世界中を熱狂の渦に巻き込んだワールドカップの閉幕から約1カ月、欧州各地で新たなシーズンの幕が上がりはじめた。しかし、1部と2部を併せて20名を超える日本人選手が在籍するドイツでは、長いシーズンを戦い抜くブンデスリーガに先駆けて、一発勝負のトーナメント「DFBポカール」が21日(金)に戦いの火蓋を切る。
前シーズンにおけるブンデスリーガ1部と2部の全クラブに加え、3部の上位チームやアマチュアクラブを含む全64チームが参加するこの大会は、1回戦において必ず下部リーグのチームにホーム開催権が与えられる。地方の小さなスタジアムで格上のチームを迎え撃つ構図は、それだけで熱気を帯び、番狂わせ —— いわゆる「ジャイアントキリング」を誘発する舞台装置のひとつになっている。
■ 頻発する下剋上とW杯の余波
近年、このDFBポカールでは信じられないようなドラマが続発している。2021-22シーズンには当時連覇を狙っていたドルトムントが2部のザンクト・パウリ相手に敗退。さらに2023-24シーズンには、3部のザールブリュッケンが絶対王者バイエルンを粉砕する歴史的金星を挙げ、その勢いのままベスト4まで上り詰めた。
極めつけは2024-25シーズン。3部のビーレフェルトが、前年度無敗の2冠王者だったレヴァークーゼンを撃破。ビーレフェルトはそのまま快進撃を続け、3部クラブでありながら決勝戦にまで進出するという偉業を成し遂げた。2023-24シーズンも2部のカイザースラウテルンが決勝に進出するなど、直近3シーズンで2度も下位リーグのクラブが決勝の舞台であるベルリンへと駒を進めている異常事態は、まさにポカールに棲む「魔物」の存在を物語っている。
特に序盤は下部リーグがホームで試合を行うことに加え、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)もラウンド16までは用いられないため、予想外のことが起こりやすい。さらに今季はワールドカップイヤーだったこともあり、代表選手たちの合流も遅く、下部リーグはすでに開幕済み。ブンデスリーガのトップクラブほど、その影響も大きいはずだ。
■ 過去最多28名の日本人選手が参戦
日本のサッカーファンにとって、今季のDFBポカールは見逃せない要素に満ちている。8月20日現在、1部および2部に所属するクラブ(トップチーム)には、総勢28名もの日本人選手(日本国籍資格を持つ選手を含む)が在籍しており、過去最多の規模でこのカップ戦に挑むことになる。
バイエルンでの熾烈なポジション争いに挑むDF伊藤洋輝や、フランクフルトでの2年目を迎えチームの中核を担うことが期待されるMF堂安律、そしてマインツの心臓として躍動し、さらなるステップアップを見据えるMF佐野海舟ら、すでに日本代表でも確固たる地位を築いている彼らにとっては、今季の幕開けとなる一戦でどのようなパフォーマンスを見せるのかが、大きな見どころとなる。
さらに、日本人選手の最多所属クラブとなったフライブルクには、MF鈴木唯人、MF山本理仁、FW後藤啓介に加え、日系ドイツ人GKの長田澪と、次代の日本代表を担う可能性を秘めた選手たちが揃い踏み。アヤックスから日本代表DF板倉滉が復帰したボルシアMGも、2年目を迎えるFW町野修斗に加えて、新加入のDF橋岡大樹とMF宇野禅斗が在籍。彼らにとっては、DFBポカールでのプレーが今後の試金石となる可能性も考えられる。2部リーグに目を向けても、ザンクトパウリのMF藤田譲瑠チマら、欧州でのステップアップを目指すタレントが多く、彼らにとっては格上のクラブに挑む貴重な舞台と言えるだろう。
■ 好機をうかがう「ネクストブレイク候補」たち
そして、DFBポカールには、カップ戦特有の魅力もある。余力のあるブンデスリーガの上位クラブは、主力を休ませるターンオーバーを採用することも多い。特に下部リーグのクラブとの対戦において、普段のリーグ戦では起用しづらい若手選手や出場機会の少ない選手たちに出場機会を与えることも多く、これが、若手や新加入の選手たちにとって絶好のショーケースとなる。
