コパ・アメリカ グループC(左上から時計回りに日本、チリ、ウルグアイ、エクアドル)[写真]=Getty Images
今からちょうど20年前の1999年、日本はコパ・アメリカのパラグアイ大会に招待出場し、1分け2敗でグループステージ敗退という成績に終わった。真剣勝負になった際の南米諸国との実力差をまざまざと見せつけられたものだったが、様々な国際舞台を経て迎える今大会で同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。
日本が入ったグループCは、ブラジル、アルゼンチンという南米の2強が不在なだけに混戦も予想される。日本にとってはノックアウトステージ進出のチャンスが広がる一方、最後まで気の抜けない戦いが続くことにもなる。
ウルグアイは72歳のオスカル・タバレス監督が13年の長期政権を築いている。選手たちのプレースタイルや性格などすべてを掌握し、また若年層のスカウティングにも余念がないこの老将の下、チームは世代交代を進めながら、常に高いレベルを維持している。今回のチームはルイス・スアレスやエディンソン・カバーニ、ディエゴ・ゴディン、フェルナンド・ムスレラといった攻守の中核を担うべきベテランが健在である一方、フェデリコ・バルベルデやロドリゴ・ベンタンクール、マルセロ・サラッキといった20代前半の選手も名を連ねている。反則もいとわない激しいプレーや逆境に立たされても最後まで諦めないメンタルの強さは南米諸国の中でも随一であり、テクニカルでありながら強さ、荒々しさを備えたプレーを見せる。通算15回の優勝はアルゼンチン(14回)やブラジル(8回)を上回る最多の数字で、直近では2011年アルゼンチン大会を制覇。今大会でも優勝候補の一角と言えるだろう。
そのウルグアイと同等のタレント力を備えているのがチリだ。2015年チリ大会、2016年の100周年記念大会と2大会連続で優勝しており、アレクシス・サンチェスやアルトゥーロ・ビダルら連覇を知る選手が多い点は大きなアドバンテージと言える。2018年からこのチームを率いるコロンビア人のレイナルド・ルエダ監督は本来、4-4-2のフォーメーションを使い、堅守速攻スタイルで戦うのを得意とする指揮官だ。一方、チリはマルセロ・ビエルサ監督やホルヘ・サンパオリ監督が指揮を執っていた時代が長く、3バックと4バックを使い分け、ダイナミックにボールを動かしながら攻守にハードワークするスタイルが浸透している。そこでルエダ監督は、選手たちの持ち味を生かすスタイルを選択した。相手によって布陣を変え、ビダルやホセ・ペドロ・フエンサリーダから広角に繰り出されるパスが攻撃のスイッチとなり、人数をかけて攻め込んでいく。相手の攻撃になればハイプレスでボール奪取を試みる。これまでチリが実践し、コパ・アメリカやW杯で実績を残してきたこのスタイルを踏襲したことで、今大会のチリは大会3連覇を十分に狙えるチームになっている。
エクアドルは昨年8月、コロンビア人のエルナン・ダリオ・ゴメス監督を迎え入れた。過去に同国を2002年日韓W杯出場に導き、ロシアW杯ではパナマに本大会初出場をもたらすなど、限られた戦力を駆使する手腕に長けた彼は、今のエクアドルに最適な指揮官と言えるだろう。欧州のビッグクラブでプレーするのはマンチェスター・ユナイテッド所属のアントニオ・バレンシアのみ。メンバーリストを見ると20代半ばから後半にかけての選手が多く、個々の成長もチームとしての成熟もこれから、といったところだろう。指揮官の得意な戦術も、エクアドルの得意なスタイルもサイド攻撃を駆使したカウンタースタイルなので、チーム作りはスムーズに進むと予想される。
この3カ国に挑む日本は、1997年生まれ以降の東京五輪世代が23人中18人というメンバー構成となった。東京五輪世代からA代表に定着する選手を見極める場であり、五輪代表に入れるべきオーバーエイジの選手を見極める場にもなると言える。6月上旬のテストマッチでは森保一監督体制になって初めて3バックを採用して一定の手ごたえを得ており、コパ・アメリカでも3バックを継続する可能性は高い。東京五輪世代が中心とは言え、柴崎岳や中島翔哉といった本来の主力、W杯に3回出場した川島永嗣と岡崎慎司もメンバー入りした。テストマッチのエルサルバドル戦で代表デビューを飾った久保建英も十分にA代表の戦力になることを証明している。カタールのように本来の主力を送り込んでいないことに対する批判の声もあるが、東京五輪の代表チーム、そして近い将来のA代表という観点で見れば、今回のメンバーは間違いなく“主力”と言える。南米諸国との真剣勝負で経験値を高める、などという中途半端な目標ではなく、やるからにはグループステージ突破を目指すべきであり、せっかくコパ・アメリカに参加するのだから、ブラジルやアルゼンチンと対戦するところまで勝ち進んでほしいものだ。
文=池田敏明