沿道には約5万人のサポーターが詰め掛け4年ぶりのJ1昇格の喜びを分かち合った [写真]=J.LEAGUE
「勝利の街」が緑色に染まった。明治安田生命J2リーグを初制覇し、4年ぶりのJ1昇格を決めた松本山雅FCの優勝パレードと報告会が9日、松本市内で開かれた。スタート時で気温2.5度という厳しい冷え込みに見舞われたにも関わらず、沿道に詰め掛けたサポーターは実に約50,000人。その後の報告会でも、国宝松本城の本丸庭園を約5,000人が埋め尽くした。「おめでとう」「ありがとう」――。大混戦のJ2をハナ差で制してから3週間、選手やスタッフとサポーターらが互いに祝い合い、幸福に包まれながらシーズンの活動を終えた。
松本市街地の中心部から松本城へ向かう約500メートルのパレードでは、反町康治監督と石丸清隆コーチがショッキングピンクのオープンカーに搭乗。選手はオープンバスに乗り込み、沿道からの祝福に手を振って応えたりシャーレやトロフィーを高らかに掲げたり。Instagramでライブをするなど、遠隔地のサポーターらと喜びを分かち合う選手の姿もあった。
プロ18年目にして先発を外れる時期も味わった36歳の田中隼磨は、「皆さんが喜んでいるのを見ることを目標に戦ってきたので、笑顔が見られて幸せだった」と喜びを口にしつつも「(今季は)ツラいことがあったからこそ喜びも2倍、3倍になったが、それと同じくらい『これからもやらないといけない』という気持ちになった。次はJ1で優勝してパレードをやりたいと強く思った」と改めて決意を語っていた。
その後は松本城本丸庭園の特設会場で優勝報告会を行い、選手、スタッフがステージに登壇。反町監督は開口一番「ピンク色のオープンカーに乗るとは思っていなかった」と会場を笑いに包んだ後に感謝を述べ、最後は「(沿道のサポーターが)『来年も頑張れよ』『落ちるなよ』と言ってくれた。厳しい戦いになるのはその通りだが、挑戦することの楽しさ、我々らしさを全面に出して頑張っていきたい」と締めくくった。
司会者に心境を問われた前田大然は「最高です!」と短い言葉に実感を込めた。自身はU-21日本代表としてアジア大会に出場したものの、準決勝UAE戦で右足首靭帯を負傷して決勝は不出場。「代表では悔しい結果に終わったが、山雅で優勝できてよかった」と喜びを口にし、「やるからには一番を目指してやりたい」とJ1でも自慢のスピードで大暴れすることを誓った。
初めてJ1に挑戦した2015年以降、3年連続で目標を達成できずにシーズンを終えてきた松本。だが今回はようやく「4度目の正直」を果たしてJ1復帰を決めた。加入4年目の石原崇兆はパレードでの歓待に「温かい街だと思った。予想していた以上に人がいっぱいいてびっくりしたが、いい思い出になった」。移籍1年目の守田達弥も「みんなで走ってみんなで体を張った結果」と喜び、「(松本は)ファン、サポーターに支えられているんだと改めて感じた」と話していた。
ただ、すでに来季への編成は始まっており、契約満了が発表された選手もいる。その中の1人の三島康平はアドリブでマイクを振られ、「何をしゃべっていいのかわからないけど、このチームの一員になれて本当に幸せに思っている。今までありがとうございました」とサポーターの前で感謝を述べた。2014年以来所属していた岩間雄大のほか、岡本知剛、安川有、鈴木智幸らの満了が発表済み。松本の選手として最後の務めを笑顔で終えていた。
そして松本が果たした優勝は、街にまだ余熱を残している。市街地の至るところに優勝記念のポスターが貼られたり、横断幕が掲出されたり。あるサポーターの女性は「(クラブが運営する)喫茶山雅に飾ってあったシャーレを見に行った。日々幸せを噛み締めているし、シャーレを掲げている動画を毎日見て涙している」と明かしてくれた。一緒に訪れた女性は4年前のパレードに参加できなかったといい、「前回は行けなくて悔しかった。今回はそれがかなったし、4年前にはなかったシャーレもあるのですごく幸せ。パレードでまた気持ちが盛り上がったので、年末まで余韻に浸って来年仕切り直したい」。松本はチャントのタイトルそのままに、「勝利の街」と化している。
文=大枝令
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