FOLLOW US

「家族対決」、「同胞対決」…ドローに終わったビッグロンドン・ダービーを振り返る

2023.10.23

プレミアリーグ第9節でチェルシーとアーセナルが対戦した [写真]=Getty Images

 今月21日に行われたプレミアリーグ第9節のチェルシーアーセナルによる注目のビッグロンドン・ダービーは2-2のドローに終わった。それでは「師弟対決」、「同胞対決」といった意地のぶつかり合いが見られた大一番を振り返ろう。

[写真]=Getty Images

チェルシーが勝つべき試合

チェルシー

 アーセナルのミケル・アルテタ監督が勝てなかった試合の後に「複雑な気分だ」とコメントしたのだから、この試合はチェルシーが勝つべきだったのだろう。試合は、ホームのチェルシーが前半15分にMFコール・パルマーがPKを仕留めて先制すると、後半立ち上がりにはFWミハイロ・ムドリクのクロスがゴールに吸い込まれて追加点。このままチェルシーが快勝するかに思われたが、1つのミスがターニングポイントとなる。77分にチェルシーのGKロベルト・サンチェスがクリアミスをすると、これをMFデクラン・ライスがノートラップでゴールに蹴り込んで1点差。勢いづいたアーセナルは84分にFWブカヨ・サカのクロスをFWレアンドロ・トロサールが合わせて追いつき、2-2のドローに終わった。

 とりわけ試合前半のアーセナルは何もできず、シュート数は2本だけ。『Opta』にとると、前半のゴール期待値「0.12」というのは、アルテタ体制になってからのリーグ戦143試合で最低の数値だったという。後半に少し盛り返したとはいえ、最終的にゴール期待値は「1.35対0.99」でチェルシーに軍配が上がり、マウリシオ・ポチェッティーノ監督も「勝ち点2を取りこぼして悔しい」と振り返った。

■家族対決

ポチェッティーノ、アルテタ

 この試合の最大の見どころは、チェルシーのポチェッティーノ監督とアーセナルのアルテタ監督による“師弟対決”…いや、本人たちの発言を踏まえると“家族対決”だった。まだ互いに現役選手だった頃、二人はパリ・サンジェルマン(PSG)でチームメイトとしてプレーした。2001年1月、ちょうど同じ時期にポチェッティーノはエスパニョールから、アルテタはバルセロナからPSGに加入して友情を育んだのである。加入当初は共に3カ月ほどホテル生活を送り、その後も10歳年上のポチェッティーノが当時18歳だったアルテタにプロ選手の“いろは”を指導した。その関係性について、アルテタは「父親」や「兄」のようだったと振り返り、ポチェッティーノもアルテタを「家族の一員」として可愛がった。

 そしてアルテタは引退後に「兄」を追うように指導者の道へ進み、今回初めて監督同士として対戦したのだが、ポチェッティーノは「初対戦」だと思っていなかった。この試合に向けた会見で「マンチェスター・シティ時代のアルテタは、ペップ(ジョゼップ・グアルディオラ)と一緒に監督のようだった」とアルテタがマンチェスター・シティでアシスタントを務めていた頃から監督としてのオーラを漂わせていたことを示唆。そして「彼は家族の一員なので不思議な感覚」と万感の思いで大一番を迎えた。

■同胞対決

チェルシー、アーセナル

「家族」とまではいかないが、ピッチ上では至る所で同胞対決が見られた。両チームともゴールマウスを守るのはスペイン人。さらに39歳となったチェルシーのブラジル代表DFチアゴ・シウヴァが同胞のFWガブリエウ・ジェズスと衝突すれば、パルマー、コナー・ギャラガーレヴィ・コルウィル、そしてブカヨ・サカやライスといったイングランドの若い才能が存在感を示した。

