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「どこへ行ってもやることは育成ですからね」 新たな景色に向かって“ゴリさん”の挑戦は続く

2023.11.21

[写真]=Getty Images

 3度目の冒険は、世界の16強で幕を下ろすこととなった。20日に行われたU-17ワールドカップ・ラウンド16、優勝候補のスペインと対戦した日本は、1-2で敗北。大会から姿を消すこととなった。

 チームを率いたのは1967年生まれ、大会直前に56歳の誕生日を迎えた森山佳郎監督。サンフレッチェ広島ユースを率いて圧倒的な結果を残し続けた指揮官が、U-15〜17年代の代表監督を初めて任されたのは、2015年のことだった。2014年まではコーチとしてこの年代に関わった上での監督就任だった。

 それから8年を経て、初のアジア連覇、3度の世界大会出場を果たした。かつて日本サッカーの「鬼門」であり、敗退の記憶が多くあるこの年代で3度に臨んだアジア予選すべてを突破。世界大会も「なぜか厳しい組み合わせを引いてしまう」(森山監督)引きの強さがありつつも、3大会すべてでグループステージ突破を果たした。

「98年生まれの堂安律、冨安健洋、田中碧がいた代からコーチとして関わって、99年生まれの選手も何度か監督として関わらせてもらった。00年生まれの代からは監督をずっとやってきた」(森山監督)

 00年生まれのチームからはGK谷晃生、DF菅原由勢、瀬古歩夢(世界大会は負傷辞退)、MF久保建英、FW中村敬斗がA代表へ。2019年のU-17W杯からはGK鈴木彩艶、DF半田陸、MF藤田譲瑠チマがA代表の招集経験を持つ。もちろん全員が成功するわけもないが(そうだったらむしろまずいが)、かつて「U-16代表は生き残らない」と言われていた時代から比べると、明らかな変化を生み出したのは確かだろう。

「ハートを持った子が上がっていって、サッカーのことだけではなく、しっかり感謝の気持ちを持って、向上心を持ちながら上を目指していけるような選手が増えてきたと思う。世界中のどの国とやっても怖がることなく戦えるメンタリティを植え付けることはできたと思うし、日本サッカーを半歩くらいは前進させられたんじゃないかな」(森山監督)

 日本サッカーのために「自分は種まきをしている」と言い続けた男は、今後に向けて「ここで一区切り」と退任を示唆。その上で各世代の選手たちにこれまでも言い続けてきたように、こう語った。

「栄養を与えて、肥料とか水をあげて育てるのは結局は自分自身でしかない。この悔しさはW杯でしか晴らせないと思うので、その舞台を自分で掴むまで成長してほしいなと思っています」(森山監督)

 勝敗の機微を知る用兵能力、“戦える選手”を育てる力に特別なものがあるのは間違いないが、それに加えて集団をまとめて一つの方向性へ導くチームマネジメント能力も特に傑出していた。世代ごとに個性の異なるスタッフをまとめ、また年代別代表にありがちな急にやってきたスタッフをも、あっさりチームに馴染ませてしまう様は、ある種の特殊能力を感じさせるものだった。本人に言わせれば、「任せてるだけですから」ということになるのだが、言うほど簡単なことではあるまい。

 ロールモデルコーチとして期間限定ながら合宿や国内の親善大会などに帯同した経験を持つ中村憲剛氏などは、「中に入ってゴリさん(森山さん)が実際に何をしているのかを見られて、めちゃくちゃ勉強になったし、自分にとって大きな経験だった。本当にすごい監督」と賛辞を惜しまない。

 同時に「それをやらないと、この年代の監督をやっている意味がない」と選手発掘にも常に注力。「U-17の世界大会では戦力にならないかもしれないけど、ここで代表のレベルを知ってもらえば、本人次第でいつか化けることもある」と、目前の勝利だけでなく、将来も見据えた「投資」に積極的だった。良い選手がいるぞと聞けば視察に回り、地方の指導者はもちろん、われわれ記者にまで積極的に情報を求め、逸材を探し続けた。今大会で言えば、4得点のFW高岡伶颯(日章学園高校)は、まさにそうした過程で推薦され、見出された選手である。

 選手がそうであるように、「ゴリさん」の挑戦も当然ながらここでは終わらない。「自分もチャレンジしていかないといけない。どこへ行ってもやることは『育成』ですけどね」と語る知勇兼備の指揮官の“これから”にも、あらためて注目していきたい。

取材・文=川端暁彦

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By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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