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【アジア杯コラム】今、最も“ホットな国”…サウジアラビア代表、マンチーニ新体制で28年ぶり頂点へ

2024.01.10

[写真]=Getty Images

 サウジアラビア代表は28年ぶりの優勝を目指してAFCアジアカップに臨む。

 準備に抜かりはない。昨年12月31日にカタール入りして合宿を張っている“グリーン・ファルコンズ”はアジアカップ開幕までにテストマッチを3試合も組んでいる。実戦の中でチーム力向上を図りながらグループステージ初戦に向かう予定だ。

 1月4日にはさっそくレバノン代表と対戦。テレビ中継なし、さらに無観客と完全非公開で行われた試合はサウジアラビア代表が1-0で勝利を収めたという。公式発表や現地報道を総合すると、前後半でそれぞれ違うシステムを試し、後半開始早々にFWフィラス・アル・ブライカンがゴールを挙げたことがわかっている。

 ただ、FWアイメン・ヤヒアがレバノン代表戦で足首を痛めてしまった。他にも数人の負傷者がおり、急きょDFモハメド・アル・ブライク、FWタラル・ハジ、DFラヤン・ハメドの3人を追加招集することになった。

 ロベルト・マンチーニ監督は頭を悩ませているに違いない。昨年8月末に就任したイタリア人指揮官は、かつての教え子であるヤヤ・トゥーレをアシスタントコーチとして招へいするなど、万全のスタッフ編成でサウジアラビア代表での仕事に臨んでいる。

 だが、選手選考の難易度が高すぎるのだ。最大の原因は、大量のスター選手が国外からサウジ・プロリーグに流入したことにある。とりわけサウジアラビア人のGKと前線のアタッカーは各所属クラブでの出場機会を外国籍選手たちに奪われ、コンディション面に大きな不安を抱えることなった。

 象徴的なのはMFサルマン・アル・ファラジの例だろう。ユース時代からアル・ヒラル一筋で、サウジアラビア代表でも絶対的な司令塔だった34歳はクラブ大変革の煽りを受けて出番が激減。昨年12月にはジョルジュ・ジェズス監督と出場機会をめぐって衝突し、規律違反を理由にトップチームから外されてしまった。もちろんサウジアラビア代表も選外となり、アジアカップには出場しない。代表チームを預かるマンチーニ監督にとってもアル・ファラジを外すのは苦渋の決断であり、チーム作りにおける大きな痛手だったはずだ。

 とはいえ外国籍のスター選手たちがひしめく選手たちの中でも際立った成績を残している選手がいないわけではない。アル・ヒラルの左サイドで猛威を振るうFWサーレム・アル・ドーサリはサウジアラビア1部で18試合に出場し9得点4アシストを記録している。4日のレバノン代表戦でもゴールを挙げたアル・ブライカンは今季開幕直後に名門アル・アハリへ移籍すると、前所属クラブと合わせてリーグ戦17試合に出場し11得点5アシストと躍動。プレミアリーグ復帰の噂が絶えない同僚FWロベルト・フィルミーノから完全に定位置を奪った。

 マンチーニ体制のサウジアラビア代表は昨年9月からの国際親善試合4試合で1分4敗と振るわず、スタートで大きくつまずいた。もともと「オール国内組」のチームだったこともあり、メンバー選考において変革期の国内リーグから多大な影響も受けている。

 それでもGKに関してはカタールワールドカップで第3GKだったナワフ・アル・アキディが幸いにもアル・ナスルで出場機会を確保できており、アジアカップでも正守護神として起用の目処が立っている。他にも20歳のFWアブドゥラー・ラディフや19歳のMFアッバス・アル・ハッサン、22歳のMFイード・アル・ムワラッドなど若手を積極的に登用するチャンスができた。直前合宿に追加招集した16歳の逸材タラル・ハジが最終的に26人枠に滑り込んでも不思議ではない。

 長く主力を担ってきたディフェンスラインの選手たちはほとんどが健在で、エース格のアタッカーたちも好調を維持している。彼らと新戦力の若手をマンチーニ監督がどのように融合させて一つのチームにまとめるか。アジアカップ本大会で慣れ親しんだ4バックではなく3バックを採用する可能性も囁かれており、まだ方向性が完全に定まったわけではない。経験豊富なイタリア人指揮官が初戦までにどのようなチームを作り上げてくるか注目だ。

【KEY PLAYER】 FW10 サーレム・アル・ドサリ

[写真]=Getty Images

 カタールワールドカップでは、のちに優勝を果たすアルゼンチン代表から決勝ゴールを奪って世界を震撼させた。1-1で迎えた53分、味方のシュートのこぼれ球を拾うと、ドリブルで3人をかわし、ペナルティエリア左角から強烈なミドルシュートを突き刺したのである。

 サウジアラビア代表の“左の矢”は、欧州でのプレー経験こそビジャレアルでの半年間しかないものの、間違いなくワールドクラスのクオリティを誇るアジア屈指のアタッカーだ。アルゼンチン代表戦のゴールのような、左サイドからドリブルでカットインしての右足シュートは彼の最も得意とする形である。

 さらに一瞬の加速で対峙したディフェンスを振り切っての縦への突破力も備え、所属するアル・ヒラルでも並居るスター選手たちとともに主力を張り、ゲームキャプテンとしても信頼を集める。サウジアラビア代表ではサルマン・アル・ファラジ不在時にキャプテンマークを巻くこともあり、チームをまとめ上げるリーダーシップも心強い。

 アジアカップには過去に2度出場しており、初出場だった2015年大会はグループステージ敗退。2019年大会は決勝トーナメントに進出するも、日本代表に屈してラウンド16敗退と満足のいく結果を残せていない。自身3度目にして32歳と脂の乗った年齢で迎える3度目の今大会は、並々ならぬ意気込みでタイトル獲得に挑んでくるに違いない。

文=舩木渉

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