2018.11.22

【コラム】“史上最高”に到達したアッレグリ、今季限りでユーヴェに別れ?…後任候補はあの男

1998年にローマに語学留学し、同市内のアマチュアクラブ、ロムーレアの練習に参加。カルチョだけでなく全てのアッズーリをこよなく愛し、日伊協会会報誌『CRONACA』では、イタリアに特化したスポーツ記事を連載中。2017年11月『使えるイタリア語単語3700(ベレ出版)』を共同執筆。イタリア語検定協会事務局員。

「黄金のベンチ」を意味するパンキーナ・ドーロ(セリエA最優秀監督賞)に、ユヴェントスのマッシミリアーノ・アッレグリ監督が選出された。イタリアサッカー監督連盟(AIAC)の主催で、監督たちによって投票される名誉ある賞。カリアリを指揮し9位に入った2008-09シーズン、いずれもスクデットを獲得したユヴェントスでの14-15シーズンと16-17シーズン、そして今回の17-18シーズンの計4回、最優秀監督に輝き、これでファビオ・カペッロとアントニオ・コンテを上回り歴代単独最多の受賞となった。

アッレグリ

史上最多4度目のセリエA最優秀監督賞に輝いた [写真]=Getty Images

 今回は「8票」を得たナポリのマウリツィオ・サッリ(現チェルシー)とラツィオのシモーネ・インザーギの得票を上回る「17票」を獲得。07-08シーズンにはレーガ・プロ1部に所属したサッスオーロでもこのカテゴリーの最優秀監督に選出されており、AIAC主催の表彰式にアッレグリが姿を見せるのはすっかりおなじみの光景となった。そのアッレグリは「まずは8年連続のスクデット獲得が第一の目標。そして、貴いチャンピオンズリーグの制覇を目指す。そのためには、3月に向けてしっかりと準備し、幸運を持って迎えなければならない。チャンピオンズリーグは、ほんの一握りの人たちが勝ち取れるもの。今シーズンは我々が優勝できるように願っている」と自身初となる欧州制覇に野心を覗かせている。

 現役当時のアッレグリを記憶に留めている読者は少ないだろう。1967年8月11日生まれで、現役時代にペスカーラやカリアリで攻撃的MFとしてプレーした。一つ上にはジャンフランコ・ゾラ、一つ下にはジュゼッペ・シニョーリ、そして同い年にはロベルト・バッジョがいたファンタジスタ全盛の時代だ。セリエAで101試合出場16ゴールの実績を残したが、評価は高くなく、凡庸なプレーヤーに終始した。アッレグリが師と仰ぎ、ペスカーラ時代の指導者であったジョヴァンニ・ガレオーネは「かなりの技術を擁していたが、称賛に値するような実績を残せなかった」と辛辣な評価を下している。つまり、実戦で力を出し切れなかった選手だった。体つきは今と変わらず、痩せすぎで「イワシ」と揶揄されることもあった。

 しかし、2003年にセリエC2に所属していたアリャネーゼで現役を引退し、そのまま監督業をスタートさせると評価は一変した。当時のトレーニングを見守ったガレオーネは「選手たちが彼をリスペクトしているのを見て取れた」と振り返る。その後の指導者としての能力の高さは、ユヴェントスでの実績、パンキーナ・ドーロの受賞回数が物語っている。とりわけ、相手の弱点を見抜く能力に長け、また、柔軟性に優れた監督だと言えるだろう。イタリア人監督の多くに見られがちである、選手をシステムに強制的にはめ込むような采配は見られず、選手の特性を見抜き、11人のプレーヤーの特性にあった戦い方を臨機応変に生み出す。試合中の修正力も非常に高く、選手を入れ替えるだけでなく、試合の中でシステムを変更して戦い抜く術も擁している。セリエAではチームが圧倒的な戦力を誇るため、やや評価が上がらない感もあるが、14-15シーズンと16-17シーズンには前評判はそれほど高くなかったものの、戦術を駆使してチャンピオンズリーグで決勝進出に導く手腕も見せている。今夏にはクリスティアーノ・ロナウドが加わり、当初は「チームに馴染めるのか」と危惧する声もあったが、全く問題なくチームにフィットさせた。C・ロナウドの適応能力が高いことも当然だが、アッレグリの指導力の高さも見逃すわけにはいかないだろう。

アッレグリ

その手腕を発揮し、見事にC・ロナウドをフィットさせた [写真]=Juventus FC via Getty Images

 今は“アッレグリ史上”、最も欧州制覇に近づいてるが、今シーズン限りでの退任の可能性も囁かれている。その後任候補には、あの男の影が散らつく。昨シーズン限りでレアル・マドリードの指揮官を退任したジネディーヌ・ジダンだ。現役時代、レアル・マドリードに移る前はユヴェントスでプレーしたこともあり、本人も古巣での指導に満更ではない様子だ。1996年以来となる欧州制覇奪還のために、C・ロナウドの獲得に大金をはたきながらまたしてもチャンピオンズリーグ優勝を逃すとなれば、ジダンを招へいする以外の道はないのではないか。選手時代にも欧州制覇を経験し、指導者として前人未踏の3連覇を成し遂げた稀代の“カリスマ”をクラブが選択する可能性は高い。

ジダン

ジダンならC・ロナウドとの関係が良好というメリットも [写真]=Getty Images

 仮に今シーズン、欧州の頂点に立ったとしても、アッレグリはユヴェントスを去るのではないかとの見方もある。それは最近のクラブの動きから見て取れる。クラブロゴを刷新し、C・ロナウドを獲得。また、クラブの復権に尽力したジュゼッペ・マロッタGM(ゼネラルマネージャー)、最高財務責任者のアルド・マッツィアとの契約を解消した。60歳代の両者を切り、今後は40歳代のパヴェル・ネドヴェド副会長とファビオ・パラティチSD(スポーツディレクター)が補強においての実権を握ることとなる。

 ユヴェントスはこれまで経営においても、試合の戦い方においても堅実な色合いが強かったが、人気と実力を兼備したクラブへとイメージを刷新しつつある。指導力には疑いの余地がないものの、ややネームバリューに乏しいアッレグリに替わってジダンを招へいすることになれば、クラブはその価値がさらに高まると踏んでいるのではないか。前出のガレオーネも「ユーヴェでは十分に実績を残した。新たな挑戦をすべき時期だ」と教え子のアッレグリに退団を推している。チャンピオンズリーグでの成績に関わらず、アッレグリは今シーズン限りでユヴェントスに別れを告げることになるかもしれない。

文=佐藤徳和

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