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批判が解決策になるのか? 今こそ日本代表をポジティブに見るべき理由と意義

2014.06.21

日本代表はまだグループステージ突破の可能性を残している。[写真]=Getty Images

 ギリシャ戦のドローを受けて、日本代表に対する批判の声が一気に爆発している。前半38分にギリシャMFカツラニスが退場したことにより、日本代表は約60分を11人vs10人の数的優位で戦った。しかし、結果はスコアレスドロー。自力でのグループリーグ突破はなくなり、グループリーグ第3戦コロンビア戦に勝利し、なおかつ、同時刻に行われるギリシャvsコートジボワールにて、ギリシャが勝つか引き分けることが絶対条件となる。初戦のコートジボワール戦での逆転負け、そして数的優位の状況になりながらも勝ち越しゴールを奪えなかったギリシャ戦を受けて、批判の声が強くなるのも理解はできる。

 しかし、あえて言いたい。ここで批判すれば、日本はコロンビアに勝てるのか。決勝トーナメントに行けるのか。いや、そうではないだろう。であるならば、今、我々にできることは、自分たちの代表を信じて、ポジティブな目線で見ることではないだろうか。
   
「ただ、今からは、叩くとしても大会が終わってからにしてほしいなと思っています。大会中は、メディアとしてではなくて、日本人として、日本代表を応援してほしい。日本人として、我々の一員だというような気持ちで一緒に戦ってもらえれば。戦ってもらえればというよりも戦ってほしいなというのが、願いです」
 
 本田圭佑は初戦の前に取材陣の前でこう語っている。もちろん、選手に頼まれたから批判はせずに応援する、というのではメディアの姿勢としていかがなものかとも思う。ただ、日本代表は残念ながら、まだ強豪国ではないのだ。グループリーグ突破が当たり前の国ではないのだ。
 
 現状を批判するのは簡単だ。なぜなら、結果が出ていないのだから。もちろん、自分もあの終盤のパワープレーはいかがかと思っているし、3人目の交代枠を使わないことも、正直、理解できない。ただ、批判は終わってからでも十分に間に合う。本田圭佑も「批判をしないで」とは言っていない。「終わってからにしてほしい」と言っているだけだ。これまでの4年間、ザッケローニ監督とその選手たちは、我々サッカーファンを十分すぎるほど楽しませてくれたことに異論のある人はいないだろう。であるならば、今大会が終わるまでは彼らへの感謝の意味も含めて、あくまでポジティブな目線を貫いてみてはどうだろうか。

 というわけで、その前提の下、ギリシャ戦を振り返ってみる。まず、ザッケローニ監督は、初戦からスタメンをいじってきた。ディフェンスラインでは、森重に替えて今野、前線では香川に替えて大久保を起用。今野の起用は、コートジボワール戦の後半、ずるずると下がってしまったディフェンスラインを高く保ち、「自分たちのサッカー」を徹底するための手だろう。また、香川と大久保のチェンジは、フィジカルコンディションだけでなく、メンタル面でもダメージを受けていた香川をサブに回すことで、香川の心理的ストレスを取り除きつつ、大舞台でも緊張することのない大久保に決定的な仕事をさせる狙いだったのではないだろうか(※試合後の記者会見では、ザッケローニ監督は香川のサブスタートについて、「戦術的な理由」と述べているが、それが真実とは限らない)。

 どちらにせよ、この2つの変更、特に本田と並んで絶対的なエースとして、この4年間やってきた香川を、この重要な一戦でスタメンから外すというのは、なかなかできることではない。だが、ザッケローニ監督は勇気を持って勝負に出た。そして、前半、日本代表は良い入り方を見せる。大久保はファーストプレーでいきなり相手2人をドリブルで抜き去り、チャンスを演出。2試合続いてのスタメンとなった大迫は、積極的なプレーでゴールまであと一歩のところまで迫る。先制点は時間の問題かと思われた。

