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「長すぎましたね」J2降格を知る“生き証人”が感じた重責と安堵…17年ぶりJ1昇格の原動力となった37歳米倉恒貴の存在価値

2025.12.14

千葉DF米倉恒貴 [写真]=兼子愼一郎

 水戸ホーリーホック、V・ファーレン長崎に続く第3の枠を巡り、ジェフユナイテッド千葉と徳島ヴォルティスが熾烈なバトルを繰り広げたJ1昇格プレーオフ決勝。フクダ電子アリーナで待ちわびた歓喜の瞬間を迎えたのはホームの千葉だった。後半24分にカルリーニョス・ジュニオが奪った殊勲の決勝弾を守り切り、オリジナル10の名門は1−0で勝利。長い長いJ2生活にようやく終止符を打ったのである。

 両手で顔を覆って涙を流したキャプテン鈴木大輔を筆頭に、ピッチ上の選手全員が最高の時間を味わった。それはベンチにいた面々も同じ。とりわけ、2009年のJ2降格を知る37歳・米倉恒貴の感慨は凄まじいものがあったはずだ。当時の屈辱を知る唯一の生き証人は「自分が現役のうちに何としてもチームをJ1に戻さなければいけない」という強い責任感を胸に秘め、今季を戦い抜いたのだ。

「タイムアップの笛が鳴った瞬間、『ついにやったな』という思いが湧き上がってきました。本当に長かった。長すぎましたね」と本人も安堵感を吐露する。フクアリに結集した中島浩司、巻誠一郎、水野晃樹ら千葉レジェンドたちからも「よくやった!」と称えられ、ようやく重い荷物を降ろすことができたに違いない。

「ヨネはJ1だったジェフを知る唯一の選手。(2019年にガンバ大阪から復帰した時には)強い決意で戻ってきたと思うし、そのヨネがプレーオフ初戦(準決勝 RB大宮アルディージャ戦で決勝アシスト)で試合を決めた。決勝は残念ながら出番はなかったけど、サポーターにとってもヨネの存在はとても大きかったと思います」

 水野はこんなメッセージを寄せたが、大宮戦での凄まじいハイプレス、そして17歳の新星・姫野誠の同点弾を演出したアシストを含め、値千金の働きを見せたのは間違いない。水野はこのゲームも生観戦。後輩の頼もしい姿を目に焼き付けた。だからこそ、「本当によくやってくれた」と強く言いたかったのだろう。

 とはいえ、今季の千葉、米倉本人がシーズン通して順風満帆だったわけではない。ご存じの通り、小林慶行監督体制3年目の2025年の千葉は開幕から快走し、前半戦終了時点でも首位で折り返した。「ついにジェフが上がるのか……」といった期待も高まったが、そこからまさかの停滞。最終的に水戸、長崎に抜かれ、3位となった。過去5度のプレーオフに参戦し、涙を飲んでいる彼らとしては「絶対に自動昇格」という思いは人一倍強かったはずだが、それが叶わず、6度目のプレーオフ行きが決まった。

「やっぱり『またジェフか』という思いを持った人も多分いたんじゃないかと。でも、それを覆すくらいのパワー、エネルギーを今年のチームは発揮できたのかなと。本当にこんなに監督やコーチ陣を信頼しているチームってなかなかない。『ファミリー』みたいな感じで昇格できたのは最高ですね」と米倉は神妙な面持ちで言う。先輩であり千葉レジェンドの一人である坂本将貴コーチも「走る、戦うという古河電工時代からの伝統と、慶行の戦術と方向性がこの3年間でしっかりと合致した」と力を込めていたが、米倉自身も指揮官のマネージメント力には舌を巻いたという。

「慶行さんがシーズン終盤の方には練習終わりにスタッフ一人ひとりに話をさせたり、選手にも一言は話させたりしましたけど、それによってみんなに責任感が生まれる。それが結束につながったところもあったと思います。加えてキャプテンの(鈴木)大輔の存在感がすごかった。あいつは言葉を持っていますし、全て引っ張ってくれた。心から称えたいですね」と大ベテランはともに苦しんできた鈴木にも感謝。そういった気配りができるところも米倉の持ち味だろう。

「僕としては別にそこまで活躍したシーズンじゃない」とは言うものの、やはり大宮戦のインパクトは強烈だった。若い姫野のポテンシャルを引き出し、千葉の明るい未来を印象付けたことは特筆すべき点。この男なしに17年ぶりのJ1復帰はなかったと言っても過言ではない。

「ただ、大事なのはここから。クラブがしっかりとしたビジョンを持ち、選手・スタッフも責任と覚悟を持って大きく成長しなければいけないと思います。J1でのヨネのプレーをまた見たいです」と水野もエールを送っていたが、ここからが本当のスタート。2度とJ2に落ちない強い集団になるために、米倉にはまだまだチームを引っ張っていってもらわなければ困るのだ。

「今は全く考えていないです」と本人は全てが白紙だと話したが、イビチャ・オシム元監督らが築いたクラブとしてのベースを引き継ぎ、発展させるためにも、米倉の存在は絶対に必要だ。周りを見れば、ガンバで共闘した丹羽大輝や倉田秋らは今も現役を続けている。そういった仲間と切磋琢磨しつつ、日本最高峰のJ1リーグで再び異彩を放つ米倉の姿をぜひ見たい。それを先人たちも強く願っているはずだ。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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