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「石さんのトレーニングで逞しくなれている」松本FW加藤拓己、“信州ダービー”の悔しい敗戦をバネに飛躍を期す

13時間前

松本FW加藤拓己 [写真]=J.LEAGUE

 柏レイソルを皮切りに、北海道コンサドーレ札幌、モンテディオ山形、テゲバジャーロ宮崎、ヴァンラーレ八戸と5度の昇格経験を持つ石﨑信弘監督。その名将を招聘した今季、明治安田J2・J3百年構想リーグのEAST-Bで健闘を見せているのが、松本山雅FCだ。

 序盤こそ2連敗スタートだったが、その後はジュビロ磐田や札幌に勝利。RB大宮アルディージャ戦にも勝ち切り、第10節時点では4位に浮上したほどだった。ところが、続く4月18日の札幌戦は1−2の苦杯。勢いがストップしてしまった。そのまま失速してしまったら、J2復帰を目論む26−27シーズンにネガティブな影響が及ばないとも限らない。だからこそ、今節のAC長野パルセイロとの“信州ダービー”では是が非でも白星がほしかった。

「シンプルに負けちゃいけないと。特に今日のゲームはそういう気持ちを強く持って臨みました」と話すのは、今季10試合出場4得点と異彩を放っている大型FW加藤拓己。加藤は2つ上の前田大然と同じ山梨学院大学付属高出身。隣県にいたこともあり、当時から信州ダービーの熱気は多少なりとも知っていたことだろう。

 早稲田大学を経て、2022年に清水エスパルス入り。同年と昨季に2度のSC相模原への期限付き移籍を経験して、今季から松本山雅に完全移籍した。「山雅と一緒に這い上がっていくんだという覚悟を持って来た」と本人も語気を強めていたが、ここから先輩・前田のように大化けできれば理想的だ。

 石﨑監督も「昨年、相模原と対戦した時、めちゃくちゃ声を出すFWがいるなと思ったら加藤だった。本当に嫌な選手だと感じていたら、松本で一緒に仕事をすることになった」と笑っていたが、明るさとコミュニケーション力、アグレッシブさは大きな強み。今回の信州ダービーでも屈強な苦境なフィジカルを生かして序盤から最前線でボールを収め、攻撃の起点を作っていた。「相手のトップ1枚に対して、しっかりと行けなかったのが前半悪かった部分。そこをつぶせれば、もう少し自分たちの攻撃時間が長くなったと思います」と敵将・小林伸二監督も加藤の対応に手を焼いていた様子だ。

 後半も流れに乗り、彼自身のゴールが生まれればよかったが、松本は後半20分にリスタートから失点してしまう。味方のクリアボールがフリーになっていた長谷川隼にこぼれ、そのままシュートを決められる不運な失点だったが、1点のビハインドをひっくり返せないままタイムアップの笛。予期せぬ2連敗を喫した格好だ。

「札幌戦と今回はセットプレーで続けてやられている。最後の部分で体を張れないのは論外だし、そこをもう1回、突き詰めなきゃいけないと思います。あのシーンに関しては僕のところでやられたわけではないですけど、全員で失点を突き詰めないといけない。攻撃の部分でも得点を取れていませんし、自分自身がもっと精度を上げていく必要がある。試合に出ている選手は昇格降格なしとか関係なしに、もっともっと強い責任感と覚悟を持ってやらないとダメ。そこをこの連敗から学びました」と背番号9は言葉を強めたのだ。

 些細なミスからの失点を減らし、そのうえで得点力をアップさせていければ、松本山雅はもっと上のカテゴリーに行けるはず。加藤は石﨑監督の下で、そういう勝てる集団を築いていくべきだと強く考えているようだ。

「石さんの下でやるようになって、強度や走力、そういう部分が一番上がっていますね。僕は清水でも相模原でもコンディションが上がり切っていなかったですけど、今は石さんのトレーニングで逞しくなれていると実感しています。それに石さんは自分を否定しない。本当にダメなプレーはダメだと言われますけど、自分が一つのプレーを判断した時、僕の説明を聞き入れたうえで、『こういう判断もできたんじゃないか』というアクセントを加えてくれるんで、しっかりと納得して受け入れることができます」

 加藤はしみじみとこう話したが、石崎監督は全員に同じようなアプローチができる指揮官。選手に複数の選択肢を与え、プレーの幅を広げてくれる。加藤も百戦錬磨のベテラン指揮官との出会いで、ターゲットマンとしての能力に磨きをかけているのである。

 もともと加藤は10代の頃、年代別代表に呼ばれていた選手。当時のU-18日本代表には、同じ99年生まれの町野修斗や橋岡大樹も名を連ねていた。北中米ワールドカップを射止めそうな彼らとの距離は目下、少し遠いかもしれないが、石崎監督の下で成長できれば、再び近づくことも十分あり得る。20代後半からブレイクするチャンスをつかむためにも、松本を引き上げることが肝要なのだ。

 大型連休中は磐田、ヴァンフォーレ甲府、FC岐阜といった難敵との対戦が続くが、加藤には4−1で圧勝した大宮戦以来のゴールをいち早く奪ってほしい。180センチ・84キロというパワフルなサイズを誇る点取り屋のさらなる覚醒が待たれるところだ。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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