2016.11.16

【コラム】閉塞感を脱したハリルの起用…世代交代図る新戦力と原口、長友らの評価とは?

原口(左から3番目)の得点などで日本代表がサウジアラビア代表を下した [写真]=三浦彩乃
スポーツライター。日本代表の国際Aマッチは、2000年3月からほぼ全試合を現地取材。

 11月15日のサウジアラビア戦で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はFW本田圭佑(ミラン/イタリア)、FW岡崎慎司(レスター/イングランド)、MF香川真司(ドルトムント/ドイツ)をスタメンから外した。彼らがトップフォームでなかったのは、今回が初めてではない。9月や10月に比べて、それぞれの立場が大幅に悪化したわけではなかった。

 ならばなぜ、このタイミングだったのか。

 9月、10月の連戦はいずれも、最初にホームゲームを消化し、そのままアウェイへ乗り込むというものだった。ホームゲームも練習時間は十分でなく、時差や疲労を考慮しながら体調を整えることに主眼が置かれていた。

 準備の時間が限られているなかでは、すでに確認済みの戦術、すでに出来上がっている連携が拠りどころとなる。ハリルホジッチ監督が多少なりとも選手のコンディションに目をつぶってきたのは、メンバーをいじるリスクを背負いたくなかったからだろう。

 サウジアラビア戦へ向けた準備期間は、これまでとは違った。

 今回は連戦ではなく、テストマッチを経て最終予選を迎えることができた。11月6日の集合から国内に腰を据えられるので、長距離移動や時差を気にする必要もない。11日のオマーン戦をスパーリングとして、サウジとの決戦に挑むことができた。

 果たして、ハリルホジッチ監督はスタメンに手を加える。オマーン戦で2ゴールをマークしていたFW大迫勇也(ケルン/ドイツ)を1トップに起用し、2列目右サイドにFW久保裕也(ヤング・ボーイズ/スイス)を指名したのである。トップ下はMF香川真司(ドルトムント/ドイツ)ではなく、MF清武弘嗣(セビージャ/スペイン)だった。

 14年6月のシンガポール戦を最後に、大迫は代表から遠ざかっていた。1年以上の空白期間が横たわり、ケルンでは2トップの一角でプレーしている。それでも、オマーン戦で高い適応力を示した26歳は、サウジ相手にも攻撃の起点として機能する。このところすっかり失われていた連動性を、攻撃にもたらしたのだ。

 セビージャでスタメンをつかめていない清武も、コンディションを危惧されたひとりである。ただ、オマーン戦で1得点2アシストをマークしたことで、周囲の不安を払拭した。サウジ戦では60分過ぎに香川と交代したが、ハリルホジッチ監督によれば想定済みのベンチワークである。ゲーム勘とゲーム体力の不足がパフォーマンスに影響するまえに、指揮官は手当てをしたのだった。

清武はオマーン戦に続いてPKでゴールを決めた [写真]=兼子愼一郎

清武はオマーン戦に続いてPKでゴールを決めた [写真]=兼子愼一郎

 久保は前半だけで退いた。2列目の右サイドは彼にとって馴染みのあるポジションではなく、試合の流れに乗りきれなかった印象がある。前半だけの交代はやむを得ないものだが、久保が先発して本田が後半から出場したのは周囲を納得させるものだろう。

 久保より高さのある本田を後半から投入することで、リスタートの守備への備えはより強固となる。リードを保ったまま逃げ切る試合運びをイメージしたとき、本田がピッチに立っている意味は確かにあった。

 サウジ戦のMVPを選ぶなら、相手守備陣にストレスを与え続けた大迫であり、貴重な追加点をあげたFW原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)の名前が上がってくる。原口はディフェンス面の貢献度も高く、MF山口蛍(セレッソ大阪)もルーズボールやセカンドボールを力強く回収した。

得点だけでなく、守備面でもチームに貢献した原口 [写真]=兼子愼一郎

得点だけでなく、守備面でもチームに貢献した原口 [写真]=兼子愼一郎

 MF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)とダブルボランチを組むパートナーを、ハリルホジッチ監督は対戦相手によって代えてきた。だが、アタッキングサードへの飛び出しにも鋭さを見せるセレッソ大阪所属の26歳が、現時点でのベストチョイスである。

 最終予選初出場の背番号5にも、触れなければならない。DF長友佑都(インテル/イタリア)である。80分に原口が決めた2点目は、彼のアシストから生まれている。左サイドから相手に圧力をかけることができ、ゲームの終盤に決定的な仕事ができるのはこの男の強みだ。

 試合後のハリルホジッチ監督は、「確実に席(ポジション)を用意されている選手はいない」と話した。「準備が整っていなければ躊躇なくスタメンから外す」とも語った。

 集合と解散を繰り返す最終予選では、選手のコンディションを引き上げる時間的猶予はない。所属クラブでプレーしているか否かを重要な判断基準として、スタメンを組んでいくのは現実的である。

 ポジションを巡る競争の激化は、ほかでもない本田らがかねてからチームに求めてきたものである。このまま世代交代が本格化するのか、それとも経験者が巻き返すのか。いずれにせよ、10月までの閉塞感からチームは抜け出すことができた。

文=戸塚啓

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