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【コラム】U19日本、国内最終合宿で「心の準備」 負の連鎖を断ち切るための戦いへ

2016.10.06

5日にはジュビロ磐田と練習試合を行ったU-19日本代表 [写真]=川端暁彦

 10月3日から6日にかけて、U-19日本代表は静岡県内にて国内最終合宿を実施した。最終日の午後にはAFC U-19選手権(U-20ワールドカップ・アジア最終予選を兼ねる)に向けて日本を旅立つ、まさに“最終”合宿。これまで「代表選手は持っていて当たり前のものだから、あまりメンタル面を強調するのは好きではない」と語っていた内山篤監督も、ミーティングを通じて「決意と覚悟」を伝達。「まず心の準備を整える」(同監督)ことから合宿をスタートさせた。

 国内合宿の最大目的はこうしたメンタル面での支度と、フィジカル面での調整という二軸にある。この1カ月を主軸選手としてフル稼働してきた選手もいれば、実戦をほとんどこなしていない選手もいるというアンバランスは歴代のU-19代表も苦しめられてきた問題で、このチームも例外ではない。選手の状態を見極めるために行った9月25・26日の超短期合宿では「思った以上にコンディションの上がらないところのある選手がいた。90分戦える選手であることは大前提だった」(内山監督)と、最終メンバー選考では非情の決断も下さざるを得なかった。その中でDF板倉滉(川崎フロンターレ)など「去年と違ってコンディションはすごくいい」と自ら語るような選手や、高校生として実戦を積み重ねているMF原輝綺(市立船橋高校、アルビレックス新潟加入内定)が急浮上し、若干メンバーも入れ替わることとなった。

 連戦で疲れている選手の疲労を抜きながら、逆にやり足りない状況のある選手は追い込んでいく。そんな調整をしながら迎えた5日のジュビロ磐田戦は、疲労度を観ながらの選手起用となった。狙いとしてはあくまで調整の一環。高校生との試合にして、プロクラブなど強豪とはやらない選択肢もあったようだが、磐田・名波浩監督から「ぜひ」との申し出もあったそうで、内山監督の古巣との対戦が実現することとなった。

 試合は両ボランチが神谷優太(湘南ベルマーレ)と原という「初めて組むので、最初は距離感が難しかった」二人になるなど、調整優先の組み合わせの中で難しさもあり、序盤は磐田のペース。ただ、「徐々に攻守がスムーズになった」(内山監督)と持ち直し、45分間の後半は日本ペースとなって、チャンスも生まれる流れとなった。長らく狙いとしてきたサイドバックの攻撃参加を活用する攻めも機能し始めていたが、ただ「シュートまでいけていなかった」(内山監督)という課題を露呈する内容だったことも指摘しておく必要があるだろう。打たないことには、入らない。0-0で終了となった。

 2、3本目は磐田U-18との対戦となり、調整試合ながら日本が圧倒。少ないピンチもGK若原智哉(京都サンガF.C.U-18)が好守を見せてゼロ封しつつ、MF冨安健洋(アビスパ福岡)の鮮やかなミドルシュートなどで4-0の圧勝となった。まだまだコンディションにバラつきがある印象は否めず、7日からのUAE合宿での追い込み調整が大きなポイントとなりそうだ。こうした大会でしばしばモノを言うセットプレーについても、攻守両面で詰めておく必要がある。

 過去4大会連続での敗退と、厳しい結果が続いているU-19日本代表。ただ、日本独特の“U-19病”をいかに克服するかという智恵を絞ってきたのが今回のチームだった。U-23チームの保有をJリーグが認めた影響で、ガンバ大阪とセレッソ大阪の選手たちについて試合勘の不安がなくなっているのは大きい。メンバー発表直前の練習試合での見極め、準備段階であえて連続して試合時間の長いゲームを組んでいく(10日にも1試合を予定)など、“U-19病”に対する策はチームとしても講じてきた。DF中山雄太(柏レイソル)やMF三好康児(川崎)、冨安、神谷といった選手たちがJ1リーグで続々と出場機会を得るなど、個々人の成長も観られる。

 あとはもう、「結果を残すだけ」(三好)。2008年に始まってしまった負の連鎖を断ち切るための戦いはすぐそこに迫っている。「みんなとサッカーの話をたくさんして、少しだけでも」(冨安)勝つ可能性を高めて、アジアの決戦に臨む。2020年の東京オリンピックへも繋がっていく世界への扉を、日本の未来を担う新世代が力強く押し開く。

文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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