ガンバ大阪時代、宇佐美と西野監督との知られざるエピソードとは [写真]=小林浩一
“雲の上の人”だった指揮官とともに、今度は“世界”に挑もうとしている。世間に波紋を広げた監督交代を経て、宇佐美貴史と西野朗監督は再び“選手と監督”になった。キリンチャレンジカップ2018を控えた5月、意外な昔話とともに、ワールドカップへの決意を語ってくれた。
憧れだった指揮官に言われた“意外すぎる一言”
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宇佐美は西野監督の下でプロキャリアをスタートし、ガンバ大阪のエースへと成長した [写真]=Getty Images
「自分の中では『あのガンバの監督…』というイメージで“雲の上の人”でした。その人と選手と監督という関係性になって、カリスマ性というか、人を見る目や監督としてのオーラがすごいなと思っていました」――、西野監督について宇佐美はそう話した。
宇佐美は13歳のとき、ガンバ大阪のジュニアユースに入団。「ガンバでプロになりたい!」と決意した当時、トップチームで指揮を執っていたのは、現日本代表監督の西野氏だった。少年時代から尊敬して止まない人物だったが、“選手と監督の関係”になるまでに、長くはかからなかった。
卓越したテクニックは群を抜いていた。宇佐美はジュニアユース入団後すぐに頭角を現すと、「ガンバユース史上最高傑作」と称されるまでに成長。2009年、高校2年生時にはトップチームにクラブ史上初の飛び級で昇格を果たし、西野監督の下でプロキャリアをスタートした。その後、約2年半、ガンバ大阪で共に戦った。当時を振り返った宇佐美に、西野監督から言われた印象的な言葉は?と聞いてみると、返ってきたのは意外すぎる一言だった。
「西野監督が赤いゲレンデに乗っていたんですよ。僕が『あの“赤い”ゲレンデカッコイイですね!』って西野さんに言ったら、『貴史、“赤”じゃないよ。“ボルドーレッド”だよ』って。それが今でも一番思い出すんですよ(笑) サッカーのことじゃなくて。サッカーについては、西野さんはあまり具体的に指南しないんですよね。『それぞれ考えろ』って。で、『考えた上でそれを表現してくれ』って感じで、あまり多くを語らない」
「読むな!」に込められたプロとしての心得
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トップチームの遠征に帯同する際、西野監督からプロとしての心得を一言で指導された [写真]=小林浩一
心に残っている言葉はまだある。ガンバ大阪のユースチームに所属していた当時、ケガ人が出たことで宇佐美がトップチームにメンバー入りしたときのことだ。アウェイゲームを控えていたチームの遠征に、宇佐美も帯同することとなった。しかし、「当時はメンバー入りできるような立場じゃなかった」という宇佐美は、帯同を言い渡された際、遠征の準備を整えていなかったという。そのとき、西野監督からある一言が言い渡される。
「急にメンバーに入って、『僕、荷物持ってきていません』ってなった。そのとき、西野さんがとことこって寄ってきて『貴史、読むな!』って。“自分はメンバーに入らない”とか、『ネガティブな“読み”をして行動するな』ってことなんですよ。『読むなよ』って言われて『すみませんっ!』って謝って、チームからジャージを借りて、洗面用具だけコンビニで買って、遠征に行きました(笑)」
「常に行ける準備をしておけ」という言葉の裏返しだった。今となっては笑い話だが、西野監督の眼力には驚かされる。高校2年生だった宇佐美をトップチームに昇格させると、すぐさまエースに成長させたのだから。
「(トップチームに)ケガ人が結構出て、左サイドで出場したときに良い感じで結果を残せて、今度はFWにケガ人が出たんですよ。で、FWで使ってみようか?ってなって、そこでもまた結果が出せた。それでなんとか自分のポジションを守っていけました」
結果を残せたことについて、当の宇佐美は「たまたまです(笑)」と謙遜するが、抜擢した指揮官とそれに応えた選手。西野監督と宇佐美の間には確かな信頼関係があった。
よくやった!と言われるように「1つの“駒”として機能する」
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西野監督と悲願のワールドカップ出場へ、宇佐美を“最終選考”が待ち受けている [写真]=Getty Images
次なる戦いの舞台は世界だ。日本代表は30日にキリンチャレンジカップ2018(ガーナ戦)に挑む。翌31日には2018 FIFAワールドカップ ロシアの最終メンバー23名を発表が発表される。4年に一度の大舞台へ熱が高まってきたが、宇佐美にはロシアに行くための“最終選考”が待ち受けている。
「ますは(ワールドカップに)出られるように頑張ります。出て、日本代表に貢献できるように、良いパフォーマンを見せられるように。その先に全員が喜べるような結果、『よくやった!』と言ってもらえるような結果を出せるチームにしたい。で、僕はそのチームの一員だ!と思えるようなワールドカップにしたいです」
世界の強豪と渡り合い、日本代表が勝利するために。西野ジャパンで自身が担う役割や、それを体現するイメージはできている。
「チームの1つの“駒”として機能すること。守備を固める試合もあるでしょうし、チームとして機能することが大前提。その中で自分の色を出す。仕掛けること、フィニッシュの精度とか。最近はセットプレーも任されていますし。そういうところからチャンスを作る。そういうイメージはできています」
インタビュー・文=サッカーキング編集部
写真=小林浩一、ゲッティイメージズ
取材協力=アディダスジャパン
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By サッカーキング編集部
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