2013.06.19

コンフェデ杯から何を得るか? 元日本代表主将が語るチームマネジメント

[サムライサッカーキング 7月号掲載]
2002年、06年と2度のワールドカップを経験し、キャプテンとして最終ラインから日本代表を統率した宮本恒靖氏。現在、指導者資格の取得を目指して欧州で研鑽を積む宮本氏に、W杯1年前からのチームマネジメントについて聞いた。

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インタビュー・文=田中亮平
写真=足立雅史

結果を追求するよりも何ができるかを試す機会に

──来年のワールドカップ本大会をちょうど1年後に控え、6月15日からブラジルでコンフェデレーションズカップが開催されています。どういうテーマを持ってこの大会に臨むべきでしょうか。
 
宮本 まず、アジアの中で戦うW杯予選とは、対戦相手のレベルが違います。チームとしての戦術も個々の質もアジアより高いので、一つはそういうものを目の当たりにする、体験する機会という位置付けがあります。もちろん、FIFA主催大会とはいえ、W杯本番とは違いますから、各国の真剣度という点では必ずしもすべての国が100%ではないかもしれません。しかしそれを差し引いても、アジアとは明確に違う「差」というものを体感できます。ですから、結果にこだわるというよりは、そうした相手を前に何ができるか、というところに主眼を置くべきだと思いますね。もちろん、結果が出ればチームとして自信になると思いますが、それよりも大事なことがあると思いますね。
 
──ご自身も2003年大会、05年大会と2度経験されていますね。ドイツW杯本大会の前年に行われた05年大会では、メキシコ、ギリシャ、ブラジルと対戦し、1勝1分け1敗でした。
 
宮本 ドイツW杯の出場権を獲得してすぐだったので、チームにも精神的な余裕があり、その勢いをそのまま持っていきたい、という考えで大会に入りました。初戦のメキシコ戦(1─2)は、こちらがプレスにいっても、網をかいくぐられてしまいました。メキシコにはそういう上手さも、ずる賢さもありましたし、対峙したFWのハレド・ボルヘッティという選手も質の高い選手でした。メキシコはいわゆる強豪国と呼ばれる国ではありませんが、それでもあれだけの試合運びができるのかと、驚きましたね。ギリシャ戦(1─0)に関しては、初戦のメキシコ戦に負けて、ここで負けたら大会が終わるという状況だったので、ある程度現実的に戦った部分がありましたね。中盤の構成力では上回れたので、結果的に勝つことができました。当時の欧州王者ですから、自信になりました。

──なるほど。ギリシャ戦ではメキシコ戦と戦い方を変えたとおっしゃいましたが、具体的にはどういうことですか?

宮本 メキシコ戦の途中の段階で、どうやって戦うんだ、というようなことで意見がぶつかったりもしていました。この大会をどういうテーマ、方向性で戦っていくのかと。そういう意味では、初戦に負けて、次のギリシャ戦はこう戦うんだと、テクニカルな部分だけでなく、気持ちの部分も合わせられたという点で重要だったと思います。

──良い流れで3戦目のブラジル戦を迎えたわけですね。昨年の欧州遠征でフランスに勝って、ブラジル戦に臨んだ現日本代表と状況が似ている気もします。

宮本 実際にブラジルと戦ってみると、やはり大きな違いがありました。メキシコ戦、ギリシャ戦で感じたものとも、またレベルが違った感じです。ブラジルにももちろん隙はありました。ディフェンスラインの選手たちがどこか緩慢だったり、前線でも、例えばアドリアーノなんかはあまり集中してないんじゃないか、という雰囲気でした。そういう隙はいろいろあったのですが、いざスイッチが入った時の選手たちのスピード、賢さ、技術の高さ、フィジカル的な強度も含めて、総合的なレベルの高さを感じましたね。

──本気じゃない中でも、勝負どころでそういう力を発揮してくると。

宮本 そうですね。本気かどうかというのは、もちろん監督のマネジメントによる部分もあると思いますが、選手個々のモチベーションの違いというのもあると思います。例えばロビーニョは、当時まだ若く、売り出し中で、かなり高いテンションで仕掛けてきましたし、ルシオはもともと真面目なプレーヤーなので、常に100パーセントでプレーしているというのが分かりました。

──3戦を終えて、結果、内容ともにどういう感想を持ちましたか?

