがいいんですよね。毎回必ず歌われるスタンダードなものもあれば、全然歌われてなかった昔のチャントが急にブームになってしばらく歌われたりとか。「hello, hello we are the Chelsea boys」という歌があって、それはサポーターになった当初は全然歌ってなかったんですけど、2004-2005シーズンのチャンピオンズリーグでバイエルンと対戦してアウェイを観に行ったんですよ。その日はそのチャントが急に何度も歌われて「これ聴いたことないな」と思ったら、それ以来人気のチャントみたいになって毎試合歌われていましたね。それは印象的でした。

――あの頃はチェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、アーセナルのビッグ4と言われた時代じゃないですか。そこと対戦した時の雰囲気はどうでした?

カジヒデキ もうそれはすごかったですよ。すごく記憶に残っているのがアーセナル戦ですね。2003-2004シーズンではまだビッグ4ではなく、チェルシーはアーセナルには勝てないみたいなところがあった時期だったんですけど、年明けにやったホームのアーセナル戦で開始すぐにグジョンセンが先制点を決めたんですよ。その時のスタジアムが異様なほど盛り上がったんですね。こんなに盛り上がっていいのかよっていうくらい盛り上がって、でも結局1-2で負けたんです(笑)。

――2003-04と言えばアーセナルが無敗優勝したシーズンですよね。

そうです。たぶんそういうのもあってすごく盛り上がって、でもやっぱりアーセナルには勝てないというのがありましたね。開始1分くらいでぬか喜びして情けなかったなとすごく思うんですけど、でも翌シーズンからモウリーニョになってアーセナルに勝てるようになってきました。2005-2006シーズンのアウェイで2-0で勝った時の「チェルシーがアーセナルに勝ったぞ!」っていう雰囲気をすごく覚えてますね。

――チェルシーのすごく良い時代をスタジアムで過ごされてきましたね。

カジヒデキ そうですね。できるだけ色んなスタジアムで観たいと思って、リバプールのアンフィールドでの試合も2試合くらい観に行ったんですけど、なかなか良い席が取れないんですよね。シーズンチケットホルダーは優先的に買えるんですけど、ビッグマッチになると難しいんですよ。僕が観に行った時はすごく席が悪くて、一番奥のエリアだったんです。アンフィールドのゴール裏の一番奥って天井が低すぎるんですね。そこでみんな立って観て、しかも周りは背が高いから全然見えないんですよ。これは酷いなと思って(笑)。確かにその場の雰囲気は最高なんだけど、あまりにも見えなくて残念だった。最初は行けるかわからなくてチケットを買ってなかったんですよ。でもどうしても観たくて、追加でシーズンチケットホルダーに販売されたチケットを買ったんですね。だからたぶん観づらい席だけど解放しますっていう席だったんです。

――無理やり詰め込まれるような席だったんですね(笑)。

カジヒデキ そう、だからやっぱりチケットはすぐに買わないとだめだなと。もうあんな席は売らないでくれって思いましたね(笑)。

――モウリーニョは負けた時の姿もかっこいいですよね。

カジヒデキ そうですね。ホームでは負けなかったので、アウェイにわざわざ来て応援してくれてありがとうというのをちゃんと形にしてくれてすごいサポーターは嬉しかったですよね。ランパードとかテリーもモウリーニョのそういう姿勢を見習って、よくサポーターのところへ来て拍手とかしてくれますからね。だからランパードも本当に愛されてますね。

13/14 イングランド プレミアリーグ 第30節アストンヴィラ vs. チェルシー
3月15日 (土) 深夜 02:24~<チャンネル>J SPORTS 4

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