 そんな中で、注目はチェルシーのムドリクとアーセナルオレクサンドル・ジンチェンコによる“ウクライナ対決”だった。今月の代表戦ではチームメイトしてEURO予選を戦った2人が、その4日後に敵同士として対戦したのである。やはり互いを意識していたようで、今月17日のEURO予選でムドリクがハーフウェイラインから一人で持ち込んで見事なゴールを決めると、試合後にジンチェンコは「同じことを土曜日の試合でもやろうとしたら、金玉を引っこ抜くぞ!」と冗談で警告した。

 その発言についてチェルシーのポチェッティーノ監督は「それは無理だね。ムドリクの方が強いからね!」と笑っていたが、ムドリクも全く気にしていなかったようで、前半に相手のハンドを誘発してPKを獲得すると、後半にはスタンフォードブリッジでの自身初ゴールを決めて2点に絡む活躍を見せた。一方、ジンチェンコは右ウィングのラヒーム・スターリングに手を焼き、ハーフタイムに日本代表DF冨安健洋と交代させられてしまった。選手採点を付けたロンドン紙『Evening Standard』もムドリクには両チーム合わせて最高タイの「8点」を与えたが、ジンチェンコには「5点」という厳しい評価を下した。

 ちなみに、ムドリクは今年1月にシャフタールからチェルシーに加入したが、その前にアーセナルが獲得に動いていたのは周知の事実。ムドリク本人もSNSでアーセナル移籍を匂わせており、相思相愛と見られていたがチェルシーが横取りした。そんな因縁のあるアーセナルとの試合で、ホームでの初ゴールを決めたのだ。エクアドル代表MFモイセス・カイセドだって過去にアーセナル移籍が噂された選手である。

 一方、アーセナルはムドリクを逃した代わりに獲得したトロサールが値千金の同点弾を決めたことになる。それからアーセナルの1点目を決めたのは14歳で放出されるまでチェルシー下部組織に所属していたMFライスだし、FWエディ・エンケティアも同じくチェルシーのアカデミーに在籍経験がある。MFジョルジーニョ、MFカイ・ハフェルツにとってもチェルシー戦は古巣対決だった。見ていて困惑するくらい、両チームにゆかりのあるプレーヤーがピッチを埋め尽くしていた。

■不安な守護神

サンチェス、ラヤ

 両チームとも守護神には悩まされるだろう。前述通り、チェルシーはGKサンチェスのクリアミスにより勝利を逃した。対するアーセナルのGKダビド・ラヤも、ムドリクの“クロス”で失点したほか、ビルドアップで敵にボールを奪われてあわや失点という危ない場面もあった。前節マンチェスター・シティ戦に続いて2度目となるため、GKアーロン・ラムズデールとの正GK論争はさらに過熱するはずだ。

 PKによる失点は仕方ないのだが、これでラヤはブレントフォード時代から数えてプレミアで全7本ともPKを決められたことになる。あと2本でプレミアでのデビューからのPK連続失点記録に並んでしまうというのだ。一方ラムズデールは、PK戦にもつれた8月のマンチェスター・シティとのコミュニティシールドでPKを止めて勝利に貢献しているほか、リーグ戦でもアーセナルに加入してからすでに3本もPKを防いでいる。セーブではなく相手選手が外してくれたのだが、それでも失点を防いだことには変わりない。ラヤもラムズデールも一流のGKだが、運があるのは妻の出産のためチェルシー戦はベンチ入りしなかったラムズデールの方かも…?

 いずれにせよ、アーセナルは敗戦を免れて今季プレミアで無敗をキープ。実は、8節(前節)を終えた時点では「6勝2分け0敗、16得点6失点」で、勝敗だけでなく得点や失点まで無敗優勝した2003-04シーズンの同時期と全く同じで話題になっていた。当時も9戦目はチェルシー戦で、その時は2-1で勝利してそのまま無敗で栄冠を手にすることに。今回は勝てなかったが、それでも無敗を維持しており、20年ぶりのリーグ優勝に期待が寄せられる!

(記事/Footmedia

コール・パルマーの関連記事

By Footmedia

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

SHARE

RANKINGコール・パルマーのニュースアクセスランキング

SOCCERKING VIDEO