2017.03.30

【ライターコラムfrom名古屋】燃えさかる火の玉のような男、杉本竜士にご注目。

松本戦で名古屋デビューを果たした杉本 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
雑誌社「ぴあ」勤務を経て2015年にフリーランスライターとなり、WEBメディア「赤鯱新報」を中心に名古屋グランパスを追いかける毎日。

 まさかの雪模様となった前節の松本山雅FC戦で、移籍後初の公式戦出場を果たした杉本竜士が面白い。気温がマイナスになろうかという極寒のアルウィンで名古屋グランパスの背番号25は気合いの半袖ユニフォームでピッチに登場。「長袖も用意してたのに、みんながね…。士気を下げるわけにもいかないでしょ」とその理由を説明したが、まったくの大ウソである。1月のチーム始動当初から、杉本は1回のトレーニングセッションを除いて半袖を貫いてきた。「身体は勝手に熱くなりますから」。そう言ってニヤリと笑った“火の玉ボーイ”に、寒さなんて関係ない。

 杉本の火の玉っぷりはプレーにも色濃く表現される。164センチと体格は小柄ながら、独特の間合いを持つドリブルは一級品。しかも「一か八かの勝負を挑みたい。一度取られても、同じ状況でもう1回仕掛けに行ける選手が日本にいるかってこと。そこで仕掛けていける自分が好き」と語る耽美派だ。ドリブルに対するこだわりは人一倍で、練習の前後には必ず一人でフェイントの練習を繰り返す。「とっさの時にどれだけフェイントを持っていられるか。そのためのクセをつけているんです。これをやっておかないと、練習がスッキリ終われない」。事実、杉本は死角からのプレッシャーにさえ、即座に足下を見ずにボールを動かせるだけのスキルを実現している。

 名古屋への移籍当初は、風間八宏監督から「もう少し連動性を意識しろ」とアドバイスを受けた。ボールを受けたらまずはドリブル突破の可能性を探る男と、パスを中心とした「止める、蹴る」のサッカーはなかなかに相反するものだったに違いない。だが、プレシーズンキャンプからリーグ開幕を経て、杉本は徐々にチームの一員として機能できるようになってきた。「孤立しがちなのは以前からの課題でしたけど、良い意味での孤立もあると思うんです。やっぱり、自分の“牙”は見せないと」と尖ったところを見せつつも、プロサッカー選手としてのチームプレーを遂行する努力は欠かしてこなかったわけだ。

 そして名古屋でのデビュー戦となった松本戦ではまず守備で奮闘し、攻撃になれば対面の田中隼磨にこれでもかと挑んでいった。杉本同様に熱い男である田中もその熱に応え、彼らの激しい1対1は後半45分間のちょっとしたエンターテインメントにもなっていたほどだ。その働きぶりには御大・楢﨑正剛も「途中から入ってきた選手がうまく力になってくれた」と高評価を与えた。これには杉本も「守備で評価されるのは、嬉しくないわけではないけど…」と照れ笑いを浮かべたが、本音は別のところにある。

「前半から何かを変えたいから、僕は出場しているわけです。でも負けてたんだから、守備で何かが変わるゲームではなかった。もっと仕掛けたかったし、仕掛けてもバックパスのシーンが多すぎる。あそこでもう一つ奥に行けないから、オウンゴールでの決着になってしまった。もっと自分らしさを出さないと」

 やっぱり仕掛けてナンボなのである。その意気は風間監督も買っている様子で、次節の熊本戦ではスタメンの可能性も浮上してきた。今季のチームスローガン「前へ」を体現する突貫小僧・杉本竜士は、そのプレーの暑苦しさだけでも一見の価値がある。

文=今井雄一朗

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