選手選出のクラブ年間最優秀選手に選ばれるなど、中盤の底からチームを支えリーグ王座奪還に貢献。デイヴィッド・モイーズ新監督の下でリスタートを切るチームにとっても必要不可欠な存在となるだろう。マイケル・キャリックは常に向上心を持って戦う。

インタビュー=クリス・ヘザラル 翻訳=田島 大 写真=Man Utd via Getty Images
昨シーズンは31歳にして、アレックス・ファーガソン監督から「過去最高」と言われるほどのパフォーマンスを披露した。リーグ戦36試合出場1ゴール4アシストの結果を残し、選手選出のクラブ年間最優秀選手にも選ばれるなどチームメートからも称賛され、リーグタイトルも奪還。充実の1年を過ごした。 それでも現状には満足していない。「僕はゴールを設定せずにとにかく『もっと、もっと』という気持ちでピッチに立っている」。ファーガソンが持つハングリー精神を受け継ぐ彼は「昨シーズンの成績は関係なく再び頂点に立つことしか考えていない」と気を引き締める。
年齢を重ねてもさらなる成長を誓い、タイトルを追い求める姿勢が自身とチームに好影響をもたらしていることは間違いない。ベテランの域に達し、なおもチャレンジを続けるマイケル・キャリック。ピッチ中央でチームをリードする彼なしに現在のユナイテッドを語ることはできない。
批判は気にしないとにかく勝つだけ
――昨シーズンも色々な出来事があったね。シーズンを振り返って、今はどんな気持ちなのかな?
キャリック 素晴らしいシーズンだったよ。サー・アレックス・ファーガソン(前監督)にとってのラストシーズンでリーグ優勝することができてすごくうれしかったし、あんなにも早く優勝を決められて少し不思議な感覚を味わうこともできた。残りの何試合かをお祝いムードで満喫することができたしね。本当に実りのあるシーズンだったと思うよ。
――リーグ優勝を確信できたのはいつ頃?
キャリック 優勝争いを完全に掌握することはできない。長いシーズンの中では色々なことが起こり得るからね。一時期勝ち点15差が付いたとしても、一瞬にして縮まってしまうことがある。だから、実際に優勝が決まるまで絶対なんてないと常に思っているんだ。そういう意味で昨シーズン、優勝を確信したのは(優勝が決まった)アストン・ヴィラ戦の試合終了のホイッスルが鳴った時だね。
――ユナイテッド優勝の要因にマンチェスター・シティーの失速を挙げ、昨シーズンのユナイテッドは歴代のチームより見劣りすると考える人もいるようだけど、そういう意見をどう思う?
キャリック 不思議だよね。僕らが優勝すると必ずライバルチームの力不足を指摘する人たちが出てくるんだ。でも、そういう人たちに僕はこう言いたい。「勝ち点を積み重ねなければ絶対に優勝することはできない」とね。ユナイテッドが過小評価されていた時期もあったけど、それでも僕らは勝ち続けてきた。まあ、すべての人間の支持を得ることは不可能だから、そういう批判は気にしていないよ。とにかくもっと勝ち続けて彼らの意見を変えられるように努力するだけさ。
――君は昨シーズンの選手が選ぶクラブ年間最優秀選手に選出された。ロビン・ファン・ペルシーを抑えての受賞だけど、どんな気分かな?
キャリック 格別さ! この賞はチームメートの投票によって選ばれるものだから、本当に特別な意味を持つものをもらったと思っている。僕らはいつもここで一緒に汗を流していて非常に強い一体感を持っている。だからこそロビンもすぐにフィットすることができたんだ。これほど良いチームで一番に選ばれるなんて本当に名誉なことだよ。
――では君自身はチーム内のベストプレーヤーは誰だったと思う?
キャリック 難しい質問だね……。ロビンは1年目にも関わらず素晴らしい活躍を見せたし、ラファエウ・ダ・シウヴァも飛躍的な成長を遂げて多くの試合でいいパフォーマンスを披露した。僕の中ではその2人のどちらかかな。
――優勝が決まってからは盛大なパレードがあり、パーティーも楽しんだようだね。
キャリック もちろんさ。こういう時は思う存分お祝いをしないとね! シティーにタイトルを奪われた1年前のことがずっと頭の片隅にあったし、それが僕らのモチベーションにつながったのは間違いない。絶対にタイトルを取り返したかったから、それが達成できて本当に良かったよ。
――タイトル奪還の一番の要因はチームのモチベーションの高さにあったのかな?
キャリック モチベーションを含めたメンタル面の変化は大きいと思う。昨シーズン序盤は多くの人がシティーのリーグ連覇を予想していた。ユナイテッドを優勝候補に挙げる人は多くなかったし、中には「ユナイテッドの時代は終わった」という人までいた。でも、僕らはそういう周りの声を聞かないように自分たちのプレーに集中したんだ。チームメートとの信頼感はより一層強まったと思うし、サー・アレックスはリーダーとしてそういう良い緊張感と雰囲気を生み出してくれた。今にして思えばこういうメンタル的な強さがタイトル獲得に大きな影響を及ぼしたと思うよ。
――だけど残念なことにそのサー・アレックスがクラブを去ることになったね。
キャリック 本当に悲しいよ。クラブに関わる誰もがそう思っている。マンチェスター・ユナイテッドでの彼の功績、そして僕ら個々の選手に与えた影響の大きさ……紛れもなく唯一無二の存在だからね。彼が僕らに勇退を告げた日は本当に悲しかった。言うまでもなくサー・アレックスはフットボール界の真のレジェンドだ。その彼が去ることはフットボール界にとって大きな損失だね。
――サー・アレックスはどんな点で特別だったのかな?