 そして38分、素早い切り替えからのドリブルでカウンターを仕掛けようとした長谷部を、ギリシャMFカツラニスが後ろからのスライディングで倒し、2枚目のイエローカードで退場。数的優位により、戦況は一気に日本に傾くかに思えた。しかし、この数的優位が、日本にとってはマイナスに働くことになる。前半の残り時間を何とかしのいだギリシャは、後半、完全に引いて守るという選択をしてきた。こうなると、ギリシャは堅い。ヨーロッパ予選10試合でわずか4失点の堅守を誇ったギリシャにとって、ひとたび守りに専念すれば、たかが1人の数的不利などほとんど影響はないのだろう。

 実際、試合終了の笛がなるまで、ギリシャが1人少ないということを感じられるシーンは皆無に近かった。もちろん、日本代表がもっとうまく戦えた可能性はある。しかし、ワールドカップという大舞台で、相手に退場者が出るという経験すら、日本にとっては初めてのことなのだ。今回の日本代表に限らず、「10人になったことで逆に難しさが出た」ということは、サッカーの世界では日常茶飯事である。

 また、コートジボワール戦に続いての終盤のパワープレーも、結果的に実らなかったからこそここまで叩かれるわけで、それこそ、今大会の試合でも、イタリアはコスタリカに1点ビハインドの状況でも最後までパワープレーは使わず、結局、得点を奪えずに敗れている。ザッケローニ監督が経験の浅い監督ならともかく、イタリアのビッグ3の監督を歴任した経験を持つ監督である。日本が高さのあるギリシャ相手にパワープレーを仕掛けることのマイナス面など、言わずともわかっているはずだ。それでも、パワープレーで勝負した指揮官の選択に、疑問こそ感じても、全面的に批判する気にはなれない。「もう1枠あった交代枠でドリブラーを入れるべきだった」という声についても同様である。確かに、個人的にも齋藤学はあの場面で見てみたかったが、ドリブルで崩せるだけのスペースがない、という判断をザッケローニ監督はしたのかもしれない。実際、香川や大久保がドリブルを仕掛けようとしても、ギリシャの密集した守備網に引っかかってしまっていたわけだから。

 さて、コロンビア戦である。前述のとおり、日本代表がグループリーグを突破するためには、第3戦のコロンビア戦に勝利し、なおかつ、同時刻に行われるギリシャvsコートジボワールにて、ギリシャが勝つか引き分けることが絶対条件となる。ただ、実はこれは、ギリシャ戦で勝っていたとしても、ほとんど状況は変わっていないのだ。仮にギリシャに勝っていた場合でも、コロンビア戦では勝利が求められていたことに変わりはない。ギリシャはコートジボワールに勝てば勝ち点でコートジボワールを上回るわけだから、非常に高いモチベーションでこの一戦に臨むはずだ。ギリシャが引き分け以上の結果に終わる可能性は十分にある。

 加えて、日本代表のいるグループCと決勝トーナメント初戦で当たるグループDの結果も、日本代表を後押しする。現在、ウルグアイ、イタリアというワールドカップ優勝経験国を連続で撃破して決勝トーナメント進出を決めたコスタリカが1位抜け濃厚という状況のため、コロンビアは1位抜けが必須、という状況ではなくなった。むしろ、2位抜けのほうを望んでいるはずだ。となると、すでに決勝トーナメント進出を決めていることもあり、コロンビアがこれまで試合に出場していないメンバーを中心に日本戦に臨んでくる可能性は相当高い。これは日本代表にとっては間違いなく朗報だろう。

 コロンビア戦に勝利し、逆転で決勝トーナメント進出を決めるようなことがあれば、これは日本サッカーにとって歴史的な日となる。ネガティブな批判をくり返してその日を迎えるよりも、彼らを信じてポジティブに運命の一戦を迎えるほうが、間違いなく今大会の日本代表を楽しめるはずだ。我らの代表が、悔いのない戦いをしてくれることを。

文=岩本義弘

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