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【コラム】屈辱的な敗戦を胸に…遠藤渓太が成長と勝利へさらなる闘志を燃やす

2017.07.24

中国戦でゴールを決めた遠藤渓太。今大会は2試合に出場し、2ゴールを挙げた [写真]=佐藤博之

 屈辱的な敗戦だった。少なくとも、MF遠藤渓太(横浜F・マリノス)は、喜びに沸く中国の選手たちを観ながら、その感情を強く噛みしめていた。

「あんな目の前で中国が喜んでいて……。彼らが死にものぐるいで来ていたのも分かったし、でもそこに負けてしまった。自分のサッカー人生の中でも悔しい。中国だからというわけではないですけれど、でもやっぱり負けたくない相手の一つ。そこにこういう形で、大事な試合で負けてしまったと。凄く悔しい」(遠藤)

 序盤から思うような試合ができなかった。攻守が噛み合わず、「FWとセンターバック(CB)の距離も離れていた」(遠藤)と、全体に連動性を欠き、「ボールをもらっても孤立気味だった」(遠藤)と苦しい内容の前半になった。その終盤には2失点。前半の内容だけで言えば、完敗と言ってもいいほどだった。

 ただ、後半は意欲的な戦いを見せた。CBがボールを運んでスイッチを入れる中でFWも顔を出し、結果として遠藤やMF坂井大将(大分トリニータ)の両サイドハーフが良い形でボールを受けることも増えた。54分には右サイドからの崩しでFW小松蓮(産業能率大学)がニアサイドでシュート。これをGKが止めたこぼれ球を遠藤がキッチリ詰めて、ゴールネットを揺らした。

「ああいうこぼれにはしっかり反応しようと思っていた」と振り返ったが、遠藤はカンボジアとの第2戦でもファーサイドで、抜け目なくこぼれを待つ形でゴールネットを揺らしている。ドリブル主体のサイドアタッカーであり、遠藤の得点と言えば目の覚めるようなファインゴールの記憶が刺激される選手だが、ここに来て“抜け目ない”と形容したくなるゴールが増えているのは成長の証だろう。結果を残すことに対し、よりどん欲になってきている印象もある。この試合で遠藤が悔やむのも、そんな場面だ。

「ゴールを決めた後も自分がサイドで受けてから仕掛けてというチャンスも何回かあったと思うんですけど、自分で行かずに外に出してしまったりした。ああいうところは自分でシュートまでいかないといけなかった」(遠藤)

 状況を思い出してみても、シンプルに外を使ったことが一概に悪いというわけではないだろう。ただ、「試合中も切り替えられないくらい忘れられないでいた」と言うくらいだから、本人にとってはシュートまで行って決め切るイメージが残っていて、だからこそ悔いが残っているのだろう。試合後の様子も、最後まで悔しそうだった。

「次に中国とやることになったら、絶対に叩きつぶすつもりでやりたい。本当に絶対に勝ちたいし、勝たないといけない」(遠藤)

 ドリブラーの育成に定評のあるトリコロールのアカデミーが生み出した快足アタッカー。ただ、彼の持つ最大の魅力はテクニックやスピードではなく、自分自身の成長と勝つことに対する“飢え”の強さにある。

文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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