キャリック どんな状況下でも何をすべきか、選手たちに何と言えばいいか、それらをすべて熟知していた。だからこそ彼は選手たちの力を最大限に引き出すことができて、チームに多くのタイトルをもたらすことができたんだ。ただそれ以上にすごいのは、こういうトップレベルのチームを20年以上も率いてフットボール界全体を引っ張っていたこと。
――そんな監督の下でプレーできたことは僕にとって大きな誇りだよ。そんな偉大なサー・アレックスの退任という大きな変化にチームはどう対応していくのだろう?
キャリック そうだね……。サー・アレックスの言葉を借りるなら、僕らには「新しい挑戦が待っている」。とにかく前進するだけさ。未来を見据えながらね。とはいえ、サー・アレックスはディレクターとしてクラブに残るし完全にクラブを去るわけじゃない。今後も必ず何かしらの形で僕らを助けてくれるはずさ。
――シーズン最終節のウェスト・ブロムウィッチ戦の試合後、ロッカールームに戻ってサー・アレックスとはどんな話をしたの?
キャリック 不思議な光景だったよ。僕ら選手はこれまでの感謝を伝えて、監督も僕らに「ありがとう」と言ってくれた。もちろん最後の試合は勝ちたかった。残念ながら引き分けに終わってしまったけど、シーズンを振り返れば僕らは仕事を全うできたと思う。だから監督も今シーズンの成績を含め自身の監督キャリアを振り返って、満足して勇退することができたんじゃないかな。
香川は非常に良かった、もっともっと良くなる

――チームの重鎮であるポール・スコールズも引退した。同じポジションでプレーしていた彼は君にとってどんな存在だった?
キャリック 本当に素晴らしい選手だよ! 彼は一流の中の一流の選手。一緒にプレーしたことがある選手はみんな口をそろえて同じことを言うけど、本当にもっと評価されるべきだと思うよ。間違いなく世界屈指の選手の1人だ。だけど、本人は静かな生活を望んでいてあまり注目されたくないっていう希望を持っているんだけどね(笑)。僕が彼と初めて対戦したのはウェストハム時代の2001年だったと思うけど、その当時はイングランド代表の主力選手でもあったしとてつもないプレーヤーだった。だから彼と毎日一緒に練習して、中盤でコンビを組むことができたのは本当にうれしかった。彼は試合中はもちろん、練習中でも難しいプレーを簡単にやってのけていたからね。その彼がチームを離れるのは本当に寂しいよ。
――反対に昨夏から加入したファン・ペルシーと香川真司にはどんな印象を持っている?
キャリック 2人ともいい補強だったと思う。ロビンはすぐにチームになじんでゴールを量産した。まあ、彼はここへ来る前からワールドクラスの選手だったからね。香川も非常に良かったと思う。すごい才能を持っている選手だから、次のシーズン以降はもっともっと良くなるはずさ。こういう新戦力の台頭や貢献も、プレミアリーグ優勝の原動力になったと思っているよ。
――新シーズンはデイヴィッド・モイーズ新監督の下でスタートを切る。サー・アレックスはモイーズに、君たち優秀な選手の他にどんなものを残してくれたのだろう?
キャリック サー・アレックスは長年を掛けて培ってきた「勝者のメンタリティー」と「不屈の精神」をクラブと新監督に残してくれた。彼の決してあきらめない気持ちや溢れんばかりの情熱はチームに深くしみ込んでいる。監督が代わってもそのメンタリティーは受け継がれていくはずさ。
――モイーズ監督の印象を聞かせてもらえるかな?
キャリック エヴァートンでの素晴らしい仕事ぶりを見る限り、間違いなく一流の監督だね。エヴァートンでは限られた資金の中でしっかりと結果を残してきた。僕自身もそうだし、僕が知っている人はみんな彼のことをリスペクトしているよ。
――モイーズ監督の下でチームはどういうプレーを見せてくれるのだろう?
キャリック 実際に試合をこなしていかないと分からないけど、大きく変わることはないんじゃないかな。このクラブには絶対的な安定感がある。いくつかの新しい問題は出てくると思うけど、僕らはそういう新しい挑戦を喜んで受け入れるよ。それに新監督によるポジティブな変化にも期待したいね。ユナイテッドにどんなエッセンスを加えてどう前進させてくれるか、本当に楽しみだよ。
――圧倒的な強さを見せた昨シーズンを超える成績を残すのは難しいという声もある。
キャリック そんなことはないさ。僕らは常にハングリーなんだ。そういうチームでなければこれまでのような成績は残せないだろうし、その強い精神力は失われていない。サー・アレックス自身が体現したものを僕らが受け継ぎ、新監督や若手選手に伝えていく。そのサイクルがうまくいくと信じているし、そのために僕は全力を尽くすよ。
――最後に新シーズンの目標を聞かせてくれるかな?
キャリック 僕はゴールを設定せずにとにかく「もっと、もっと」という気持ちでピッチに立っている。新シーズンが始まれば、全力で戦いに身を投じるだけさ。昨シーズンの成績は関係なく再び頂点に立つことしか考えていない。そのために戦い続けるよ。