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「マンガは描き方を学べばクオリティーが高くなる」 戸田邦和(漫画家)インタビュー後編

2013.12.09

戸田邦和

 2005年3月、『ワールドサッカーキング』で『龍時』の連載が始まる。

 そのいきさつには高橋陽一先生の一言があった。

 そして、未来のマンガ家へ向けて思いを語る。

連載を同時並行で手がける多忙な日々を送る

――いろんな競技のマンガを経て、マンガ雑誌ではない『ワールドサッカーキング』で『龍時』の連載が始まります。

戸田 これは、当時の編集長の岩本義弘さんが、他誌との差別化を図るためにサッカーマンガを載せたいということで、お声を掛けていただきましたね。

――これは小説があるんですよね。

戸田 これは高橋陽一先生の一言なんですよ。陽一先生が小説の『龍時』のことをぽそって言って。その方向で進んでマンガ化にOKが出て始まりましたね。

――これは実名なんですよね、チーム名ですとか。

戸田 実在の選手だと顔を似せないといけないので、ストーリーや構図を考えることよりも、コイツのマークは誰で背番号はなんだっけって。オリジナルキャラじゃないからミスが許されないので。スポンサーだったりエンブレムだったり。レアルのロゴを描くのは大変でしたよ(笑)。当時もう一つ、ギャンブルの『テラバイト』の連載も持っていましたし、もういっぱいいっぱいでしたね。

――連載を同時並行していくのは大変そうですね。頭の中が混乱しそうで。

戸田 ごちゃごちゃになりますね。初めての経験だったので締め切りやべぇやべぇって(笑)。最初は無駄にエネルギーを使いすぎましたけど、慣れてくると救われることが多かったんですね。

――救われる?

戸田 サッカーとギャンブルとではまったく内容が違うので、一回頭をリセットできるんですよ。『龍時』でサッカーボールを描くのが疲れたら、『テラバイト』のお色気シーンで気分転換とか。そんな利点もありましたけど、余力はなかったですね。スペイン行きの取材の話もあったんですけど、絶対スケジュール取れないから無理ですって断ってますし。本当に行きたかったんですけどね、めちゃめちゃ後悔してます(笑)

戸田邦和イラストレーション

マンガは表現方法を身につけると楽しくなる

――マンガアカデミー翼塾が始まり、教壇に立つわけですけど、あらためて意気込みをお聞かせください。

戸田 友だち同士では得られない言葉や、技術だったりノウハウをお教えできると思いますので、僕らをどんどん利用してほしいです。もちろん正解がない世界なので、これをやればOKということはないんですけれども、こういうふうにするとより効果的になるよってアドバイスはできます。使えることがあればどんどん使ってほしい。クオリティーの上がったものが描けるようになれば満足も変わると思いますし、マンガのジャンル問わずつながることがたくさんあるので。教わって上達する楽しみを味わってほしいと思いますね。

――どんどんうまくなるのは楽しいことですもんね。

戸田 今まで何人ものアシスタントと接してきましたけど、教えればどんどんうまくなっていったんですよね。僕もアシスタントを経験したので分かるんですが、描き方を学べば効率がよくなって、でき上がったもののクオリティーが高くなるんですよ。道筋さえ分かっていれば、あとは繰り返すことによって身に付く。丁寧に原稿を仕上げていると、絵を描く、線を引くことに対しての意識が根本的に変わるんですよ。あとは、絵は描けてもマンガを描くのは苦手な人もいるので、絵のうまさとは違う部分の構図の見せ方も教えたいですね。

――どんどん技術を盗んで身に付けたものを生かして、作品を作ってほしいと。

戸田 そうですね。もちろん、その作品を見てアドバイスもします。僕たちは絵にしたり構図で見せたりできるので、理解しやすいと思うんですよね。こういうやり方もあるんじゃないかなということを、時間をかけて丁寧にやっていけると思います。僕たちもいろんな意見を出し合うことで、若い人たちの感性や考え方に触れて勉強になりますしね。

――刺激を受けるわけですね。

戸田 立場上は講師ですけど、僕らも化学変化が起こって育てられると思っています。人と話して言葉に出したことによって、自分でもう一回再確認するんですよね。言葉に出して再確認したら脳裏にくっきりと残るので、考えるときに役立つ。受ける側も言う側も身になるというか、そういう気がするんですよね。

――では最後に、漫画家を目指す方にメッセージをお願いします。

戸田 マンガってきつい作業だと思うんですよね。僕の先輩も、漫画家って仕事あってもなくても大変じゃん、だったら仕事あって大変なほうがいいでしょって言ってますしね(笑)。下手なときはもちろん、うまくなっても、もっとよく見せようとこだわってきついんですよね。だからこそ楽しまないと続かない。きついことをやった後で楽しみが生まれてくることもある。思い描いているイメージに近づけば楽しくなるし、表現方法を身につけていくとまた楽しくなっていく。同じ業界を目指す仲間だったり、同じ業界で生きていく仲間とお互いに切磋琢磨していくことができれば楽しくなりますしね。

――楽しむことが一番大事なことなんですね。

戸田 そうですね。いつか塾生の方と同じ雑誌に載ったらいいですよね。僕、実は小学校のときに車田正美先生にファンレターを出したんですよ。車田先生のサインをしばらくずっと眺めてましたからね(笑)。その車田先生の作品と、僕の作品が同時に載ったことがあって、感慨深かったですから。塾生と同じ本でつながって、あのとき教わっててとか言われたいですね。

◆インタビュー前編
「高橋陽一先生のアシスタント時代は好き勝手やっていた」 戸田邦和(漫画家)インタビュー前編

◆インタビュー中編
「小学校のときにはもう漫画家になりたいと思っていた」 戸田邦和(漫画家)インタビュー中編

マンガアカデミー翼塾 講師 戸田邦和(漫画家) Kunikazu TODA
1969年9月16日生まれ、東京都出身。1991年、『週刊少年ジャンプ』の第41回手塚賞において準入選しデビュー。掲載作品に『MAX -マック鈴木の挑戦』などがある。後に『週刊少年チャンピオン』で『RAIN DOG』や『どうぎんぐ』、『スーパージャンプ』で『蒼き大地ブフ』を連載するなど連載作品が多数あり、『週刊ヤングジャンプ』などで実在の人物を取り扱ったストーリーものの読み切り作品を多数、掲載している。2005年からは『WORLD SOCCER KING』誌上で『龍時』を連載。マンガアカデミー翼塾では講師を務める。

インタビュー・文=佐藤功
写真=赤石珠央

マンガアカデミー翼塾 マンガアカデミー翼塾

●サッカーキング・アカデミー「編集・ライター科」の受講生がインタビューと原稿執筆を、「カメラマン科」の受講生が撮影を担当しました。
●「編集・ライター科」と「カメラマン科」について詳しく知りたい方は、資料請求でスクールパンフレットをお取り寄せください。送料無料です。

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