例えば、フランクフルトに所属する20歳のDF小杉啓太やW杯でも注目を集めたヴォルフスブルクのFW塩貝健人、そして今季からカールスルーエに活躍の舞台を移したFW福田師王といった定位置確保を目論む若きサムライたちは、アピールの場を虎視眈々と狙っている。限られた出場時間の中で結果を残せば、一気にリーグ戦でのスタメン定着、その先には日本代表への道が開けるかもしれない。
もちろんブレイクを狙うのは日本人選手だけではない。現地でも今季の「ネクストブレイク候補」として熱視線を浴びる超新星たちが、このポカールで躍動する可能性を秘めている。ドルトムントの“新星”18歳のMFサムエレ・イナシオは、そのひとり。昨季終盤に出場機会を得たクリエイティブなアタッカーは、イタリア代表にも招集されている逸材だ。
また、バイエルンに所属する17歳のウィンガー、FWウィズダム・マイクにも注目したい。すでにトップチームデビューを飾っており、昨季ブレイクしたMFレナート・カールに続く存在として期待される。コンディションが万全であれば、DFBポカールで出場機会を与えられる可能性もあるだろう。
ブンデスリーガの長いシーズンを占う上でも、そして未来のスター候補を発掘する上でも、DFBポカールは重要な意味を持つ。小さなスタジアムでジャイアントキリングの夢を見るアマチュア選手たちと、己の未来を切り拓こうとする若き才能たちが交錯する熱狂のトーナメント。今シーズンもまた、予想を裏切るドラマが待ち受けているはずだ。
ドイツカップDFBポカール
▼ DFBポカール1回戦 対戦カード
「GAORA SPORTS」では日本人選手出場試合を中心に放送。「GAORAオンデマンド」は全試合を配信します。(【※】=GAORA SPORTSで放送あり)
1回戦 8月21日(金)
<25:00キックオフ>
ザンクトテーニス vs. フランクフルト(堂安律、小杉啓太)【※】
マンハイム vs. カイザースラウテルン
<27:45キックオフ>
ハンザ・ロストック vs. シュトゥットガルト【※】
1回戦 8月22日(土)
<20:00キックオフ>
ヴィースバーデン vs. レヴァークーゼン【※】
コットブス vs. アウクスブルク
<22:30キックオフ>
ザールブリュッケン vs. ヘルタ・ベルリン
ヴィクトリア・ケルン vs. ニュルンベルク
デュイスブルク vs. エルフェアスベルク
リューネブルガー vs. ブレーメン
<25:00キックオフ>
1860ミュンヘン vs. ホルシュタイン・キール(関根大輝、髙橋仁胡、安部大晴)【※】
トリーア vs. ライプツィヒ
グロースアスパッハ vs. ビーレフェルト
1回戦 8月23日(日)
<20:00キックオフ>
イェッデロー vs. ハイデンハイム
<22:30キックオフ>
ショット・マインツ vs. ボルシアMG(板倉滉、町野修斗、橋岡大樹、宇野禅斗)【※】
ブラウンシュヴァイク vs. ウニオン・ベルリン
バーリンガー vs. マクデブルク
ヴェストファリア vs. ディナモ・ドレスデン
<25:00キックオフ>
デュッセルドルフ vs. フライブルク(鈴木唯人、後藤啓介、山本理仁、長田澪)【※】
RWエッセン vs. ザンクトパウリ(安藤智哉、藤田譲瑠チマ、ニック・シュミット、原大智)
フェニックス vs. パーダーボルン
1回戦 8月24日(月)
<25:00キックオフ>
アルトグリーニッケ vs. ヴォルフスブルク(塩貝健人)【※】
ヴュルツブルガー vs. ケルン
フェール vs. ハンブルガーSV
<27:45キックオフ>
1回戦 9月1日(火)
<27:45キックオフ>
HEBC vs. ドルトムント【※】
1回戦 9月2日(水)
<27:45キックオフ>
By サッカーキング編集部
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