2018.08.04

【ライターコラムfrom松本】8月4日、浦田延尚は「闘う」…天国の松田直樹さんへ勝利を捧げるために

浦田延尚
8月4日、松本はアウェイで千葉と対戦する [写真]=J.LEAGUE
1978年生まれ、東京都出身。長野県内の新聞社で15年まで勤務し、現在はフリーライターとして松本山雅FCを中心に信州スポーツを幅広く取材。クラブ公式有料サイト「松本山雅FCプレミアム」編集長も務める。

 季節が巡り、今年もこの日が来た。

 8月4日。元日本代表DF松田直樹さんの命日だ。2011年8月2日に練習中の急性心筋梗塞で緊急搬送され、2日後の13時過ぎに逝去。当時JFLの松本山雅FCは、深い悲しみの底に突き落とされた。

 あれから7年。横浜F・マリノス時代のチームメイトで、2014年から松本で背番号3を受け継いできた田中隼磨は「いつも(松田さんのことを)思っているけど、この時期になると特に強い思いが出てくる。あの年のことは忘れられない」と話す。

松田直樹

松田さんは今でもサポーターに愛され続けている [写真]=J.LEAGUE

 松田さんを忘れられないのは、サポーターも同じ。語りかけるように、天を仰ぐ。SNSにつぶやく。写真を投稿する。毎年この時期は、そうやって在りし日の故人を偲んできた。チームも毎年のように選手が入れ替わっているが、この日は練習前に黙祷を捧げることを欠かさない。その中で、特別な思いを持つ加入1年目の選手がいた。

 浦田延尚。

 帝京高校から横浜FMに入団し、08から10年までの3年間を松田さんとともに過ごした。ポジションも同じセンターバック。当時のDF陣は松田さんのほか中澤佑二、栗原勇蔵らがひしめいて層が厚く、自身は一度も公式戦の出場がなかった。それでも松田さんは、若き日の浦田に目をかけていたという。「結構かわいがってくれていた方だったと思う。すごく歳は離れていたけど食事に連れて行ってくれたりして、一緒にいる時間は長かった」と明かす。

 そうした日々から歳月が経ち、今年でプロ生活11年目。浦田は178センチの小柄な体をめいっぱい躍動させ、荒波に揉まれながら成長を遂げてきた。加入1年目となる今季の松本でも、3バック左のストッパーとして存在感を発揮。身長差で不利な空中戦は果敢に体をぶつけて相手の自由を奪い、平面の対応はお手のもの。そして自身の売りとするオーバーラップでもチームに活力を吹き込んでいる。

 そんな浦田だが、実は「古巣戦」の経験が一度もない。松田さんと同じ10年限りで横浜FMを去り、11年は当時J2のサガン鳥栖でプレー。12から17年の愛媛FC時代は天皇杯も含めて古巣2チームと交わっていない。本来なら今年の第11節アウェイ愛媛戦で人生初の機会が訪れようとしていたものの、直前のモンテディオ山形戦で負傷したためまさかの欠場となった。

 現在の松本はドローを挟む2度の3連勝で7戦負けなしとなっており、後半戦は首位。上位争いは混戦だが、この位置を保てばおのずと目指すべき頂に至る。そして浦田にとって「プロのキャリアを始めた古巣とJ1で対戦」というシチュエーションが巡ってくれば、全身からは100%以上のエネルギーが湧き出てくるに違いない。

浦田延尚

今季は18試合に出場。松本の守備を支えている [写真]=J.LEAGUE

 それを実現するためにも、足元を見つめながら一戦必勝のスタンスで勝ち点を積み上げていく必要がある。「上位にいるので責任感はもちろんあるけど、1試合でガラッと変わる勝ち点差。全然プレッシャーは感じていないし、このチームは経験がある選手も多いのでその部分は大丈夫」。追われる立場にも身を縮めることなく、着実に歩みを進めていくつもりだ。

 そのためにまず突破しなければならないのは、奇しくもも松田さんの命日と重なる次節・ジェフユナイテッド千葉戦。「マツさんの闘う姿勢はみんな知っていると思うので、それに恥じないように闘いたい。次の試合は命日だし、勝って思いを届けたい」。そう語る口ぶりは、心なしか普段よりも決然と響いた。松田さんと過ごした日々から8年、浦田は天国に捧げる。自身の成長した姿を、そして故人が何よりも求めた勝利を。

文=大枝令

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