宮本 手応えを感じましたね。あと1年あるし、そこでどれだけチーム力を上げられるか、個々のレベルアップができるか、というところに気持ちが向かいました。ブラジルと2─2で引き分けたのは大きな自信になりましたし、トップレベルと戦うと、具体的にこういう差があって、その中で自分たちもこれだけの良さを出せた、というのを感じることができました。

──そういうお話を聞くと、やはりコンフェデ杯をどういう位置付けで臨むか、というのはこれから1年後を見据える上でも非常に重要な気がしますね。

宮本 最初に言ったように、結果よりも内容のほうが大事だと思うので、アジアの試合を通じて高めてきた自分たちのチームの良さをどんどん出していくべきだと思います。そういう戦い方をしていかないと、14年W杯だけではなく、18年、22年と続いていく中で、日本代表のサッカーとは何か、というものに対する蓄積にならないですから。引いて守ってカウンターというのは、結果を出すために必要な部分だと思いますが、この大会で目指すべきものは何かというのを考えた時に、そうやって勝ち点を積むことにそれほど意味はないと思いますね。

本番までに差を縮めるために、新しい選手の招集も必要

──代表キャプテンとして多くの経験をされてきて、また現在の日本代表を見ていて、世界トップレベルとの差はどんなところにあると思いますか?

宮本 まず、ポジティブなところからいくと、規律を守って、チームとして戦える、という面に関しては、日本は世界でも有数だと思います。それから攻撃的な中盤の選手のアイデア、動きながらボールを収める質、そこからのショートパスの交換などは、非常に高いレベルにあると思います。また、両サイドバックが前に出ていける、前で仕事ができる、というのも強みですね。一方で、代表と言うよりは日本のサッカーと世界を見比べた時に、GKの質にやはり違いが出てしまっているかなとは思いますね。それから、ミスをすることの頻度ではなくて、ミスをする場所とその質、サッカーの流れを止めてしまうミスなのか、そうではないのか、というところで、まだまだ世界のトップレベルには及んでいないと思います。国際試合でレベルの高い相手と戦うと、ペナルティーエリアの近くまでは行けても、そこから先は絶対に侵入させてくれないというか、そうした守備の強さを感じます。逆に、レベルの高いFWはここぞというところで、必ず決めてくる恐さがあります。

──一言で言うと、「サッカーの上手さ」みたいなところで、例えばブラジルのような国とは差があると。

宮本 ボール扱いが上手いだけの選手なら、それこそブラジルにはゴロゴロいると思います。ただしセレソンになると、ここで何をしなければいけないのかをしっかり分かってプレーできる選手の数が非常に多い。センターハーフや前線の選手であっても、ここっていう時には戻ってきて守備をするとか、そういうことですね。そうした判断ができないとセレソンには残れないんだろうなと。もちろん戦える選手であることは大前提ですが。

──そうした差を、これから先日本は埋めていかなくてはいけない。来年のW杯をベンチマークとした時に、どうチーム作りをしていくべきでしょうか。

宮本 1年で埋めるというのはすごく難しい話で、しかも本番の戦いになると、それぞれの対戦相手がこちらを研究してきて、ストロングポイントを消そうとしてきます。本当に自分たちのサッカーを貫くという前提でいくなら、ピッチだけにとどまらない包括的なアプローチが必要だと思いますね。

──ピッチ外というのはどういう部分でしょうか?

宮本 どういうキャンプ地にするとか、どういう合宿を組んで、どういう日程でいこうかとか。そういうディテールを突き詰めて、いかにメンタルとフィジカルを高めて試合に入れるか、だと思いますね。それから、今はヨーロッパでプレーしている選手たちがたくさんスタメンで出ていますけど、そこにもう少し刺激を入れる意味でも、例えば次のコンフェデ杯は違ったメンバーを入れても良かったかなとも思います。06年W杯の時も、スタメンで出続けていた加地(亮)が大会直前のドイツ戦でケガをして、コマ(駒野友一)が出た、ということがありました。モニ(茂庭照幸)もオーストラリア戦でいきなり出場機会が巡ってきたりとか、大会はやはり11人だけでは戦えないので、15、6人が常にスタメンを争う形というのは必要だと思いますね。(了)