アトレティコ、ルーマニア代表守護神を獲得…「GKへの要求が最も高いクラブ」でオブラクに挑戦へ

　アトレティコ・マドリードは24日、ラピド・ブカレストからルーマニア代表GKホラツィウ・モルドヴァンが完全移籍加入することを発表した。

　クラブの発表によると、モルドヴァンは2027年6月30日までの3年半契約を締結。背番号は「1」に決まった。移籍金は明かされていないものの、スペインメディア『マルカ』や『アス』などによると、アトレティコ・マドリードは契約解除金の満額にあたる80万ユーロ（約1億3000万円）をラピド・ブカレストに支払うという。

　モルドヴァンは1998年1月20日生まれの現在26歳。クルジュのアカデミー出身で、母国の複数クラブを渡り歩き、2021年1月にラピド・ブカレストへ完全移籍加入した。2021－22シーズンからはラピド・ブカレストで不動の正守護神に君臨。今シーズンはここまでリーガ1（ルーマニア1部リーグ）全22試合でゴールマウスを守っていた。ラピド・ブカレストではおよそ3年間の在籍で、公式戦通算103試合に出場した。

　また、2021年10月にはルーマニア代表に初招集。2022年11月にデビューを飾ると、昨年6月のインターナショナルマッチウィークを機に正守護神の座を確保し、EURO2024予選ではルーマニア代表のグループI首位通過に貢献。母国を2大会ぶり6度目の本大会出場へ導いた。これまでに国際Aマッチ通算で9試合に出場している。

　前述の『マルカ』によると、既にモルドヴァンは“アトレティ”の一員として24日に初日のトレーニングを終えていたという。その後加入会見に臨み、次のような言葉で新天地での意気込みを明かした。

「このような素晴らしいクラブに加入できたことを誇らしく思っている。チャンスが与えられるその日まで、僕にできる全力を尽くすつもりだ。憧れのビッグクラブで、タイトルを獲るためにここへ来た」

「僕はチームやクラブ全体の目標について考えることが多い。自分には才能があると信じてここまで突き進んできたけど、気がつけばアトレティコ・マドリードに獲得される選手になっていた。誰も失望させないようようにしたいし、それどころかみなさんを驚かせるような存在になりたい。自分がプレーする時には、価値のあるGKであることを示すことができればと思っている」

「振り返ってみれば4年前、世界中がパンデミックに脅かされた頃、僕は所属クラブがない時もあった。ルーマニア2部リーグであってもプレーすることができない日もあった。こんな僕であってもこのようなことが起こるのだから、サッカーは美しい。僕がここまで登り詰めることができた背景にはたくさんの人々の仕事があったと思う。過去の所属クラブすべてに感謝したい。今、すべてが激変し、僕はテレビで試合を見ていたビッグクラブにやって来たのだから」

「このクラブにはオブラクという世界的に有名なGKがいる。GKに対する要求が最も高いクラブだろう。彼のことは尊敬しているし、ここに来る前から僕のアイドルだった。だが、このチャンスを掴み損ねるわけにはいかなかったんだ。彼は信じられないほど優れたGKで、共にトレーニングに励むことで多くのことを学べるはずだ。そして、チャンスが来るその瞬間を逃さないように最大限の準備をする」

「彼とは、1年半ほど前に僕の故郷で行われた親善試合で対戦したことがある。その試合は僕にとってルーマニア代表のデビュー戦だった。試合後には彼とユニフォームを交換することができた。信じられないような気分だったね。そして昨日、彼とこの話で共に笑い合った。今や彼とチームメイトになってしまったのだから。彼は類稀な才能を持っていて、彼の存在が僕を成長へ導いてくれるだろう」

「このクラブで日々を過ごすことが、僕に大きな成長の機会を与えてくれるだろう。世界チャンピオンを経験した選手たち、世界トップクラスの選手たちと共にトレーニングができる。ここで多くのことを得られると確信している」

　アトレティコ・マドリードでは、長らくの間スロベニア代表GKヤン・オブラクが正守護神の座を絶対的なものとしている。加入初年度となった2014－15シーズン途中にスペイン人GKミゲル・アンヘル・モヤからポジションを奪うと、以降は5度のサモラ賞に輝くなど、1度たりともその座を揺らがされることなく現在に至った。バックアッパーのクロアチア代表GKイヴォ・グルビッチは今季限りで現行契約が満了。加えて、これまで自身の着用していた背番号「1」がモルドヴァンにわたったこともあり、今冬の移籍市場での退団が決定的となっている。このような背景もあり、モルドヴァンはオブラクとの正守護神争いを挑む“チャレンジャー”として、アトレティコ・マドリードに加わることとなった。